
トルコ出身で現在は米国に帰化した元プロバスケットボール協会(NBA)選手エネス・カンター・フリーダム氏は、中国の人権問題を批判した後、NBAでの契約機会を失い、現在は人権問題を訴える活動家として国際社会で発言を続けている。このほど本紙のインタビューに応じ、母国政府からの迫害やNBAでのキャリア喪失を経ても声を上げ続ける理由を語った。(聞き手=アメリカ総局長・山崎洋介)
――NBAのキャリアを失うリスクを負ってまでも、中国の人権問題について発言しようと決意したきっかけは。
私は長年、トルコの独裁や人権侵害について声を上げてきた。人権活動家を名乗る以上、自国だけでなく世界の理不尽にも向き合うべきだと考え、2020年から中国の人権問題について訴え始めた。
当時、中国政府の問題について、報復を恐れて誰もが沈黙していた。しかし、ウイグル、チベット、法輪功、香港の人々が受けている深刻な弾圧を知ったとき、「もう黙っていられない」と強く思った。
発言には大きな代償が伴った。チームメートは陰で私を支えてくれたが、公に支持を表明することはできなかった。支持すれば契約を切られ、スポンサーも失う可能性があったからだ。NBAのオーナーやコミッショナーも、約60億㌦規模の中国との巨額ビジネスを最優先していた。
――NBAが中国の影響を受けていると感じたきっかけは。
19年、当時ヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャー(GM)だったダリル・モリー氏が香港の民主化デモを支持する画像をSNSに投稿した直後、中国はNBA中継とスポンサー契約を停止し、NBAは巨額の損失を被った。NBAがその投稿を「不適切」とした瞬間、何か異常なことが起きていると強く感じた。
その後、ボストン・セルティックス在籍中に私が中国の人権問題を批判すると、中国はセルティックスの試合中継を停止した。その瞬間、背後の構造を暴く必要を確信した。
――宗教の自由など人権擁護に対する強い思いはどこから来るのか。
これは政治を超えた問題だ。共和党か民主党かは関係ない。宗教の自由や人権を守り、世界の良心の囚人に目を向けることは誰にとっても重要な責務だ。
私たちが米国で快適に暮らす一方、世界のどこかでは家族や命、住まいを失う人々がいる。だからこそ、これは私自身よりも、そしてバスケットボールよりも大きな問題なのだ。
――あなたのイスラム教の信仰は、活動にどのような影響を与えているか。
私の信仰は、背景や宗教、肌の色を超えて、無実の人々の側に立てと教えている。自由や民主主義、人権を守るために声を上げ続ける勇気も、信仰から与えられたものだ。
――恐怖を感じたことはあるか。
恐怖はある。トルコ政府に懸賞金をかけられ、殺害予告も日常だ。海外では誘拐されかけ、NBAからも追放された。それでも、これは私個人を超えた闘いだ。神から与えられた使命を果たしていると信じているから、恐れずに声を上げ続けられる。
――トルコにいる家族の状況は。
家族も犠牲になった。父は投獄され、妹は職を失い、弟は学校に通えなくなった。家族は「エネスとは関係ない」と声明を出さざるを得なかった。だが、苦しんでいるのは私の家族だけではない。何百、何千もの家族が助けを待っている。だから私は声なき人々の声になろうとしている。
――日本の役割についてはどう見ているか。
日本は米国にとって重要な同盟国で、地域でも大きな役割を担っている。だからこそ、日本の政治家には独裁政権を「非難するだけ」で終わらせず、具体的な行動を取ってほしい。日本は世界有数の技術大国で、制裁などを通じて実質的な圧力をかける力がある。日本の議員が勇気を持って動くことを期待している。






