トップオピニオンインタビュー安倍元首相暗殺事件から4年 問題のすり替えで本質見失う 著述家・加藤文宏氏に聞く(上)

安倍元首相暗殺事件から4年 問題のすり替えで本質見失う 著述家・加藤文宏氏に聞く(上)

家庭連合への解散命令を正当化

 安倍晋三元首相暗殺事件から8日で4年となった。憲政史上最長の政権を樹立した首相経験者が、参院選の応援演説中に殺害されるという衝撃的な事件は、被告の母親が世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の信者であることが判明してから、教団に対する激しい批判を招き、最高裁で教団への解散命令が確定する事態に至った。なぜ、憲法で保障された信教の自由が侵害される結果となったのか。著述家の加藤文宏氏に聞いた。(聞き手=宮田陽一郎)

著述家 加藤文宏氏
著述家 加藤文宏氏

 ――安倍氏暗殺事件からの4年間をどのように見るか。

 本質を見失う4年間だったのではないか。まず銃撃事件が、政治と宗教の問題にすり替えられたというのが本質を見失う出発点であり、結論だと思う。この結果、日本の社会は家庭連合への解散命令や信徒への人権侵害を正当化せざるを得なくなってしまった。それを批判することができないという矛盾を抱え込んでしまった4年間だった。

 宗教と政治の問題と言っても、例えば自民党がこういう政策を作らされてしまった、あるいはこういう法案となって提出されてしまったという事実、そして国民が利益を損ねたという事実が全くないまま社会全体が流されてしまった。

 その結果、最終的には司法までも、社会の空気や政治家の判断を正当化するために矛盾を抱え、その矛盾が家庭連合への解散命令という形になってしまった。そういう意味で、出発点である安倍氏暗殺事件の問題の本質を見失ったままになっている。

安倍晋三元首相が銃撃された現場に献花に訪れ手を合わせる人たち=2022年7月8日午後、奈良県奈良市(森啓造撮影)
安倍晋三元首相が銃撃された現場に献花に訪れ手を合わせる人たち=2022年7月8日午後、奈良県奈良市(森啓造撮影)

 1月21日に奈良地裁で、安倍氏を殺害した山上徹也被告に無期懲役の判決が下された。山上被告側は控訴したが、これで事件は解決したと思うか。

 司法や政治、社会全体が事件に対する公正な判断や考え方、見方を失っているので、解決からは程遠いのではないか。控訴しても、弁護団は地裁と同じことを主張するしかない。

 安倍氏が暗殺された直後に、宗教と政治の関係というテーマに話がすり替えられた。ところが、献金というキーワードを使って、宗教と消費者トラブルというテーマにもすり替えられてしまった。一転、二転して全く別のテーマになっている。控訴して高裁で新たな審理が始められたとしても、すり替えが繰り返されるだけだから、全く本質には近づかない。社会が反省するきっかけにもならないのではないか。

 宗教と消費者トラブルというテーマは、山上被告自身が否定している。被告は大学に行けなかったのではなく、当時は社会に対して捨て鉢な態度になっていたので行きたくなかった。母親は「お金はいくらでも用立てできるから大学に行きなさい。浪人してもいいから」と言っていた。これは間違いない。だから、被告自身が宗教の被害者かと言えば違う。弁護団の法廷を使った宣伝戦で社会の認識が間違った方向に行ってしまい、なかなか修正できない状況だ。

 安倍氏の事件後、メディアは家庭連合を激しく糾弾した。家庭連合に対する報道の問題点は何か。

 1980年代から90年代に当時の統一教会に行われたスキャンダラスな報道、芸能ニュース的な報道が、安倍氏の事件以降に繰り返されただけで本質は変わっていない。2000年代に入ってから事件の起きた22年まで家庭連合は社会的には忘れられた宗教団体で、信徒のこともとやかく言われていなかった。1980年代、90年代に取り沙汰された人たちについての記憶も薄れている状況だった。

 安倍氏の事件が宗教と消費者トラブルの問題にすり替わったが、2020年代にトラブルはないので、家庭連合を批判する人たちには攻める手段がなかった。だから、1980年代、90年代のゴシップをもう一度繰り返すしかなかった。

 ただ、当時と違う点が二つある。一つ目は安倍氏が公衆の面前で殺されるという非常にショッキングな事件があって、世の中に衝撃が広がったという下地があったこと。二つ目は、一般人がひどい消費者トラブルに巻き込まれるという幻想が、山上被告や他の宗教2世を利用して生み出されたことだ。


加藤文宏先生略歴
 かとう・ふみひろ 1964年生まれ。静岡県出身。加藤文名義で小説を発表するほか「月刊IJ」を創刊して幅広い人物を取材。東京電力福島第1原発事故後は風評被害や自主避難者問題に取り組み、報道が引き起こした情報災害に注目。報道問題を中心に分析と論考を論壇誌などに寄稿。『検証 暴走報道』では安倍晋三元首相暗殺事件から世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への解散命令請求までを整理した。

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