拉致→棄教→訴訟がシステム化? 家庭連合解散命令と強い因果関係

世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)を巡る一連の動きや報道に疑問を抱き、その真相に迫ったノンフィクション作家、福田ますみさんが、月刊Hanadaに不定期連載した記事をまとめ加筆した『国家の生贄』(飛鳥新社)が上梓(じょうし)された。福田さんに執筆の意図、1200日に及ぶ取材について聞いた。(聞き手=特別編集委員・藤橋 進)
――本書執筆の狙いは。
私の主張したいのは二つの柱、拉致監禁と全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の正体。家庭連合の信者を拉致監禁し強制棄教(ディプログラミング)が行われていることは米本和広氏の『我らの不快な隣人』を少し読んで知っていたが、被害者が4300人以上とは驚いた。この本では「酸鼻を極める」と書いたが、取材をして、皆さんが大変な目に遭い、逃れる時に重傷を負ったり、自殺者、レイプされた女性もいることを知りショックを受けた。
12年5カ月も監禁された後藤徹さんに取材した時、後藤さんから、それがシステムになっているということを聞いてさらにびっくりした。拉致監禁し強制棄教させられた信者が、今度は「被害者」となって家庭連合を訴える。それがサイクルになっている。これは書かないといけないと思った。
そしてマスコミが全く報じない全国弁連の正体。彼らが、家庭連合をなぜこれまで激しく敵視するのか疑問を抱きながら、大宅壮一文庫で資料を探したところ、「『被害者救済』に名を借りた政治活動」「“霊感商法潰し”の目的は“スパイ防止法潰し”」という月刊誌『ゼンボウ』1987年5月号と7月号の記事に出合った。
後藤さんに、霊感商法・悪徳商法の被害者を救済するという全国弁連の本当の狙いはスパイ防止法潰(つぶ)しだということを知っているかと質問したところ、知っているという。えっと驚くと共に、信者と一般の私たちとの絶望的な情報の乖離(かいり)を感じた。
――全国弁連の事務局長となる山口広弁護士は、1982年、ソ連KGB(国家保安委員会)のスパイ、レフチェンコ事件が起きた時、社会党機関紙「社会新報」が「レフチェンコ証言は勝共連合と米CIAの謀略である」と報じたことに対し国際勝共連合が社会党を名誉棄損で訴え勝訴した裁判で、社会党の代理人の一人を務めている。
1987年2月に全国弁連の前身である霊感商法被害救済担当弁護士連絡会(被害弁連)が結成されて間もない2月20日付の「社会新報」に山口氏は、「最終的には、反社会的活動を追及して宗教法人認可を取り消すよう文部省に要求していきたい」とコメントしている。
なんと被害弁連発足から1カ月も経(た)たないうちに、統一教会の宗教法人認可取り消しを要求すると言っている。これはどう考えても純粋な被害者救済活動ではなく、スパイ防止法制定を目指す勢力を潰そうとするイデオロギー色の濃い政治闘争だ。そういうことを一般の人たちは何も知らない。これもぜひ書きたかった。
――被害者として教会を追及している元信者の半数以上が違法な拉致監禁によって強制改宗させられた人たちだということも、ほとんど知られていない。
「文科省の言論封殺」の章で書いたが、拉致監禁と返金訴訟が少しのタイムラグを置いて連動しているということは、拉致被害者数と提訴者数の関係を示すグラフを見ると一目瞭然だ。拉致監禁を何とか撲滅していれば、あのような人たちは出なかった。文科省がヒアリングを行った「被害者」の半分以上も拉致監禁され脱会した人たちだ。だから結局、拉致監禁が、解散を命令した東京地裁の判決にすごく深い因果関係を持っているということだ。
――このグラフをFNN(フジテレビ系列のニュースネットワーク)がスクープとして報じた後、FNNの役員が文科省に呼び付けられ、記者が一時出入り禁止になったということだが。
FNNで報じた時は、きちんとグラフについて説明をしなかった。だから視聴者の方は、何のことだかよく分からなかったと思う。合田哲雄文化庁次長は「教会側の一方的主張など流すな」と言ったというが、通常のニュースで「拉致監禁」という4文字が出たのはこれが初めてだったのではないか。それが合田次長の逆鱗(げきりん)に触れたのだろう。
――文科省は本来、行政として信教の自由を担保する役割があるはずだ。
安倍晋三元首相の暗殺事件後の教団に対する動きで決定的だったのは、岸田文雄元首相の一連の発言だ。事件の前は文科省の宗務課は信教の自由を守る役所だから全国弁連の教団解散命令の要求に対してむしろストッパーの役目だった。
ところが、文科省の役人が「ルビコン川を渡る」と言ったように、岸田発言を境に、首相の意向に沿って家庭連合を解散させないといけないと、レールを作って突っ走ったのが文科省だった。






