
――昨年末の臨時国会で過去最大規模の補正予算が成立した。高市政権が進める「責任ある積極財政」は正しい方向性だと思うか。
国が大きな仕事をしようとする上で原動力となり武器となるのは予算。私は経済の先行きをそれほど心配していないが、対中関係悪化による影響が多少なりともあるので厳しい予算執行が求められる。
国際貢献をするにも国民生活を良くするにも、そのための予算を執行するためには財源がないと話にならない。増税しようとすれば厳しい反発に遭う。経済が右肩上がりではなくなり高度成長が見込めない中で、成長戦略を描くのがカギになる。
そこで、成長の種をどこに見つけていくのかが大事になる。空威張りで成長を前提に予算を組むのは、財政規律の上であまり好ましくない。補正予算は以前と比べて非常に大きくなっているが、それは必要な部分だ。まだそれに耐えられる体力があるので、今のうちに底上げし、官民挙げて成長の種を探し出してもらいたい。
――連立合意に盛り込まれた企業・団体献金の規制を巡っては自民と日本維新の会、さらに野党との間で意見の隔たりが大きい。
自民は他党と比べると圧倒的に所帯が大きい。その所帯を支える上で地方の割合が非常に大きい。企業・団体献金という糧道を断たれたら自民は立ち行かなくなる。
必ずしも個人献金が良くて企業・団体献金が悪いというものではない。企業・団体が献金することに何ら不思議はなく、頭から悪いものと決め付けるのは良くない。企業・団体に都合の良いような政治をするのではないかと厳しい批判はあるが、今、世の中には厳しい目がある。
労組・宗教に支えられている政党が存在する。労組・宗教のカネは善で、企業・団体のカネは悪という見方は不公平だ。節度ある企業・団体献金は必要で、透明性をはっきりさせた上で、意義があるものとして存続させるべきだ。
――国会議員定数削減は通常国会に持ち越された。成立の見通しは。
衆議院の定数は1990年の512議席を最高に、それから少しずつ下がっている。定数削減はこれまでずっと議論されてきた。しかし、何議席まで下げることができるのか、適正な数がどれぐらいなのか、一度たりとも議論されたことがない。自民が少数与党になり、反対意見を言いにくくなってしまった。
他の先進国を見ると、議員数は多い。それでも誰も文句を言わない。国会議員には国民のニーズをどう吸い上げていくかが問われているが、むやみに議員を減らせば議員1人の権力は強まるが、それでいいのか。人口の少ないところは見捨てられてしまう。削減するにも限界がある。どういう理由で1割削減なのか、説明する必要がある。むしろ、本当は議員がもっと必要なのかもしれない。
維新は大阪で議員定数を削減したが、それは本当に成功だったのか、市長や市民らのニーズにしっかり耐えられているか、しっかり検証する必要がある。地方でそれができても、国も同じように減らせばよいとは限らない。
国民から信用される国に
――高市政権は、スパイ防止法制定を含めたインテリジェンス強化を打ち出している。
吉田茂首相の時に内閣調査室を作り、インテリジェンスが必要だという議論がなされたが、骨抜きになった。敗戦国となり、インテリジェンスを作らせてもらえなかった弊害が今出てきている。
今、日本に求められている役割は、終戦後と比べると桁外れに大きい。国力が大きくなり、国際貢献しようとすると、日本を目の敵にする国が出てくる。中国、ロシア、北朝鮮の目の前に不沈空母のように立ちはだかっている日本の存在は腹立たしく見える。しかも、歴代首相の努力と国民の理解によって日米同盟は歴史的に世界で最も強固な同盟関係になり、高市首相も継承している。
軍事力で劣る日本はウサギのように長い耳を持って危険を早く察知しないといけないのだが、それができなかった。今の極めて厳しい国際情勢の荒波を乗り越えるには絶対にインテリジェンス・システムは必要だ。しかし、戦争の苦い経験があるから、さっと作るのではなく、じっくりと議論しなければいけない。そのためには、まずは国が国民から信用されなければならない。日本長期信用銀行が国有化された際、宮沢喜一元首相は「やっと日本国民も国を信用してくれるようになりましたね」と話していた。今、政権機構である自民が国民に信用されているかといえば、いささか疑問が残るのではないか。
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