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勝利を期する見出しなし「立憲民主」参院補選 

参院石川選挙区補欠選挙の候補者応援に駆け付け、街頭演説する立憲民主党の泉健太郎代表=17日午前、石川県小松市

編集委員 窪田 伸雄

演説写真に党員募集願い

野党第1党ながら、立憲民主党は夏の参院選挙を前に威勢がいいとは言えない。同党月刊の機関紙「立憲民主」(4月15日発行)1面は、「夏の決選に向けて党勢拡大へ」という見出しで、写真は参院石川選挙区補欠選挙の公認候補と党代表の街頭演説だが、見出しは写真の補選を受けていない不思議な紙面である。

記事は泉健太代表のメッセージで構成され、同補選について「行政書士のおやまだ経子(つねこ)さん(43)を公認いたしました」と報告。「石川県は女性国会議員がゼロ」と訴えるが、結果を恐れたのか同選挙を見出しにせず「夏の決選」、それも選挙運動ではなく「党勢拡大」なのだ。8面「党の動き」にも同補選記事が載るが、同氏公認の報告程度のものだ。

見出しの「党勢拡大」とは、「4、5月は党員・サポーターズ、パートナーズの募集・更新の時期でもあります。ぜひご周辺の方々にお声がけいただきますよう」とのお願いだ。こちらが大事と見え、参院選まであと3カ月という段階で、党員固めに追われている。

立民の党勢は大きくない。党員・サポーターは昨年11月の代表選時で10万267人。党員27万人の共産党より議席は多くても運動力が劣るため、野党共闘の選挙では共産党系運動員の世話になる。

広報誌「立憲民主」(立憲民主党HPより)

また実質的な党員・サポーター数は、党内最大イベントの代表選に投票した4万6748人が目安となろう。昨年衆院選前まで立民は選挙や合流で議員が増えてきたが、同選挙敗北でムードは変わった。10万人台維持が危ういのかもしれない。

候補者擁立も遅れている。同紙に載る「参院選候補予定者の累計」は選挙区公認23人、比例候補9人、選挙区推薦5人の計37人(21日同党HPでは順に28人、9人、6人の43人)。改選124議席(内比例50議席)の過半数はまだ射程にも入らない。

3月18日発行の同紙1面記事では、「夏の参院選挙に向けては、党として女性候補の5割達成、野党による改選過半数の獲得を目指し、選挙区と比例区の議席を1議席でも増やせるよう全力を尽くす」と強調している。2月27日の党大会で泉氏が表明した。

が、この目標も見出しにしていない。見出しは「『立憲民主党こそがリベラルと中道の旗手に』泉代表」だ。ちなみに既に「中道の旗手」になったということではない。記事は「総選挙総括で決定された『中道の立ち位置までウィングを伸ばす』との方針」に触れており、共産党との共闘により「リベラル」、つまり左翼と有権者から思われたので、これから中道層からも集票できる中道左派になろうということだ。

ただ、仮に「野党で過半数」となっても勝利の共有は微妙だ。立民と協力する共産は日本維新の会と敵対し、国民民主党を批判している。さらに立民と共に労組・連合の支援を受ける国民は維新との連携に動いている。立民の福山哲郎前幹事長が出馬予定の参院京都選挙区で国民は維新公認候補を推薦、同静岡選挙区で維新が国民公認候補を相互に推薦する合意をした。

可能性があるのは「女性候補の5割達成」で、これは既に5割近い。2月15日発行の同紙はジェンダー推進特集を載せ、徳永エリ党ジェンダー平等推進本部長が「執行役員のジェンダー平等が実現した」と称賛し、大西健介選挙対策委員長が「女性候補者を5割とする」と方針を語っている。だが、党内次元の話である。

いずれにしても、勝利を目指す―など機関紙に選挙の成果を求める見出しがない立民は、結果責任を曖昧にしようと萎縮しているように見えるのだ。

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