独裁体制下の安定に後戻りする中東、西側諸国の責任指摘する英ネット紙

「チュニジアの若者から、再び民主化ののろしが上がることに期待したい。」本記事より

民主化に悲観的見方
中東・北アフリカ(MENA)の民主化運動「アラブの春」から10年余。各国で長期独裁政権の崩壊など政変が相次いだが、民主化にはつながっていない。米ワシントンのリスクコンサルタント「ガルフ・ステート・アナリティクス」の最高経営責任者(CEO)、ジョルジオ・カフィエロ氏は英ニュースサイト、ニュー・アラブで、「アラブ世界での全体主義の台頭とともに、11年前の民主化への楽観的な見通しは失われてしまった」と中東の民主化に悲観的な見方を示した。

アラブの春の契機となり、「唯一の成功例」「アラブの春の優等生」などと注目された北アフリカ、チュニジアで昨年5月、クーデターが発生し、首相が解任され、議会が停止された。若年層を中心とする国民の多くが、独裁政権崩壊後、経済的恩恵にあずかれず、政府に強い不満を抱いたことが背景にあるとされている。原因は政府など権力者の腐敗に対する若者の不満だ。

バシル長期独裁政権を崩壊に追いやったスーダンでも昨年、クーデターで首相が連行され、軍の指導者をトップとする暫定評議会が発足した。ところが、国民からの軍政への抗議がやまず、首相が復職するという珍しい現象も起きた。

アラブの春で国民が蜂起した他の国々の現状もさまざまだ。エジプトでは、長期独裁政権崩壊後、クーデターで再度、政権が崩壊、イエメン、シリアは内戦に突入し、国内は荒れ放題だ。

行動伴わぬ欧米諸国

カフィエロ氏は、「MENAでの民主的な変革の実現は難しい」とした上で、「その責任の多くは西側政府にある」と指摘、民主化を支援した欧米諸国の対応の問題を指摘している。

中東の大部分の国では、独裁体制下で安定が続き、欧米諸国もその恩恵を受けてきた。ペルシャ湾岸の産油国がそのいい例だろう。絶対君主制の下で安定した湾岸は、エネルギーの安定供給という点で、世界の経済に欠かせない。その一方で、2001年の同時テロ後、イスラム過激派に悩む欧米各国などは、中東の民主化を訴えてきた。だが、その民主化要求は湾岸産油国には及んでいない。

カフィエロ氏は、「アラブ社会に自由を導入することは混乱と過激主義を招来するため、親西側の全体主義者を権力の座に据えておくことが米国と欧州の利益にとっては最適という主張がなされてきた」と指摘。「この短絡的な思考が問題を引き起こしてきた。全体主義では継続的な安定は得られない」と主張している。

記事中、元駐アゼルバイジャン米大使マシュー・ブリザ氏は、「国民が正義の存在を感じ取らなければ、政治的安定はない。民主的変革はその一部だ」と、社会的公正こそが民主主義の基礎と指摘している。

ところが、中東の指導者らは、このことをアラブの春から学ばなかったようだ。カフィエロ氏は、「MENAの多くの政権は、アラブの春後の混乱は、十分に全体主義的でなかったことからきていると結論付けた」と訴える。

欧米各国政府も中東の民主化を言いながらも、行動は伴っていない。「バイデン政権は、トランプ政権と同様、アラブの民主化には無関心」と指摘、米デンバー大学中東研究センターのディレクター、ナデル・ハシェミ氏も「レトリックばかりで、実態はない」と手厳しい。「アラブは全体主義的傾向を強め、MENA各国が抱える主要問題の多くは改善していない」と悲観的だ。

若者にかすかな希望

一方で、かすかながら希望的な見方もある。米紙クリスチャン・サイエンス・モニターは、チュニジアで、クーデター後の新政権を、腐敗の撲滅と、経済的な発展、雇用の促進に期待する若者らが支持しているという。「アラブの春の光は、チュニジアではまだ消えていないが、複数政党政治では解決しなかった」とした上で、民主化への期待はチュニジアの若者の間では消えていないという。

「(サイード大統領が)失敗すれば、別の革命を起こすまで」という一人の若者の声を伝えている。

チュニジアの若者から、再び民主化ののろしが上がることに期待したい。
(本田隆文)

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