経済安保法案に左派系紙は社説なし、保守系紙は規制で論調割れる

貨物車のイメージ

過剰な介入を「心配」
半導体など重要物資のサプライチェーン(供給網)強化支援などを盛り込んだ経済安保法案が閣議決定された。

同法案は、覇権的な動きを強める中国や、今回、ウクライナに牙をむいたロシアなどを念頭に、安保上重要な物資の安定供給確保や先端技術の強化を図ることが狙い。

テーマがこうした内容からか、左派系紙からは社説での論評はなし。保守系4紙だけの掲載である。その保守系紙でも、罰則の規定すなわち政府の介入の点で微妙に論調が分かれた。

具体的には特に、日経が「政府の行き過ぎた介入」を「心配」したのに対し、産経は「規制強化の動きは国際潮流」と是とする違いがあった。

各紙社説の見出しは次の通りである。2月26日付日経「過剰な介入控え経済安保の実をあげよ」、27日付読売「官民の協力で国益を確保せよ」、28日付産経「備え強める重要な一歩だ」、3月1日付本紙「脅威に対処し国益を守れ」――。

政府の行き過ぎた介入を心配する日経だが、経済安保法案自体には「サプライチェーン(供給網)やインフラの脆弱性を解消し、重要な産業や技術を保護するのに欠かせない法案である」と認める。また、「様々な対策を講じて経済安保の取り組みを強化する米欧に倣い、日本も体制づくりを急がねばならない」とも強調し、法案の趣旨には賛成する。

それでも、同紙が「心配」するのは、政府の過剰な介入で「企業の活動を必要以上に縛らぬよう、細心の注意を払うべきだ」という。

この法案で企業の活動をいたずらに縛れば、日本経済そのものをゆがめかねない。非効率な産業政策や保護貿易の常態化も避けなければなるまい、というわけで同紙が訴えるのが、見出しの通り、政府が4本柱の重要性を周知徹底し、順守を求めることで実をあげてほしい、である。

規制強化は国際潮流

日経と同様、「問われるのは一連の施策の実効性である」と強調する産経だが、罰則については日経と逆の見解を示す。法案にはこれを担保するための罰則もあるが、「経済界の反発に配慮し、一部の罰則対象を絞り込んだ動きは気になる」というのである。

産経は言う。確かに法案で企業活動への政府の関与は強まる。自由な経済活動が阻害される懸念はあろうし、不要な規制を避けるのも当然だ。ただ、「規制強化の動きは国際潮流であり、日本は総じて規制が緩かった点は認識しておくべきだ」と。

この点で、読売は日経と産経の中間の位置か。読売は、実効性を確保するため罰則を設けることは「理解できる」とし、その一方で、企業活動を過度に萎縮させ、自由な競争を阻害しないよう、「抑制的な運用に努め、経済界の協力を得ていくことが大切だ」との見解を示す。

これら3紙に見られる見解の開きは、実際の運用に当たってはそれほど違いはなく、読売が指摘する線で落ち着くのであろう。

読売が指摘するように、法案では政府が重要技術に関する官民の協議会を設け、情報や資金の提供、人材育成を通じて開発を支援することも明記している。大事なのは「官民の協力で国益を確保せよ」(同紙見出し)ということであろう。

日本の場合、これまで各業界を規制する法律には安全保障の視点が欠けていた。読売は、今回の法案により、「首相の権限で必要な措置がとれるようになる意義は大きい」と指摘するが、同感である。

同盟諸国との連携を

中国やロシアの経済的、軍事的な威圧の強まりに対し、米欧は近年、新たな規制を導入し、同盟国などに協調した対応を求めている。読売は国際的な取り組みの抜け穴にならないよう、法整備を早急に進めるとともに、「米欧や豪州、インドなどと連携を強化し、国際的なルール作りでも主導的な役割を果たしたい」と提案するが、妥当な指摘である。
(床井明男)

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