半導体への官民投資が世界で急加速していると指摘するエコノミスト

半導体のイメージ

「メタバース」に脚光

世界的な供給不足で話題となっている半導体。かつて日本のお家芸とされていた半導体産業が今や中国、韓国、台湾に抜かれて瀕死(ひんし)の状況と報道されていることもしばしば。ところが、実際のところは日本の半導体産業は死んではおらず、半導体の製造装置や材料といった分野でトップシェアを握るなど世界に存在感を示している。その一方で、各国では今、半導体の爆発的な需要増に備えて投資競争を拡大させている。

そうした半導体の動向を週刊エコノミスト(2月1日号)が分析した。「需要大爆発 半導体 メタバース グリーン デジタル」と見出しを付け、「半導体新次元の成長」「世界で官民投資が急加速」とサブ見出しを付ける。

見出しの中の「メタバース」とは最近、よく使われる言葉だが、メタ(meta=超越した)とバース(universe=宇宙)を合わせた造語で、インターネット上の仮想空間で利用者が活動できる空間をいう。

「メタバースはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)によるゲームやZoomなどのビデオ会議だけでなく、工業用にも使われる」(同誌)と指摘。これまでゲームやSNSなどで使われた技術が、企業の業務効率や生産性の向上を図るビジネスとして脚光を浴びつつある。

一方、「グリーン」とは温室効果ガスを発生させないグリーンエネルギーに転換することで産業構造や社会経済の変革を目指すが、そこでも消費電力の効率性を上げるパワー半導体などの需要が期待されている。

今や「グリーン化」は日本政府の国是。一昨年12月に経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表したが、“脱炭素”社会に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)に政府が積極的に投資する方針を打ち出した。

エコノミストは「個人消費に加え、政府投資による半導体需要の拡大が期待される」と指摘、デジタル化の進展でメタバースの到来やグリーン投資の必要性から「半導体産業は異次元の成長ステージ」に移行したと強調する。

中長期的な成長期待

もっとも、日本において半導体産業が成長産業であると経済誌は以前から指摘していた。近いところでは、週刊東洋経済(21年12月25日、22年1月1日合併号)が、「22年の半導体市場は、21年ほど不足が叫ばれる状況ではなくなる。ただ、中長期的な成長シナリオは不変で、製造装置や材料のメーカーにとってもいい時代が到来している」と分析している。

また、週刊ダイヤモンド(同号)も「これまでけん引役だったスマートフォンに代わり、5G(第5世代移動通信システム)インフラやデータセンター、電動車や自動運転車といったモビリティなどデジタル社会の本格的な到来が需要を喚起する」と強調。

さらに「半導体サプライチェーンの“川上”に連なる半導体製造装置や半導体材料は日本企業が強みを持つ領域だ。…(国内で半導体の工場投資ラッシュが続くことについて)世界の半導体サプライチェーンの“チョークポイント(急所)”として日本の装置・材料メーカーが存在感を示すことができる。単純に部材メーカーの業績が潤うことばかりでなく、経済安全保障の観点からも工場新設は有意義なことだ」と論じている。

依然“産業のコメ”

確かに世界の半導体の動向を見ると、米中対立の激化から米国は中国に対し輸出規制を強める中、中国は国策的に半導体の内製化を進めている。一方、ヨーロッパもまた“脱炭素”社会構築に向けて日本が強みとしていたパワー半導体やアナログ半導体の量産体制を構築しつつある。

「(かつて)日本では、半導体産業の衰退と同時に、IT産業の国際競争力が落ちていった」とエコノミストは指摘するが、半導体が“産業のコメ”であることは変わりがない。日本が世界に存在感を示す分野において官民挙げて取り組んでいくのは当然のことであろう。(湯朝 肇)

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