トップオピニオンインタビュー【対談】どうする、日本の少子化問題 (下)大泉博子氏 x 田村重信氏

【対談】どうする、日本の少子化問題 (下)大泉博子氏 x 田村重信氏

「『人口省』の創設を」 元衆院議員・大泉博子氏

 ――少子化問題を解決するための提言はありますか。

 大泉 今の社会が深刻であることを一人一人が気付くべきなんです。今は50歳時の未婚率が、男性で3割、女性で2割に達しており、さらに上昇し、男性が4割、女性が3割に近づいています。しかも、今結婚しても子供が生まれない割合は1割以上です。女性の無子率で見ると子育て世代の年齢層の女性約3割が子供のいない人生を送っていることになります。団塊世代では50歳時未婚率が男性1割、女性6%弱ぐらい。「全婚時代」でした。

 今はそれとは全く異なる世界です。これではこの国の経済力が弱っていくのは当たり前だし、しかも日常生活の中で子供の姿を見ないで生きていること自体、健全ではありません。これはいかん、と政府は思わないといけません。

 子育て政策から人口政策に切り替えるために「人口省」を創設すべきだと提言します。しかし、政府は全く口にも出さない。岸田政権で発足した「こども家庭庁」は結局、厚労省の部局が引っ越しただけで、人口政策にはなりません。人口省をつくり、人口問題審議会と人口白書を復活させ、国民にこの異常事態を意識させるべきです。今から子供だけ対象の少子化政策を打ち出しても焼け石に水です。

 結婚を支援するためのさまざまな方策を講じなければなりませんが、具体的な政策としては、結婚する人への市営住宅の優先提供や、第2子以降への金銭給付が有効です。スウェーデンでは1990年初頭の改革の一環で、第2子を1~2年以内に産むと休業給付が100%になる仕組みで出生率が上がりました。

大泉博子氏
大泉博子氏

「男性の意識変えよ」  政治評論家・田村重信氏

 田村 そう、そこに着目して政策を持っていく以外にない。時代の変化に合わせて仕事と子育てを両立させないといけない。女性が働くようになったから、大事なのは、男性の意識を変えることです。育児への協力、育児休業など職場の意識を変えていくこと。日本を含めた東アジアの国々で出生率が低い要因に男尊女卑的な意識があるため、これを払拭しないといけません。

 それから、外国の育児支援の現状を調査すると、フランスやスウェーデンは公的な家族給付の割合が日本よりはるかに高いです。成功している国は「現金給付+保育・教育サービス+働き方改革」を長期的に一体で進めています。

 地方自治体の例を見ると、首長のリーダーシップが明確です。香川県は出生率、出生数ともに4年ぶりに前年を上回りました。23年度以降、保護者が保育士に相談できる拠点を約200カ所に整備するなど、切れ目ないきめ細かな支援によって、子育てしやすい環境づくりを進めてきました。

田村重信氏
田村重信氏

 大泉 OECD(経済協力開発機構)諸国の中で家族給付が少ないのは日本と韓国です。ただし、日本のような人口規模の大きな国では、北欧のような小規模国家と同じ手法をそのまま適用するのは難しいのです。

 地方で子育てサービスを強化しても、自分の所さえ良ければという、小さなパイの奪い合いになるだけです。やはり国主導で政策を進めなければなりません。

 また、中長期的には教育制度の大改革も不可欠です。大学を整理・統合しつつ、大学までの無償化を実現することです。子供を産まない最大の理由は教育費がかかり過ぎるということです。

 小学校の入学年齢を1年早めて5歳にすることを提案します。結婚しても子供が生まれない割合が上昇している要因の一つが晩婚化です。1年早めれば21歳で大学を卒業できます。若者が社会に出る時期を早め、結婚のタイミングを早める効果が期待できます。こうした施策は厚労省でも総務省でもできませんし、文科省も独善的になりがちです。だからこそ、すべてを統括する「人口省」が必要なのです。少子化政策ではなく、人口政策を進めなければいけません。

少子高齢化の一因はGHQの優生保護法

 田村 全ての政策を「人口問題」をベースに考えるべきですね。最近だと自衛隊や警察が定員不足で、人口減少を前提としてやりくりし、技術革新で工夫せざるを得ない時代に入っています。「大事な問題だ」と口にするだけでなく、具体的な行動を起こさなければなりません。

 大泉 歴史を振り返ると、国家総動員法が公布されてから3年後の1941年1月22日、近衛文麿内閣が人口政策確立要綱を作りました。結婚年齢を3歳早めることと、1組当たり平均5人の出産を奨励しました。ところが戦後、アメリカで産児制限を提唱していたマーガレット・サンガーの友人でGHQ(連合国軍総司令部)のバックアップを受けた加藤シヅエ(社会党)らが推進した「優生保護法」により、中絶が合法化され、出生数が抑えられました。49年には経済的理由で堕胎できるという条項が盛り込まれ、翌年から出生率が激減しました。

 優生保護法がなければ、ベビーブームは10年は続くはずでしたが、わずか3年で終わってしまいました。もしベビーブームが他国のように10年続いていれば、これほど急激な少子高齢化にはなっていなかったはずです。あろうことか、戦後の1954年にサンガー夫人が再来日した際、日本政府から産児制限を広めたことを理由に勲章を授与されました。

 田村 人口問題と併せて移民の問題についても考えなければなりませんね。

 大泉 外国人を労働力として受け入れるなら、日本語教育や国籍取得のプログラムをしっかり整えるべきです。そして何より、社会全体で子供を育てる喜びを共有し、家族という最後の拠(よ)りどころを大切にする文化を取り戻すことが、根本的な解決につながるのではないでしょうか。

(司会=本紙編集局次長・豊田 剛)

【対談】どうする、日本の少子化問題 (上)大泉博子氏 x 田村重信氏

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