先の大戦が終結して80余年が経つ。日米開戦や戦後問題を総括する著書を出版した元武蔵野女子大学教授の杉原誠四郎氏と真珠湾史実研究家の白松繁氏が、真珠湾攻撃の従来の定説である「騙し討ち」説やGHQ(連合国軍総司令部)による占領政策について対談した。

米国民の8割が対日戦に反対 白松
白松 昭和16(1941)年10月の東条英機内閣発足後、最初の政府連絡会議が開かれました。これは戦争開始を前提とした戦争準備態勢の詳細説明が主体で、いわば開戦承認強行のための会議でした。東郷茂徳外相もこの流れの中で、東条首相には開戦回避の意思はないと判断していたと考えます。山本五十六・連合艦隊司令長官が真珠湾攻撃に懸けたのでしょう。
東条はもはや、わが国はここまで来たら開戦する以外の選択はないと主張していました。この強行路線に反対する者は東郷を含め皆無でした。これがその時の「空気」だったと考えています。その後、「ハルノート受領、一時的な試案」と明記してあるのに東郷は頭が真っ白になったと言って即交渉中止を決定してしまいました。
そして、ルーズベルト米大統領の狙い通り、開戦となったのです。どう見てもルーズベルトの方が上手(うわて)でした。実は米国民の80%以上が対日戦反対でした。現在のイランのように、トランプ大統領を相手に堂々と渡り合える技量は日本にはありませんでした。
私は米公文書館に何度も通い、日米開戦について日本による「騙し討ち」説を否定する本を出してきました。昨年末に出版した3冊目の『真珠湾攻撃 ルーズベルトは知っていた』(ミネルヴァ書房)が各メディアに取り上げられ、初めて騙し討ち説の崩壊を感じています。しかし、日本の学者や研究者は聞く耳を持ってくれません。米国でも一般の人々はある程度の理解を示してくれますが、政府はそれを認めてくれません。

「真珠湾」知っていたルーズベルト 杉原
杉原 でも、今回の白松さんの本で、ルーズベルトは日本海軍の真珠湾攻撃を事前に知っていたのだということが完全に証明されたことにより、これまでの歴史の書き換えが不可避になりました。ただ日本の歴史学者は正直でありません。メンツや立場を勘案して、真実を追究するということから外れています。史実が確定するまでには時間がかかり、途中で結論を間違えることはあり得るんですよ。歴史研究ですから、間違ったのであれば後で修正すればいいんです。
ともあれ、ルーズベルトは真珠湾攻撃を知っていたということが完全に分かり、ルーズベルトが米国民を騙して、無用に戦争を拡大し、無用に多大な犠牲を出したことが、いっそう明確に見えるようになったと思います。
ただ、米国はあれだけたくさんの戦死者が出ているわけですから。正しい戦争をしたんだと思い込みたいところがある分だけ、真実が見えにくくなっています。また、日米戦争に関して、産経新聞の岡部伸さんが言っていたことですが、日本は情報をある程度取るが、その利用の仕方がまずいという国家的な欠陥がありました。真珠湾攻撃の翌日のハワイの新聞は奇襲の被害が満載ですが、その片隅にドイツはモスクワ攻略に失敗して後退しているという短い記事が載っています。誠に皮肉なことです。独ソ戦で、ドイツは成功していないという情報を取って送ってきているのに、それを生かさず、独ソ戦ではドイツが勝利しているという前提で米国に食って掛かったということです。






