トップオピニオンインタビュー【インタビューfocus】臓器売買の警戒強める台湾、法改正で透明化徹底-台湾国際臓器移植ケア協会 黄千峯副理事長

【インタビューfocus】臓器売買の警戒強める台湾、法改正で透明化徹底-台湾国際臓器移植ケア協会 黄千峯副理事長

 中国国内に住む少数民族や法輪功学習者など「邪教」のレッテルを貼られた人々に対する「臓器狩り」の被害に遭うとして国際的な問題となっている。日本では、不正な臓器移植への対策・法整備を求める陳情が複数の地方議会で採択。台湾でも中国の非人道的な生体臓器移植に、台湾人の関与を阻止するための法整備が進められている。「臓器狩り」の問題について、台湾国際臓器移植ケア協会の黄千峯副理事長に話を聞いた。(聞き手・石井孝秀)

黄千峯医師(石井孝秀撮影)
黄千峯医師(石井孝秀撮影)

 ――2015年に台湾では「人体器官移植条例」が改正された。

 海外渡航による不正移植阻止の取り組みが盛り込まれた。日本と同じく臓器売買は禁じられていたものの、海外で臓器売買をした際の罰則はなかった。臓器を求めて台湾から年間数百人が中国に渡って移植手術を受けていたことが明らかになり、それに伴っての改正だった。

 法改正で違法な海外移植ツーリズムに対する法的処置を強化。違反した場合、懲役1~5年と、30万~150万台湾㌦(約150万~750万円)の罰金が科されることが決まった。

 医療の透明性も高められ、海外へ患者が臓器移植に行く際、担当の医師には報告義務が課せられた。移植手術をする病院名や執刀医、日時、移植した臓器など、すべての情報を登録しなければいけない。登録のない患者には免疫抑制剤の支給が停止される。

「臓器狩り」の拡大に懸念

日本は厳罰化と法整備を

――台湾のドナー登録数はどれくらいか。

 現在、台湾の人口3%がドナーになっており、約70万人のドナーがいる計算だ。法改正では規制緩和も行われ、生体ドナーの提供先は5親等の親族の場合のみに限られていたが、親族への臓器提供がマッチングしなかった場合、第三者への臓器移植も可能になった。

 ただ、不十分なところもある。もし医師が悪質な臓器移植に関わっていた場合、医師免許の取り消しも可能とされているのだが、具体的にどのような判断基準で「取り消し」となるのかが不明確だった。また、医師などには罰則があるが、移植手術を受けた患者自身への罰則はない。それ以外にも親族間での臓器提供の強要なども心配されており、さらなる法整備が必要だ。

 ――非人道的な臓器移植阻止のため、日本側が進めていくべきステップは。

 日本では2023年、臓器移植を無許可で斡旋(あっせん)したとして、NPO法人の理事が臓器移植法違反の疑いで逮捕され、同年11月に東京地裁で理事が懲役8月、法人に罰金100万円という判決が出た。

 だが、罰則100万円というのは安過ぎて抑止力にならないだろう。海外での臓器売買には強制生体移植の可能性があり、絶対に手を出してはならないと、もっと強く認識してもらう必要がある。

 ――台湾は海外での臓器移植が減少傾向だと聞いている。

 その通りだが、違法な臓器移植を巡るトラブルや検挙数はゼロではない。2024年11月、中国で臓器移植を斡旋していた組織が摘発された。16~19年にかけて10人の台湾人患者を中国側に仲介し、肝臓や腎臓の移植を受けさせていたことが判明した。総額1466万台湾㌦の紹介手数料を受け取っていたという。事件関係者5人のうち1人は医師で、この医師には500万台湾㌦の罰金が科せられた。

 こういった摘発が海外移植の減少につながっている。日本でも法制化と厳罰化を進めないと、非人道的な移植ツーリズムの断念という方向には進みづらいのではないか。

 ――日本だとなかなか問題意識が根付きにくく、大手のメディアでも大々的に報じられるケースは少ない。

 日本の現状は10年ほど前の台湾と似ている。現在でこそ台湾の主流メディアも臓器狩りについて盛んに報じるようにはなったが、それまでは地道な広報・啓発の活動が続いていた。

 別のアプローチとして臓器移植と関わりのない人々であっても、中国の「臓器狩り」は決して他人事(ひとごと)ではないと知る必要があるだろう。英国のガーディアン紙は2005年、中国から輸入した化粧品に、死刑囚の皮膚から採取したコラーゲンを使用していると報じた。医療現場で使用される医療品の中にも、人体由来のものがあるとされている。

 現在でも一般大衆が使用する商品や医療現場で使われる製品に「人体」が利用されている可能性はないとは言えない。

臓器移植を目的に海外渡航する「移植ツーリズム」を批判したポスター=2024年10月、東京都(石井孝秀撮影)
臓器移植を目的に海外渡航する「移植ツーリズム」を批判したポスター=2024年10月、東京都(石井孝秀撮影)

 ――台湾人が臓器収奪に巻き込まれるケースは。

 台湾でこの問題に大きな関心を寄せられるようになった原因の一つに、海外で台湾人がある事件に巻き込まれたことが挙げられる。カンボジアを観光中の台湾人が臓器目的に襲われ、監禁されかけるという事件も発生した。

 私が懸念するのは、中国から臓器収奪の一連の組織体制やシステムが広がり始めているのではないかということだ。中国では臓器収奪が組織化され、病院や軍隊も関わっていることも指摘されているが、一帯一路構想を通じて、この「ビジネス」方式が拡大されている可能性も捨てきれない。

 最近のデータによると、カンボジアで臓器移植を受ける台湾人が増えている。もともと医療が発達している地域というわけでもなく、移植先としてはあまり多くなかった国だ。近年、移植者が増えていることと臓器収奪に関連性がないのか、不安を感じる。

 ――臓器狩りについて問題提起した「国家の臓器」というドキュメンタリー映画が、台湾で大きな話題となった。

 中国共産党は全世界の中国人に対して、自分たちが管理する権限を持っていると思っている。国家が求めれば、国民は国家に求められれば臓器を提出すべきという精神だ。

 「国家の臓器」が全国の映画館で公開され、台湾中で認知度が浸透している。中には映画館に「爆弾をしかけた」という脅迫電話もあったようだが、この騒動が逆に注目を集める結果となった。日本の学生など、若い人たちも見て問題を知ってほしい。

 このドキュメンタリー映画が台湾世論に大きな影響を与えている。以前は台湾も平和ボケが危惧されていたが、今では中国に侵略されれば、自分たちの臓器も「国有化」されてしまうという危機感が強まっている。


 【略歴】黄千峯(ファン・チェンフォン)
 国立台湾大学公衆衛生大学院で疫学・予防医学研究院博士課程を修了。米国ジョンズ・ホプキンス大学公共衛生修士課程修了。現在は台湾衛生福利部(厚労省相当)苗栗病院の精神科部長、台湾国際臓器移植ケア協会(TAICOT)の副理事長。台湾において、不正な臓器取引を防ぐ活動を続けている。

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