トップオピニオンインタビュー新春対談 日本の保守再生はなるか(上)

新春対談 日本の保守再生はなるか(上)

若者の意識変えた安倍長期政権

田村「画期的な高市自維連立政権」
小川「信頼得た保守イデオロギー」

出席者
 政治評論家 田村重信氏
 一般社団法人日本平和学研究所理事長・文藝評論家 小川榮太郎氏
 司会=窪田伸雄(本紙編集局長)

田村重信
 たむら・しげのぶ 1953年新潟県生まれ。拓殖大学政経学部卒。宏池会(大平正芳事務所)を経て、自民党本部に勤務。政務調査会で調査役・審議役として外交・国防・憲法・安全保障等を担当。退職後、政治評論家。著書に『秘録・自民党政務調査会 16人の総理に仕えた男の真実の告白』(講談社)『気配りが9割』(飛鳥新社)『平成防衛史 令和に委ねる憲法改正』(内外出版)『日本のブランドを作った男 渋沢栄一「論語と算盤」恕(じょ)』(三冬社)『高市早苗首相が変える!強く豊かな日本&世界の2026』(監修、コスミック出版)など多数。

 ――戦後 80年の節目だった昨年、大きな政治の変化がありました。自民党は参院選に大敗し、総裁選を経て公明党との連立から日本維新の会との連立になり、高市早苗首相の政権が発足しました。

 田村 なぜ変わったかというと、自民党以外の保守の政党が新たにでき、維新、日本保守党、参政党などが出てくることによって、保守層が自民以外の政党に投票する選択肢が増えたということです。

 それとSNSの影響が非常に大きい。自ら意見をネットで発信できるX(旧ツイッター)やユーチューブなどがあり、その結果、石破茂政権が衆院選と参院選で敗北した。石破さんが退陣表明して総裁選になり、立候補者が高市早苗、小泉進次郎、林芳正、小林鷹之、茂木敏充の各氏5人でした。どう考えても、僕は小泉氏が有利だろうと思っていた。

 なぜかと言うと、前回(2024年)総裁選に出ていた加藤勝信、河野太郎両氏が小泉氏を支持するわけですから、自民党に長くいた人間から見ると、これは非常に分かりやすい選挙です。それが外れたわけです。結果は高市早苗総裁と。党員投票が大きく影響した。

 しかし、公明は非常に危惧して連立を離脱した。それで維新が連立政権に入ったわけですけど、維新は事前に小泉政権になるだろうということで連立を模索していた。藤田文武共同代表には政治は政策を実現しないと意味がない、与党でないとダメなんだという気持ちがあったし、僕も彼にはそれを言いました。結果的には維新と高市さんの波長と政策が非常に合った。

 それと失われた30年というのは、もう先送りできないということで、高市政権は時代の要請に合っている。だから国民の支持も高い、期待も大きい。これは高市首相への関心の高さなのですが、僕が監修したムック本『高市早苗首相が変える!強く豊かな日本&世界の2026』が昨年12月27日にコスミック出版から出ました。いかに高市人気が高いかの証左だと思います。

「戦後レジーム」語らずに脱却へ

 小川 私が批評家あるいは歴史家として見ますと、これは非常に大きな、長期的なトレンドの転換です。つまり安倍晋三元首相が25年以上前から主張した「戦後レジームからの脱却」ですね。

 第1次政権でそれを標榜(ひょうぼう)して、安倍さんは叩(たた)きのめされて病気で辞める。これは、欧米でマルクス主義が終わった後のリベラルという名の左翼と保守の戦い、日本の場合は戦後のいわゆる反日、憲法9条平和主義みたいなものも絡んだイデオロギー戦で、安倍さんはまず負けるわけです。

 そして自民党の首相が福田康夫さん、麻生太郎さんになり、政権交代して民主党政権となる。これでリベラルの側に一度政権を渡してしまう。ところが非常に酷(ひど)かった。イデオロギー以前に統治能力があまりにも低かったため、3年で行き詰まった。それで、政権が安倍晋三に戻った。

 安倍さんは保守主義の、ここ数十年で最大のイデオローグですが、第1次と違って、第2次政権は、そのカラーはあまり見せ過ぎず、長期政権そのものを目指します。というのは、やはりイデオロギーチェンジをしたかったんです。戦後レジームを終わらせたかった。そのためには政権が一過性になってしまうと終わらない。

 だから今度は長期政権をということで、経済を一丁目一番地とした。第2次政権では最後まで実は一度も「戦後レジームからの脱却」という言葉を言わなかった。言うと政権が潰(つぶ)されるから、言わずにレジームチェンジをしたのです。

 そしてその路線は基本的に菅義偉政権、岸田文雄政権に引き継がれる。ところがその後に来た石破さんは、反安倍の怨念がありました。そうすると安倍さんの反対をやりたがる空気感が国民に伝わるわけです。その中で自民党が衆院選、参院選と2度敗れたということは、もう自民党は保守政党としてイデオロギーをはっきり出さない限り勝てないというのが、石破政権時代に証明されたと思います。

 そのことを象徴するのは保守系の参政党。それから例えば国民民主党も反安倍で売った山尾志桜里さんを候補にしたら突然ガタッと支持率が落ちる。つまり、経済政策が重要だとみんな思っているのだけど、実は国民は今、イデオロギー的な判断をします。普通の何千万人の国民が、保守イデオロギーを選択する時代に明らかになった。

 それが先ほど田村先生が自民党総裁選について言った、党内事情では小泉さんが優勢であったけれども、結局、高市さんがイデオロギーを出す人だったので、勝ったと思いますね。これで公明が突然連立を離脱して、そして維新が入った。藤田さんの時代の維新と高市さんはものすごくケミストリーが合う。

 こういう形で、日本で保守のイデオロギーが国民のはっきりとした審判、信頼を得た。安倍さんからの20年にわたる戦いの一つの帰結が高市・維新連合政権だというのが私の見通しです。

 ――一方で、「オールドメディア」と言われるようになったテレビ、朝日・毎日など大手紙の報道や論調を見ると、まだ違う印象もありますが、どのようにお考えですか?

 田村 だから、そういうメディアの影響力が低下したということです。SNS、Xとかフェイスブック、ユーチューブの影響力は非常に増しました。僕自身もユーチューブからいろんなものを見る時間の方が増えていますし、若い人たちもそちらを見てますから。だから世論調査でも高市さんが80%近い支持率がある中で、年齢別に分析すると、若い人の支持が圧倒的に高い。それは、まさにSNSの影響だと思います。

 小川 安保法制の時(2015年)、戦争法案とか赤紙が来ると言われて当時の世論調査で内閣支持率が急落したんですよ。ところが今、高市首相が台湾有事発言をしたら、支持率が逆に70%に上がってしまう。

 田村 中国は、発言を撤回しろとやっているけど、支持率や国民世論を考えると撤回できないですよね。高市発言を支持する世論の方が多いという結果になっていますから。

 小川 街でも高市さんの話題は、例えば飲み屋に行くと隣で語っている人が非常に多い。特に女性が喜んでいる。

はっきりものを言う女性パワー

 田村 高市さんは初めての女性の総理大臣でしょ。すごく画期的ですし、日本全体の女性のパワーが大きくなっている。僕なんか家に帰るともうカミさんの言う通りにしか… (笑い) 。

 そういう意味でも、女性がトップに立ったのは日本にとっても、とてもいいことだし話題になる。それからはっきりものを言うんですよね、ハキハキね。そこがいいんですよ。

 ――安保法制が争点だった当時、小川先生がご指摘のように内閣支持率がガクッと下がり、SEALDs(シールズ)という若者の反対運動がマスコミで話題になりました。当時と今を比べ、10年で保守イデオロギーを若者が支持するまで変わったのでしょうか。

 小川 シールズはあの時代において全然主流じゃないです。単に高齢になった左翼層が使っただけでしょう。私は逆に、安倍政権時代にかなり若い人の意識は変わったと思う。若者の支持率が高いのは安倍政権の特徴でもあったのです。

 安倍さんご本人曰く、同じ60代の支持率が一番低い、これは少々残念だと。ただそれより下の50代、40代で高くなり、一番高いのは10代なのです。若い子たちはあの頃から意識が明らかに変わってきた。そして当時10代だった子が今20代、20代は30代なので、高市さんの場合は安倍さんよりも、より分厚く支持率が取れる保守であるということです。

 田村先生もおっしゃいましたけど、テレビが本当に影響力を失墜するのがこの1年か2年です。例えば兵庫県の知事選挙。以前だったらあそこまで叩かれたら、斎藤元彦知事は泡沫(ほうまつ)候補になるはずなのに、結局勝っちゃう。良いか悪いかはいろいろな面があるでしょうが、もうネットで自分で調べる。ネットの洗脳性はテレビより低い。かなりまともなんじゃないでしょうか。

 田村 ネットは自分で情報を取りに行かないといけないですからね。そこはやっぱり違う。今の時代は情報がいろいろあって若い人は真実の情報を自分で捉えるようになっていますから、その変化が大きいと思うんですよ。

 だから、安保法制の時はテレビで言ったことを鵜呑(うの)みにして反対だ、反対だとなったけど、今の時代になるといろんな情報を取りに行って自分自身で学ぶわけです。若い人は賢明ですよ。それで判断するわけですから。SNSによって若い人たちの学ぶ姿勢が大きく変わったと思います。情報は自分で取りに行くものだというふうに変わった。それが大きいと思います。

 ――高市首相の台湾有事発言ですが、「存立危機事態になり得る」と発言したところ、中国が撤回を求めキャンペーンを張り、自衛隊機に対する中国機による攻撃一歩手前のレーダー照射まで起きました。

 田村 中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射を防衛省が発表するというのは異例のことで、初めてのことです。これは非常に危険なことで、偶発的な衝突に直結しかねない事案だ。

 中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射事案が新たな波紋を呼んでいるため、日本政府内には高市首相による台湾問題発言への揺さぶりとの見方があって、中国による危険行為を国際社会にアピールする機会にしたいとの声もある。中国側の海軍報道官は自分たちの訓練中に自衛隊機が接近して妨害したから照射したと言っているわけですが、公海上だから自衛隊機が中国航空機の安全な航行を深刻に妨害したという指摘は当たりません。

 今回の背景としては、習近平政権が今、日本に対してきついことを言っても、トランプ米政権は中国に対して強く出てこないという思いがあるでしょう。米国もいろいろ困っていて、中国との経済的な関係・協力が非常に重要ですし、「G2」という話もしていたりするからではないのか。

 中国にとっては国内経済悪化による国民の不満が習政権に向かうのを回避する必要があります。日本としても、高市政権の支持率が非常に高いため発言をある意味で撤回できない。両国ともそれぞれ国内問題が絡んで複雑になっている、ということですね。日中関係は経済、人的交流、貿易、インバウンドなどいろいろありますから、双方が冷静に対処し、総合的に関係を改善させ発展させていくことが必要じゃないかと思います。

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