
50年に1億人下回る
日本は少子高齢化が急速に進展した結果、2008年をピークに総人口が減少に転じており、わが国は人口減少時代を迎えている。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、50年には日本の総人口は1億人を下回ることが予測される。ニューズウィーク日本版12月21日号に経済評論家・加谷珪一氏は「人口減の処方箋は移民ではない」というタイトルで、次のように論じている。
「経済活動の主な担い手である生産年齢人口の減少が急ピッチで進んでいる。日本は高齢化と人口減少が同時に進んでおり、高齢者の寿命が延びていることから、消費よりも生産を担う人が先に減少していく。政府は移民による単純労働者の大量受け入れで対応しようとしているが、正しい処方箋とは言えない」
つまりこういうことだ。20年国勢調査によると15~64歳の生産年齢人口は7508万余で、5年前の前回調査と比較し226万余の減少に対し、総人口の減少は95万人近く、生産年齢人口の減少ペースが圧倒的に速い。これは「生産に従事する国民は減っているものの、消費する国民の数はそれほど減っていないことを意味している」のであり、「生産年齢人口の減少が即、経済規模の減少につながっているわけではない」という。
このような状況下では「産業の機械化やデジタル化を進め、より少ない人数で同じ生産を維持できればGDPは減少しない。付加価値が低く、国内で生産することが割に合わない財については輸入でカバーすればよく、むしろ国内産業を付加価値を高める方向に誘導すべきである。その意味で単純労働者の大量受け入れは、状況をさらに変化させてしまう可能性をはらんでいる」と展開している。
当座の対処には有効
2018年改正された出入国管理法によると、新たに「特定技能1号」と「特定技能2号」という在留資格を設け、1号資格は日常会話レベルの日本語能力試験と、受け入れ分野で活動するために必要な知識や経験を測る試験などに合格すれば取得できる。条件によって家族の帯同も可能になる。改正法のこれらの内容に対し加谷氏は「将来的には永住権の取得も可能となることから、事実上の移民の大量受け入れ策と考えてよい」という。
「大量の外国人労働者が入国すれば、国内の賃金はさらに下がる。企業は機械化やデジタル化を進めるよりも低賃金な労働力を雇うことでコストダウンが可能となるので、イノベーションも阻害してしまうだろう」「永住も視野に入れることを考えると、もし受け入れを実施するのなら、子供の教育支援など総合的な対策は必須だ」として「安易な移民受け入れ」の流れに釘(くぎ)を刺している。まさに正論である。
ただし、イノベーション対応は、人口減少が緩やかな期間、つまり当座の対処としては有効であるが、団塊の世代が物故する時期を経た30年過ぎには人口減少の度合いが一気に進み始め、応えきれなくなることが目に見えている。
人口減少時代の課題は国レベルだけではない。個々人も、「人生100年時代」と言われるような長い人生を、いかに有意義に過ごすかを考える人生設計の必要に迫られている。若い人たちの結婚・出産数の減少が憂慮される。
家族は生活力の源泉
アエラ12月27日号「子どもと2人 生活できた―希代のストライカー・大久保嘉人が引退」と題し、サッカーJ1歴代最多得点記録を持ち、今季限りで引退した大久保嘉人さん(39)の私生活を記している。大久保さんは妻と男子4人の6人家族。今季はセレッソ大阪に移籍したため、「妻と長男・次男・四男を横浜の自宅に残し、小学4年生の三男・橙利君と2人きりで大阪で生活した」という。
その時間を回想して「小学生の子どもと2人で生活していけた。家事なんてできる気がしないって男性もまだまだいると思います。でも、やろうと思えばできる。俺ができたんだし。自分の経験を話して、行動してみれば誰でもできるってことを伝えられたらいい」と。記事に直接的な記述はないが、大久保さんのキャリア形成で、家族や家庭の存在が大いに励みになったし、否、生活力の源泉になっていたことがしみじみ分かるのである。
(片上晴彦)