
キム・テイル 1993年生まれ。尹錫悦政権時に大統領直属の「国家教育委員会」で非常任委員を務める。保守系学生団体「新全国大学生代表者協議会(新全大協)」の元議長。現在、ソウル大学院の技術経営経済政策協同課程(修士)1年。
――地方選で発覚した投票用紙不足問題を若者たちはどう受け止めているのか。
普通の社会、企業では起こり得ないことがなぜ起きたのか、という思いだ。選挙管理委員会に憤りを覚えている。司法、立法、行政の三権から一切監査を受けない選管の構造的問題もさることながら、独立機関だから自分の権限が及ばないとして、最初、責任を回避していた政府の態度も問題視している。
――抗議集会は20代30代の若者が中心になっている。なぜか。
問題が最初に発覚したソウル蚕室(チャムシル)投票所の映像などがSNS上で拡散し、その影響を最初に受けたことが大きい。また、より本質的なことは、スターバックスが販促PRで光州事件を揶揄(やゆ)するような表現を使用したことに素早く反応した政府や政治家たちが、今回の事態には当初沈黙し、選管が解決すべき問題だとして傍観した。一貫性がなく、事案によって態度を変える姿に失望している。自分の損得勘定だけで動くのが残念であり、憤りを感じる。
――今回の事態で李在明大統領の支持率が急落。一部では20代女性の離反が原因との見方もある。
私が聞いたところでは、自分の出身地が特定地域(南西部の全羅道)で、これまで政治にあまり関心がないまま流れに任せて与党に投票してきた人たちが、候補者の討論会などをSNSなどで見て、あまりにも資質不足だったことに失望したという。ソウル市長選や仁川市長選の与党候補などがそうだった。
――今後、若者の与党離れは加速すると思うか。
その可能性はあると思う。一番の原因は政府・与党が進める「起訴取り下げ」法案の推進だろう。それまでの民主党支持者は、民主党を支持するというより、戒厳令反対派が多かった。だが、それで弾劾された尹錫悦前大統領は被告として裁判を受けているのに、幾つもの裁判で訴えられている李大統領に関しては起訴を取り下げようというのでは納得いかない。罪がないなら裁判を受けて無罪を勝ち取ればいいはずだ。
――若者世代特有の思いもあるのでは。
世代間の葛藤が大きい。職場の上司の世代になる40代50代は「最近の若者は極右になった」などと言うが、「極」が付くのは話し合いに応じず、強硬な態度で相手を制圧する人を指し、20代30代の多くは当てはまらない。20代30代は気になることや、分からないことがあったら調べる世代だ。反対意見があれば、それについても調べる柔軟性を持っている。だが、40代50代は「大人や先輩が言うことを聞け」と言われてきた世代なので、言われたら受け入れるべきだと考えてしまう傾向がある。20代30代が40代50代に抱く違和感や反発が、政治志向にまで及んでいるのだと思う。
――抗議集会は若者を中心に24時間休まず続いている。
特筆すべきは主催者がいないこと。不正選挙を主張する人たちもいれば、投票権侵害を強調する人もいる。集会の主導権を握ろうとした政治家もいたが、市民たちによって秩序正しく退場させられた。これといった準備なしに、スケッチブックをプラカード代わりに使う若者も多い。従来の「ろうそくデモ」ならぬ「スケッチブック集会」とでも言おうか。
――世論調査や出口調査の精度が問題視されているが。
世論調査や出口調査が外れる原因の一つに20代30代の存在がある。大統領選や総選挙と違い、地方選は教育監や市議会議員など多くの選挙が同時に実施され、世論調査の電話が頻繁にかかってくるので、面倒になって知らない番号の電話は無視する傾向がある。出口調査も20代30代はあまり誠実に答えないようだ。標本が正しく反映されないという問題がある。(聞き手=ソウル上田勇実)






