子供のSNS利用を制限する動きが海外で広がっている。豪州では昨年12月、16歳未満による対象SNSのアカウント利用を防ぐ措置が事業者に義務付けられた。一方、英国はSNSの仕組みに着目し、子供を有害情報から守る対策を求めている。日本にはどのような制度や教育が必要か。法律を子供向けに解説したベストセラー『こども六法』の著者で教育研究者の山崎聡一郎氏に聞いた。
(聞き手・山田芙珠美)

――海外で子供のSNS利用を規制する動きをどう見るか。
試行錯誤しているという感じだ。いじめや性被害などSNSによって引き起こされる被害そのものは、特段新しいわけではない。ツールが変わっただけで、被害の内容はそこまで変わらない。ただ、SNSは加害者の大人にとっても、利用する子供にとっても手軽な道具だ。それが被害を広げる要因になっている。
SNS規制のやり方の一つは、未成年一律禁止型で、豪州などが代表的だ。もう一つは英国などで、SNSのメカニズムに問題があるという考え方だ。
例えばショート動画は、人間の脳に作用するようなアルゴリズムを使っているから危険であり、それを規制しようという試みだ。これはある種、大人にも恩恵がある。
■抜け道を探す子供
――日本でも年齢によるSNS利用規制は必要か。
仕組みで押さえていくことはもちろん必要だ。ただ、未成年者の利用を一律禁止することを事業者へ義務付けるのは問題がある。
ネット上の年齢確認は、年齢や生年月日を入力させる手法が一般的だ。子供が嘘(うそ)を入力することもできる。事業者が仕組みを取り入れても、子供は抜け道を見つけるだろう。
豪州で行われた調査では、未成年一律禁止の後も子供の8割ぐらいがSNSを使っている。使いたいものを使ってはいけないと言われたら、抜け道を探すのが子供の性(さが)、人間の性だ。
だから、子供がSNSを使う前提でどうやって被害を防ぐかを議論しなければいけない。一律禁止は見た目のインパクトはあるが、それだけだ。
――律禁止には、ほかにどんな問題があるか。
未成年者が抜け道でSNSを使うと、被害に遭った時に助けを求められなくなる。
例えば、学校に持っていってはいけないゲームが盗まれたとする。窃盗なので、絶対にSOSを出していい案件だが、「ゲーム持ち込み禁止なのに、持ってきたのが悪い」となり、言い出しにくくなる。
SNSも同じで、「使っているのが悪い」となれば、SOSを出せなくなる。規制も完璧ではなく、被害がより深刻になるなら、あまりいい政策とは言えない。
――規制と併せ、どのような教育が必要か。
理想を言うなら学校教育だ。ただ、GIGA端末の利活用状況は、教職員のリテラシー次第というのが現状だ。「何に使ったらいいんだ」となっている学校もあれば、活発に使っている学校もある。同じ端末を同じ予算で配っているはずなのに、差がついている。
メディアリテラシーとネットリテラシーは学校でも最低限教えている。ただ、パスワードの設定方法や、見知らぬ人とどう付き合うかといった実践的なところまでは踏み込みづらい。
ネットリテラシー教育は陳腐化しやすい。10年前と今ではインターネットの様子が全く違う。技術進歩が速い分、教える内容の特定が難しい。それでも、使わせない方が楽だからと禁止して教育しなければ、SNSの使い方を習得していない大人が世に解き放たれるだけだ。
■公開認識し判断を
――子供が身を守るために、知っておいてほしいことは。
インターネット上のサービスに何かを投稿することは、その情報を全世界に公開しているのだという認識を持たせる。これは大前提だ。その認識があるだけでも、どの情報なら出していいのか、何を出してはいけないのかという判断が変わる。
――SNS上でいじめやトラブルに巻き込まれた場合、いつ助けを求めればいいか。
いじめ防止対策推進法では、被害者が「嫌だ」と思ったら「いじめ」だ。嫌だと思ったら相談していい。相談する権利を持っていると認識することが大事だ。知らない人からDMが来たぐらいでも、助けてくれそうな大人と共有したらいい。ネットで頼りになると思った大人が実は加害者というケースが多いため、リアルな大人に頼りやすい環境を作ることが重要だ。
刑法に書かれているような犯罪に当たる一線を越えたら警察案件だ。その線引きを共有しておくことも、子供が大人に相談しやすくする上で重要な知識になる。
【プロフィール】
やまさき・そういちろう 1993年、東京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。東京大学大学院学際情報学府在学中。株式会社Art&Arts代表取締役、法教育学習塾「こども六法スクール」代表。小学校6年生の道徳教科書(東京書籍、日本文教出版)を執筆。主な著書に『こども六法』(弘文堂)など。







