編集委員 窪田 伸雄

国民守れぬ無責任な方針
共産党機関紙「しんぶん赤旗」(4・12)は、「憲法9条と国民の命との両方を守り抜く責任ある方針」「党の自衛隊政策への非難に反論」の見出しで、“自衛隊活用論”を売り込んで、長きにわたる反自衛隊運動の数々による批判をかわそうとしている。
ロシア軍がウクライナを侵略し、日本に対しても軍事的圧力をかけている状況から、参院選に向けて自衛力をめぐる論争が起き、共産党はやり玉に挙げられている。これに同紙は志位和夫委員長が、「7日に開催された参議院選挙勝利・全国総決起集会で、憲法9条の完全実施にむけて、国民多数の合意で自衛隊を段階的に解消していく党の方針を述べるとともに、『万が一、日本に対する急迫不正の侵略が起きた場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を用いて国民の命と日本の主権を守り抜く』と表明」したと指摘。
これに「自民党の小野寺五典元防衛相が『今まで言っていることと全然違う』と述べるなど」批判が上がったことについて、志位氏は2004年に改定された綱領に書いてあることと主張したというものだ。2000年党大会決議により綱領改訂を決定したので20年以上も前のことだ。
同年改定綱領に至るまで共産党内では反対論もあったが、90年代後半の上げ潮ムードの中で「政権参加」を目論(もくろ)んで出てきたものだった。が、04年以後しばらく同党は衰退。15年の安保法制を野党共闘の契機とし、昨年9月の衆院選で初めて立憲民主党と「政権参加」の選挙戦を行った。
だが、立民は共産党の「政権参加」構想に勉強不足で、露軍のウクライナ侵攻後の共産の自衛隊活用論を今に始まったように「現実路線化」と歓迎している。それでは、共産党が自衛隊の自衛力を増強する政策を取って、予算に賛成してきたかというと、とんでもない。肝心なのは防衛の目的を果たせるかだ。
志位氏の言うように共産党が政権を取ったら自衛隊を解消する。もしその間に侵略があれば、残った部隊や装備があれば活用するという、捨てる前に使うことがあれば使うという話でしかない。従って国民を守る責任ある方針ではない。
縮小中に活用するという共産党の理論は非現実的な言葉遊びだ。ロシアとウクライナの戦争を世界中がウオッチしており、装備の増強と革新が進む動きに、これでは間違いなく対応できないだろう。