ウクライナ侵略、情報戦報道で核心インタビューを掲載した産経

ウクライナのゼレンスキー大統領=2022年2月23日(EPA時事)

威力発揮したSNS
 ロシア軍のウクライナ侵略は、ウクライナ軍による決死の抵抗が続く。背水の陣を敷くゼレンスキー大統領の最初の快挙は、キエフ市街地を背景にした自撮りの動画をインターネット交流サイト(SNS)に投稿したことだ。

 これでゼレンスキー氏は、「国民と共にある大統領」のイメージを国内外に浸透させ、亡命説を一蹴。コメディアン出身の成り上がり大統領などではなく、死の崖っぷちで踏みとどまる根性で世界の人々を味方に付けた。ゼレンスキー氏はスマホの一押しで、ウクライナに撃ち込まれた多大なロシア軍の砲弾への反撃に成功したのだ。この出来事は、最新情報戦の武器がSNSであり、戦場もSNSであることを鮮烈に印象付けた。

 さらにゼレンスキー氏の快挙は、副首相兼デジタル転換相に31歳のミハイロ・フョードロフ氏を抜擢(ばってき)していたことだ。情報戦の最前線に立つそのフョードロフ副首相に産経が電子メールでインタビューし、22日付1、3面で掲載した。誰しもが知りたい最新核心情報だ。

 同インタビューで「ロシア政府機関や銀行へのサイバー攻撃を担う『IT軍』に現在、『国内外の31万人以上』が参加」し、戦時下で通信網が確保できるのは「人工衛星の高速ネットを利用できるため」との情報を引き出している。

 この衛星回線は、フョードロフ氏の呼び掛けに応じた米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、自身が率いる宇宙企業スペースXを通じて保持しているものだ。

 またSNS攻防戦だけでなく、軍資金確保の手段としてネットが利用されている事実も刮目(かつもく)させられる。同記事では「ウクライナ政府は2月末、SNSで『共に立ち上がれ』と訴え、暗号資産(仮想通貨)による募金受け付けを開始。デジタル転換省は20日、寄付が6000万ドル(約72億円)相当に達したと発表した。防弾チョッキや暗視装置などの非殺傷装備の購入にあてるという」とも書いてある。

米欧は機密情報公開

 なお情報戦に関しては、読売19日付、慶応大教授・土屋大洋氏の「視点」も参考になる。土屋氏は「侵攻にあたりロシアは当初、『民間施設は標的にしていない』と主張した。しかし、集合住宅などが攻撃される多数の映像が世界中に流れ、瞬く間にうそは暴かれた。2014年に比べてSNSが普及し、市民が撮影した現地の生々しい動画が拡散されるようになったためだ」と指摘する。

 東京は21日、ワシントンの吉田通夫記者が「ウクライナ侵攻で対照的な『情報戦』」との見出しで「ロシアは虚偽情報拡散、米欧は機密情報公開で優位に」との記事を掲載した。この中で吉田氏は「バイデン米政権は今回の侵攻前、政府横断の特命班『タイガー・チーム』を設置。これまで機密情報として伏せられていた段階の情報も積極的に公表することで、ロシアの情報操作などを糾弾」、14年のクリミア半島侵攻で偽装工作や情報操作で侵攻を正当化したロシアの常套(じょうとう)手段を、今回は逆手に取る米情報戦略を書いた。

 またツイッターなどがファクトチェックで援軍に加わった。メタ(旧フェイスブック)とユーチューブは16日、ウクライナのゼレンスキー大統領が国民に投降を呼び掛ける動画を偽造と判断、削除している。

情報戦が勝敗を左右

 古来、情報戦が戦争の勝敗を決することが多々あった。ベトナム戦争は「茶の間の戦争」と呼ばれ、血なまぐさい戦場のテレビ放映が反戦運動に力を貸したし、湾岸戦争では米CNNテレビの現地リポートが世界の世論形成に寄与した。

 侵略を受けたウクライナがその情報戦を制し、ロシア軍を停戦に追い込む端緒をつかめるか、それともロシア側がウクライナと欧米との隙間にくさびを打ち込むことになるのか、戦局はこれから正念場を迎える。

(池永達夫)

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