中国の「ゼロコロナ」政策、体制の本源的弱点を突いた論評はゼロ

中国の都市上海(Photo by Hanny Naibaho on Unsplash)

人道的視点から批判

これまで新型コロナウイルス感染対策の優等生とされてきた中国最大の経済都市・上海市で、3月28日からロックダウン(都市封鎖)が続いている。地下鉄やバスなど公共交通は運行を止め自家用車も禁止、市民2500万人の外出も原則禁止した。3月下旬、1週間でロックダウンを解除した広東省深圳市とは様相が異なり長期化している。街はゴーストタウンとなり、住民はすさまじい野菜不足と食料確保に苦しむ。上海市以外でも感染爆発が起きている。

こうした状況に対し、朝日は18日付社説「上海の混乱 人道を重視した対応を」で「都市封鎖の目的はコロナ感染の拡大を防ぎ、人々の安全を守るためのはずである。逆に人々を苦しめ、心身の健康を害するようでは本末転倒だ」と人道的視点から中国の「ゼロコロナ」政策を批判した。

感染症の効果的対策と人権のバランスは各国とも頭を悩ませる問題だが「感染封じ込め策の強制が目に余り、人道的な配慮が欠けている」と言わざるを得ないというのだ。

日経は19日付社説「中国経済を覆う『ゼロコロナ』という重荷」で、「今秋、共産党大会を控える習指導部は、ゼロコロナと5・5%前後という成長目標の同時達成を狙っている。とはいえ二兎(にと)を追うのは極めて難しい」と断じた。「中国各地で都市封鎖が続くとみられる。生産、物流、消費への影響は甚大で、中国経済の重荷になりかねない」との見立てだ。

東京も3月29日付社説「中国の感染拡大 ゼロコロナ転換も探れ」で、「中国は封鎖期間を短くするよう努力しているが、…厳しい規制が市民生活に及ぼす影響も深刻になっている」と懸念を表明。さらに「多くの国は『ウィズコロナ』の道を模索しており、中国も『共産党統治の優位性』と胸を張ってきた『ゼロコロナ政策』の転換の道を探るべきであろう」とコロナ対策の抜本的方向転換を図るよう提言する。

「体制の敗北」認めず

なお東京は同社説で「封鎖など強力な措置を徹底せざるをえない背景には、ワクチンの問題もありそうだ。昨年末に香港大の研究チームは、中国のシノバック製のワクチンはオミクロン株の感染予防効果が低いとの研究結果を公表している」と新たな視座を提供している。

香港大の研究結果が事実なら、中国は感染力の強いオミクロン株の拡大にロックダウンという21世紀の人海戦術しか手がないと思ったのかもしれないが、それこそが中国最大の「体制の弱み」だ。

効果がなければ効果のあるものを躊躇(ちゅうちょ)なく使えばいいだけの話だ。

オミクロン株の感染予防に中国製ワクチンが効かないと判明すれば、米ファイザー社製ワクチンなり英アストラゼネカ社製ワクチンなり、効能をしっかりチェックした上で導入すればいい。世界第2位の経済大国中国が購入できないはずもない。

それを難しくさせるのは中国自身にある。新型コロナを当初、抑え込みに成功した中国は、それを「(共産党政権の)体制の勝利」だとして強権統治を正当化する手段として政治利用した経緯がある。それを今さら、「ゼロコロナ」から西側同様の「ウィズコロナ」に舵(かじ)を切ったり、西側製のワクチンを使ったりすれば「体制の敗北」を意味することになり、今秋に共産党大会を控えている中国としてはメンツに懸けてもできない事情がある。

共産政権保身に執着

しかし、国民の安全と幸福を保障するのが政党最大の役割だ。たとえ共産党が滅んでも、国民の安全と幸福が得られればいいと覚悟できれば、共産党は光り輝くことになるのだが、共産党政権の自己保身ばかりに執着している現在の様相ではとても無理だろう。

5大紙は中国が当初、都市封鎖による感染対策を「体制の勝利」として政治利用したことのジレンマは書いても、こうした本源的な体制の弱みを突くことはしない。

(池永達夫)

spot_img
Google Translate »