各誌恒例の新年予測
2021年は前年からの新型コロナウイルスで始まり、デルタ株の爆発的な感染拡大からオミクロン株への移行という形で終始した。東京夏季五輪の開催といったビッグイベントはあったものの、記録的な暑さや大雨による洪水の多発など国民は総じて不安な日々を送ることの多かった一年ではなかっただろうか。果たして、22年はどのような年になるのか、経済誌が恒例の「新年予測」を特集している。
週刊東洋経済は「2022大予測」(12月25日・1月1日合併号)、週刊ダイヤモンドは「2022総予測」(同)、そして週刊エコノミストは「日本経済総予測2022」(12月21日号)「世界経済総予測2022」(12月28日・1月4日合併号)と2週連続で取り上げている。
ところで今年は、何よりも選挙の年と言える。イタリア大統領選(1月)から始まり、韓国大統領選(3月)、フランス大統領選(4月)、フィリピン大統領選(5月)、参議院選挙(7月)、米国中間選挙(11月)と相次いで行われる。特に日本の外交に大きく影響するのは韓国大統領選と米国中間選挙であろう。
そこで経済誌は通常、新年予測で株価、為替、そして経済成長の見通しを最初に紹介する。エコノミスト、ダイヤモンドは今年もそうしたつくりになっている。ただ、東洋経済は民間エコノミストによる経済予測は後半部分に下げた。それで前半部分はといえば、国内外の有識者16人によるインタビューや日本を取り巻く10大リスクを並べ、日本がどのような状況に置かれているか巨視的な視点で論じている点が興味深かった。
台湾危機への備えを
確かに、民間エコノミストの予測といっても前提条件で数値は変化する。当たるのか当たらないのか分からない数値を見るよりは、日本が抱える課題を列挙して論じ、それを読者が判断するといった材料を示した方が興味は湧く。
例えば、東洋経済は日本を取り巻く内外の10大リスクとして、①「終身独裁」習近平が台湾侵攻②中国不動産バブル崩壊で世界不況③米中間選挙めぐりトランプが国内騒乱起こす④新変異種多発でロックダウン再拡大⑤インフレ高進で利上げ、コロナ相場暴落⑥バイデン過労で倒れハリス大統領が誕生⑦自然災害多発で世界的な食糧危機に⑧参院選で自民敗退、「決められない政治」へ⑨北朝鮮「核ミサイル」で緊張再び⑩反日大統領の誕生で日韓関係が泥沼―といった項目を挙げた。
これらの事例は単なるリスクではなく現実味を帯びているが故に説得力がある。こうした最悪の状況を想定して対処していかなければならないのは当然のことである。中でも中国の台湾侵攻に関してはフランスの経済学者のジャック・アタリ氏がインタビューで「中国と台湾は依然として緊迫した状態にあり、東アジアでは非常に激しい紛争が勃発する可能性がある。日本は不測の事態に備える必要がある。…(領土を守るに際して)確かなことは最終的に頼りになるのは自国だけということを意識すべきだ」と述べ、台湾危機、領土侵犯への備えを強調する。
脅威の極超音速兵器
もちろん、エコノミストやダイヤモンドでも注目すべき論文は幾つか掲載されている。その中の一つがエコノミスト誌の小原凡司・笹川平和財団上席研究員の「極超音速兵器」の記事である。中国が現在開発中の音速の5倍以上の速度で飛行するミサイルを迎撃するのは難しいとされるが、小原氏は「極超音速で運動できる運搬手段から複数の核爆弾を発射されれば、これを防御するのはなおさら困難である」と指摘する。
かつて第2次世界大戦中に英国はドイツのロケット攻撃に悩まされ、英国民は不安のどん底に落とされたが、今まさに日本がその二の舞いになりかねない状況に陥る可能性もある。中国が暴発しないためには、何よりも日米、さらには豪州を含めたインド太平洋地域の連携が一層求められる一年になる。
(湯朝 肇)