政治家の質低下危惧
週刊ポスト(1月14・21日号)が「新春スペシャル座談会9連発」として「2022大予言」を特集している。ポスト・コロナで社会が動き出すことが期待される今年の、経済、政治、外交から皇室まで九つの分野について識者・専門家がそれぞれ3人集まり論じたものだ。
とりあえず座談会をしておけば専門家がとんどん喋ってくれるし、編集も難しくなく、それにプロ野球や女優といった軟派な話題もあって、まるで正月のお節料理のようだ。出しておけば客は満足する。…という安易な“手抜き料理”だと思ったが、どっこい、けっこう読ませるものがある。
まず政治を見てみる。出席者は元経産官僚の原英史、元厚労官僚・元衆院議員の豊田真由子、元文科官僚の寺脇研だ。これまでの政権では官僚の人事に対して政治(官邸)が力を持ち過ぎ、「忖度」が入ってくる弊害を官僚たちは嫌というほど感じていたようで、岸田文雄首相の「聞く力」に期待を寄せている。
ただし、ただ官僚の言うことを聞いてくれればいいというわけではない。豊田は「政治家は手柄がどうとかではなく、官僚を使いこなして、共に力を合わせて、より良い政策の立案と実行をしてほしい」と注文する。官僚を使える政治家が少なくなったことへの不満というか、危惧がにじむ。
豊田はパワハラ問題で議員辞職したが、だいたい頭の回転が速い人間は他人にも同じテンポとスピードを求め、結果、パワハラ体質になりがちだ。現自民党幹事長にもその気があると週刊誌に書かれた。豊田が最近、メディアに登場しているのは、話題性というよりも、その能力の高さにあるだろう。
日本の停滞に危機感
原が日本の停滞に危機感を示す。「日本経済は30年停滞していると言われているが、世界がDX(デジタル化)やGX(脱炭素)で新しい産業革命に踏み出している中で、ここでさらに遅れると100年ぐらい差をつけられ、日本は完全に途上国に転落していく」と。
豊田は、「国際社会で日本は文句を言わないしお金を出すから嫌われてはいないけど、残念ながらどの国からも『本当の仲間』とは思われていない」と指摘する。「クール・ジャパン」はじめ、「日本はすごい」「日本に行きたい」など、聞いていて恥ずかしくなるくらいの“自己愛”や“自己美化”の番組や情報が多いが、これらは結果、日本をスポイルしているだけだ。現実を見て、早く対応しないことには、日本は本当に落後していく。
官僚は政治家に対し、耳に心地いい情報だけを出さず、メリット、デメリットを全部示し、政策を決定していくのが役割だ。岸田首相に本当の「聞く力」を求めるのは官僚たちの本音だ。
共感できる庶民目線
皇室問題について、漫画家の小林よしのり、国際政治学者の三浦瑠麗、漫画家の倉田真由美が対談している。この組み合わせは奇妙ではあるが、内情に詳し過ぎる「皇室ジャーナリスト」を入れるよりも、庶民目線で皇室を見ていて共感できる。
皇位継承の有識者会議が昨年12月に最終報告を出した。「女性皇族が結婚後も皇室に残る」ことと「旧皇族の男系男子を養子に迎える」案だ。小林は、「皇族が減ると、公務に支障が出るから」出した案だと切り捨て、倉田は、「目先の問題しか見ていないんですね」と応じる。国民にはこう映っているという話だ。
三浦は文藝春秋12月号の記事を引用し、小室眞子さんも秋篠宮佳子殿下も、「皇室としての不自由さに苦しんでいて、自由を得るためには結婚しかないと思い定めていた」という見方を紹介する。
将来、皇室を出ても困らない教育を秋篠宮家ではしており、悠仁殿下も同じ空気の中で育った。その一方で「愛子さま皇太子論、天皇論が湧き上がっています」と小林が指摘し、三浦は「秋篠宮家への批判の裏返しという側面も」あると分析する。専門家の対談よりもよほど面白かった。(敬称略)
(岩崎 哲)