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原子力に対する潮目の変化にも知らぬ顔の半兵衛の反原発派メディア

原発への評価が分かれる年になりそうだ。

「もんじゅ」が“復活”
「原子力」に対する潮目が今年に入って変わった。2011年の東京電力福島第1原子力発電所事故後、メディアでは朝日が主導する反原発派が席巻し、太陽光や風力などの再生エネルギーに焦点を当て、原発を過去の遺物扱いしてきた。ところがどっこい、この風潮を翻すニュースが1月、相次いだ。

まず読売が元日付1面トップで放った「米高速炉計画に日本参加へ」。米原子力新興企業と米エネルギー省による次世代の高速炉開発計画に日本原子力研究開発機構と三菱重工業が加わり、技術協力する。福井県の高速炉「もんじゅ」の技術も共有し、日本国内での建設に活用するという。

元日に相応(ふさわ)しい明るいニュースだった。「もんじゅ」は使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再利用する日本の「核燃料サイクル政策」に不可欠な施設だが、不祥事が相次ぎ16年に廃炉が決まった。原子力をめぐる国家プロジェクトが挫折し、福島原発事故に続く第二の原発敗北とされた。それが“復活”する。

さすがに他紙も無視できず、日経は3日付、朝日は4日付で報じ、産経は7日付主張で「日米の原子力連携 高速炉への協力は好機だ」と歓迎した。読売は15日付社説のほか、16日付社説では寒波による電力需要逼迫(ひっぱく)の対策に「原発の活用が不可欠だ」と論じた。

EUが原発活用方針

もう一つのニュースは、朝日が3日付1面肩で報じた欧州連合(EU)の「原発活用」。EUの行政を担う欧州委員会が原発を地球温暖化対策に役立つエネルギー源だと位置付ける方針を発表したもので、朝日3面では「脱炭素化、過渡期に『役割』 EU内、割れる立ち位置 原発活用」と解説している。

それによれば、EU内には13カ国に100基余りの原発があり、発電量全体の26%を占める。ドイツなど計5カ国は脱原発を唱えるが、原発が発電量の約7割を占めるフランスのほか、今は原発がないポーランドなど計10カ国が原発を加えるよう要請。ロシアを含む資源国への依存を減らす「エネルギー安全保障」の面からも原発を推す声があるとしている。

これを朝日はどう受け止めたか。欧州の原発活用も日米原子力連携も社説で扱っていない(23日現在)。毎日は11日付社説で「脱炭素と日本企業」をテーマにしたが、自動車業界の電気自動車(EV)の話題で、原子力について一言もない。反原発派メディアは原発活用には知らぬ顔の半兵衛を決め込む魂胆なのか。

朝日にはEUのような柔軟性はないようだ。7日付の「考 2022年の先へ」との連載で「原発と地域」を取り上げ、「進む再稼働 口ごもる島民」と題するルポ記事を載せている。朝日の大物記者(編集委員)が宮城県・女川原発の対岸にある島を訪れ、原発に否定的な元校長が営む民宿を足場に取材しているから、島民が「口ごもる」のは知れたことだろう。それをあたかも「再稼働に反対だが、それを口にできない」といった印象操作に使っているなら、島民がいい迷惑ではないか。

若者が新構想を牽引

ちなみに福島第1原発のある福島県双葉郡は今、新たな地平に向かっている。廃炉する福島第1、第2原発を最大限に活用し、世界的な廃炉技術や原子炉の遠隔ロボット、放射線研究・教育機関の設置など「福島イノベーション・コースト構想」に取り組む。それを若い世代が牽引(けんいん)している。

こういう人たちを朝日の支局記者が取材したらどうだろう。昨年6月、廃炉用のロボット開発に取り組む福島高専機械システム工学科の4年男子学生が抱負を語っている。
「安全に利用できる原子力発電について研究し、社会に役立つ技術を発信したい。(中略)将来は、国などの研究機関で安全な原発の設計や開発に携わりたいです」(朝日福島版21年6月7日付)

福島においてすら堂々の原発推進発言である。もはや反原発派に未来はない。
(増 記代司)

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