情報戦の一端を生々しく伝えるも日本に矛先向ける残念な毎日の連載

アメリカと中国の国旗

間近に迫る台湾有事

2022年の日本を取り巻く内外の10大リスクのトップは「『終身独裁』習近平が台湾侵攻」、2番目は「中国不動産バブル崩壊で世界不況」。年末の経済雑誌にそうあると、元日付の本欄で教えられた。共産中国が今年の最大のリスクというわけだ。

本紙読者はすでにお読みになっただろうが、台湾有事はもはや、「起きるかどうか」ではなく、「いつ、どのように起きるか」。その視点に立った本紙シリーズ「『台湾有事』のシナリオ」(4日付~)はリアルに危機を予測している。

前統合幕僚長の河野克俊氏は三つのシナリオ、新台湾国策シンクタンク主任研究員の李明峻氏は六つのシナリオを挙げる。可能性が高いのはサイバー作戦で台湾を麻痺(まひ)させた後、総統府を占拠して総統を拘束し、台湾政府全体を機能停止に追い込んで降伏させる「斬首作戦」。あるいはフェイク情報を流して台湾世論を分断し、「親中臨時革命政府」を組織して、その要請で「内政問題」と称しての軍事侵攻。情報戦は始まっている。

真偽の見極めが重要

その一端は毎日の年頭シリーズ「オシント新時代 荒れる情報の海」(12月31日~1月6日付)で知れる。オシントとは「オープンソース・インテリジェンス」(公開情報)のことで、氾濫(はんらん)する情報の真偽の見極めが重要と指摘する。

元日付はロシア政府系メディアの対日情報工作。ヤフーニュースの読者コメント欄の投稿原稿に「日本は大人になり、米国の『スカートの下』に隠れるのをやめる時だ」と書き加え、日米分断を企てたという。さらに中国の工作についてこう書く。

「公安調査庁が年に1度発表する国内外の治安情勢をまとめた報告書(17年版)は、『沖縄の帰属は未解決』との主張に関心を持つ中国の研究機関が、『琉球独立』を求める日本の団体関係者と学術交流し、関係を深めていると紹介。その背景として『沖縄で、中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいる』と触れた」
これ自体は旧聞だが、毎日はあえて取り上げたのだろう。記事は「偽情報の世界的な動向に詳しい国内の研究者は『二項対立になりにくい日本の国政選挙では、外国勢力は干渉しづらい状況にある。しかし「賛成」「反対」の二択になる憲法改正の国民投票が現実となった時、危うい状況と認識すべきだ』と警鐘を鳴らす」と続ける。

日本の弱体化を狙う中露が改憲に賛成するわけがないから、危ういのは改憲へのフェイク情報や妨害工作だろう。確かにこれは危険だ。

6日付は中国のオシントに対する公安調査庁の「定点観測」。20年11月に中国の国立大学のホームページからロボット工学の研究所に所属する複数の日本人の名前が消えた。米国が中国の技術盗用を監視する「チャイナ・イニシアチブ」を開始し、日本でも中国への応用技術流出を危惧する論調が目立ち始めた頃のことだ。

調査官は「中国側がどのような技術に関心があるのか。学者をどのようにリクルートしているのか。インテリジェンス(情報収集・分析)機関として『定点観測』すれば、消えた情報やタイミングから、その意図や隠したいことがみえてくる」と語っている。

現実と論調とに大差

シリーズから情報戦の一端が生々しく知れる。だが、結論はいただけなかった。「公的機関も重きを置き始めたデジタル・オシント。使い方次第では、公権力による市民監視の拡大につながりかねない」。本格的な情報機関もスパイ防止法も存在しない丸裸・日本が危ういというのに矛先をその日本に向けている。これではせっかくのシリーズも画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く。

そういえば、昨年12月に過去最大の防衛予算案が伝えられると、毎日は「歯止めなき膨張許されぬ」(同28日付)と猛反対した。それで国が守れるのか。現実と論調に差があり過ぎる。もう少しリアルに国際社会を見るべきだ。

(増 記代司)

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