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オミクロン対策で尾身氏「人流・人数」発言を議論した日曜討論など

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人流抑制策が後退?
新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の新規感染者数が6万、7万、8万と日に日に過去最高を更新していく。全国で初の5万の大台を超え、東京都でも初めて1万人を超えたのは22日。23日の報道番組はそのタイミングで、第6波のオミクロン株感染への対策、中でも政府新型コロナ分科会会長・尾身茂氏の19日の発言「人流抑制ではなく、人数制限というのが一つのキーワードになる」との内容が議論になった。

昨年まで呼び掛けた「人流抑制」を後に回し、「外出自粛とか店を全部閉める必要はない」などと尾身氏が語ると影響は大きい。小池百合子東京都知事が改めて外出自粛を要請するなどの波紋を呼んだ。フジテレビ「日曜報道ザプライム」では、番組冒頭でコメンテーターの橋下徹氏が「尾身さんは政治家の発言と専門家の発言を混同したと思う」と述べ、発言内容は支持するとしながらも批判した。

が、政治家は選挙を意識し、感染対策の発言は慎重になる。記録破りの感染事態で「外出自粛は必要ない」と先に政治家が言えば問答無用にバッシングだろう。尾身氏だから発言にあれこれ解釈が始まる。

TBS「サンデーモーニング」でコメントした国際医療福祉大学感染症学講座主任教授の松本哲哉氏は、「第5波まで人流と感染者数の動きがパラレルに動いてないので、専門家は人流を重視して抑制しても感染者数に影響はないと判断して、このような発言に至ったと思う」と述べた。

提言読み解く出演者

21日に公表された尾身氏ら専門家有志の提言は、「効果的対策」として「かつて実施した一律かつ広範な“人流抑制”という方法もあるが、感染対策を社会経済活動との両立が求められる現時点では、感染リスクの高い場面・場所に焦点を絞った接触機会の確実な低減のための“人数制限”が適していると考えられる。なお、感染状況等の実情も踏まえて、各都道府県知事の判断により、“人流抑制”を加味することもあり得る。感染拡大・医療逼迫(ひっぱく)が悪化した場合には、さらに“強い対策”が必要になる可能性もある」と述べている。

これについてNHK「日曜討論」では、ニッセイ基礎研究所上席研究員の久我尚子氏が「これまでの感染防止対策の経験を踏まえ、現状に合った形でポイントを抑えた印象だ。コロナ禍が長引く中で、社会経済活動を維持するため動かせるところは動かしていくことは重要な考え方だ」と評価する一方、「政府に分かりやすい形でメッセージを発信してほしい」とも注文。

後藤茂之厚労相は、「リスクの高い場面で接触機会をなるべく減らしていく。そこを重点的にやるべきだと受けとめていく。地域によって、感染状況を踏まえて人流抑制は有効な手段と思っている」と提言の両論併記を指摘。「重点を置く部分でメッセージに少し違いが出る捉え方になっている部分もある」と、さながら火消し役に回った格好だ。

全国知事会会長の平井伸治鳥取県知事は、時短営業を迫られる飲食店に関し「今の感染拡大は飲食店だけで起こっていない。一番多いのは学校、保育園」と指摘、「ツボを押さえた対策をやるべき」だと主張した。

国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲貴夫氏は、人数制限は「結果的にはリスクの高いところに行く人の人流も減る。この二つのメッセージはつながっている」との見解を示し、医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳氏は、「マスクとか手洗いとか基本的感染防御策をこれまで通り徹底してやることが大切」と強調した。

6波はウィズコロナ

去年、五輪前後の5波では「感染ゼロ」を選挙で訴えた野党もあった。これから6波のピークが焦点だが、重症化を防ぎ、医療逼迫を回避し、感染対策と社会経済活動を両立させるウィズコロナ政策の流れをつくる、尾身氏がその節目となる発言をしたことに違いはない。
(窪田伸雄)

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