トップオピニオンインタビュー新春対談 日本の保守再生はなるか(上)

新春対談 日本の保守再生はなるか(上)

日本のマスコミが国益損ねる

小川「中国の外圧は言論界が問題」
田村「憲法改め自衛隊を軍の形に」

出席者
 政治評論家 田村重信氏
 一般社団法人日本平和学研究所理事長・文藝評論家 小川榮太郎氏
 司会=窪田伸雄(本紙編集局長)

小川榮太郎
 おがわ・えいたろう 1967年東京都生まれ。大阪大学文学部卒、埼玉大学大学院修了。大阪大学在学中に文芸同人誌「一粒の麥」を発刊・主宰。98年、文芸春秋の文芸雑誌「文學界」の新人小説月評を担当。2003年、「川端康成の『古都』」が第35回「新潮新人賞」評論部門の最終候補となる。15年、一般社団法人日本平和学研究所を設立、理事長就任。著書に『小林秀雄の後の二十一章』(幻冬舎)『フルトヴェングラーとカラヤン』(啓文社書房)『「保守主義者」宣言』(育鵬社)『安倍晋三の遺志』 (かや書房)「作家の値うち」(飛鳥新社)など多数。

 小川 私はその前の“そもそも論”をします。高市さんの国会での答弁ですが、答弁そのものはどうみても問題ありません。問題はまず、朝日新聞がデジタル版で付けた見出しでしょう。日本が武力行使するという見出しです。「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』認定なら武力行使も」と書いた。高市さんは「武力行使を直ちに決断するということではない」と答弁したんです。明確に否定しています。だから、これは逆見出しです。

 この見出しに中国の薛剣・駐大阪総領事がXでとんでもない発言をした。つまり、朝日が誘導したのです。どこまで意図したかは別にして、彼らの見出しに中国が過激に怒って反応するという、このパターンがきっかけだった。

 これは日本の言論人たちの体質を変えるべきですよ。問題は朝日の見出しにあったわけです。それを高市さんの発言が問題だから撤回しろというのは問題のすり替えで、しかも国益を著しく損ねる。だからそういうことは日本の言論人がそもそも言うべきではない。

 高市首相は、存立危機事態を全て法律の範囲内で回答しています。ただ具体例を出して説明された。従来の首相答弁は仮定の質問には答えないという慣習がありましたからこの慣習は破ったことになる。その是非はもちろん皆で議論したらいい。首相としてはこういう問題では仮定の質問に答えるべきではないと批判する人がいても、私は、それはあり得ると思います。

 ただ、私は今回をきっかけに、政府解釈は変わらないけど、仮定の答弁を首相が全部曖昧にすることが本当に国民の目から見ていいのかと言ったら、やはり率直にそのあたりを話すということも一つの安全保障だと思うんですよ。

 ですから今、私が一番注目しているのは日本の言論界です。何がきっかけであれ、ここまで総領事が暴言をしてしまうと、中国側は引っ込みがつかなくなる。

 日本側は「冷静に」としか言いようがない。向こうが過激になるのを抑える一つは、「そもそも首相の答弁が批判の範囲に当たらない」と冷静に論じることを日本の言論界の主流にすることです。日本の言論人が、中国が強硬な態度を取るたびに「撤回すべきだ」と言ってしまえば、向こうとしては叩(たた)いて強く出れば、日本がひっくり返る可能性が1割でも5%でもあると思えば、やり続けますよ。政府はもうこれ以上踏み込めないし、撤回もできません。ここまで来たのを撤回すると、逆に答弁内容を後退させたことになります。これは、むしろ危険だと思います。

 テレビ等、あるいはネットでも高市さんが従来の答弁と全く次元が違うことを言ったかのようなコメントが多くて、ここを中国側が結構誤解をしている気がするんですよ。本当は習近平さん自身が誤解をしているのではないかという気がする。

 田村 結局、今まで問題なのは、日本のマスコミや言論界が、日本がこういうふうに悪いよと、例えば慰安婦問題でも日本人の方から問題があったと言うものだから、韓国でも「日本人がそう言っているのだから韓国としてもやはり大きな問題として捉えざるを得ない」となることが、従来、しばしばあった。

 問題は、日本人が国益を損なう問題にしてしまっていること。それを声高に言うから、外国だってそれを問題にせざるを得ない構図がこれまであったわけですよ。確かにメディアは政権批判しなければいけないのは分かるけど、ただ、対外交的な問題に対して少し工夫しないと。国益をもう少し考えた上で発言していただきたい。おかしなことを言うと、それはおかしいとネットでもいろいろ話題になる。そんな時代に来ています。

 主体的な防衛で日米同盟強化へ

 ――12月に米国が発表した国家安全保障戦略では、日本や同盟国に防衛費増額など求めていますが、どのように捉えますか。

 田村 トランプ政権になって、アメリカ・ファーストということで関税政策だとか、国内の経済・雇用対策を重視するようになった。ロシアによるウクライナ軍事侵攻の問題でも欧州の問題ではないかと。あるいはイスラエルとパレスチナ自治区ガザについても、距離を置くようになってきている。従って、中国との関係は極めて大事になった。ただ、米国にとって中国は、今までのソ連とか日本に比べて手強(てごわ)いわけですよ。

 相互関税を持ち出そうとしたら、レアアースを「もう売らないぞ」とか言われてしまうと、かえって困ってしまう。そういう意味では、中国との関係に苦慮している。

 高市首相とトランプ大統領の関係は極めていいんですよ。非常に波長が合って、日米首脳会談でも日米同盟は今や世界で最も偉大な同盟であり、日米関係は今まで以上に強固なものになっていくと述べている。中国の問題はありますけれども、そのためにも米国が日本との協力関係を重視していくことはさらに重要だね、ということになってきている。

 そういう意味では、安全保障では日米同盟の抑止力・対処力を一層強化していくということで一致している。高市首相から防衛力の抜本的強化と、自分の方から防衛費の増額に引き続き取り組んでいく決意を表明するわけです。今までだと米国から言われるから分かりましたということだったのが、首相の方から言ったというのは、これはある意味、画期的なこと。

 トランプ大統領からは、日本が防衛力を大幅に強化していることは承知していますよとの旨の言及があって、今後、日本が主体的に防衛力強化をしていく必要があるわけで、そういう意味で言うと憲法の問題も非常に極めて重要になるわけです。自衛隊を諸外国と同じような軍隊という形にする問題が出てくると思います。

 アジアの中心に戻る意思あるか

 小川 アメリカ・ファーストというのは、一般論としては当然でしょう。米国人にとって見合わないような世界の警察官の役割を、別に給料もらってないのに長年やってきたということに対する理不尽さを持っているわけです。その間に中間層が消えて国民が貧乏になった。だからと言って米国が世界秩序に対して責任を取らないのかというと、そんなことはないというのがトランプの今のやり方だと思います。

 バイデン氏、あるいは民主党ですと、旧来の米国とEU(欧州連合)のいわゆる白人連合でしょう。それに対してトランプ氏は多極的な外交、個別的なアプローチをする。批判する人もいるけれど、実際に世界秩序や世界各国の実力が変わり過ぎて、さすがにG7(先進7カ国)で世界を牛耳れない。ロシア1国に対して米国とNATO(北大西洋条約機構)でも勝てないのですから。

 従ってトランプ政権が、アジアで日本はちょっと自分のことを頑張れよと言うのは当たり前だと思います。ASEAN(東南アジア諸国連合)に対しても同じでしょう。そういう意味で言うと、台湾の問題もアメリカ・ファーストだから放置するのではなくて、アジアに強めの球を投げつつ、中国による台湾奪取は阻止すると米国の立場を初めて明記したわけです。

 米国がいつまでも全部主導する、お金を出す、軍事力を出すというのではなく、アジアが力による現状変更をどう防ぐかの主体になる。先日も米国の共和党系から、私にそうしたメッセージが来ています。アジアの中心が北京に移っていると言われました。東京に戻すべきだと思うが、日本国民に東京に中心を戻す意思はあるのかという話をされました。私は、それがあるから高市政権が成立していると思っていますと答えた。

 憲法9条でも同じです。自民単独ではできなかったようなことですが、自衛隊の階級の呼称を軍隊の呼称に戻そうという動きがあります。あれ心理的にものすごく大きいものですよ。 

 ――大将、中将とか。

 小川 そうです。国民の意識が変わりますよ。自衛隊の皆さんの誇りがまた変わります。どなたか、亡くなった親が自衛官だったからこれは真っ先に墓前に報告したっていう方がいました。

 これは維新と組まないで自民単独だったら言い出せなかったわけですよ。9条の問題は事実上、もう問題ではなくなっているというところまで国民意識が変わるんじゃないか。事実上軍隊という位置付けになった後に9条を改正します、いや現実にもうなっていることをやりましょうっていう話です。

 私は安倍政権時代と違い、9条問題自体が国民の心から足かせとしては消えかけているんじゃないかと思います。テレビはそれを何とか問題視しようとしても若い世代がついてこない。

 田村 維新と連立して公明が離脱したことが大きいんですよ。連立政権では政策合意が極めて大事なのです。だから、これから高市政権がどうなっていくかは、この合意書をきちっと読み解くと全部これに書いてある。

 例えば、外交安保の問題なんかで言えば、非核三原則を見直すとか、自衛官の採用が非常に深刻ですから、そういうのも絡めて自衛隊の待遇改善だとか、現在の自衛隊の階級、服制および職種など国際標準化を2026年度中に実行すると、ここに書いてあるんです。

 極めて重要な憲法の話で言えば、日本維新の会の提言に書いてあるのですが、21世紀の国防構想と憲法改正を踏まえて、憲法9条改正に関する両党の条文起草協議会の設置をする。それと緊急事態条項(国会機能維持及び緊急政令)について憲法改正を実現すべく条文起草協議会を設置し、26年度中に条文案の国会提出を目指す。可及的速やかに衆参両院の憲法審査会で条文起草委員会を常設する。それから憲法改正発議のため、政府が必要な制度(例:国民投票広報協議会の組織及び所掌事務等に係る組織法並びにCM規制及びネット規制等に係る作用法等)について制度設計を行う、というような感じできているわけです。

 小川 公明党には考えられないでしょう。さらっと両党合意しましたが、内容は党の総務会なんて通してないわけでしょう? すごい内容です。それで、この通りに動いている。これだけ政権支持率が高く、国民が歓迎していたら文句言えないでしょう。

 田村 維新もよく勉強しています。昨年10月20日に交わした合意文書、最初はガソリン税の暫定税率廃止法案を臨時国会中に成立させるというのがいの一番に来ているけど、これが実現しているんです。そこがすごい。電気ガス料金補助をはじめとし、物価対策を早急に取りまとめ、臨時国会において補正予算で成立させるとあるが、実際にできたわけです。維新と連立したことによって、具体性とスピードが大幅に向上し、高市政権は評価が高まっている。

 小川 歴史というものの面白さだと思います。

新春対談 日本の保守再生はなるか(下) 皇室・家族政策 政権合意に期待

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