
今年6月に発足した韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権が「内乱清算」と称して保守弾圧に乗り出し、三権の最後の砦である司法まで牛耳ろうと躍起だ。この事態に保守派は危機感を募らせているが、保守系最大野党「国民の力」の支持率は低迷が続いている。韓国保守に再起の道はあるのかを探った。初回は李氏と大統領選で一騎打ちを演じた元「国民の力」大統領候補、金文洙(キム・ムンス)氏の本紙単独インタビュー。(聞き手=ソウル上田勇実)
――李政権の専横とも言うべき保守派への圧力をどう見るか。
韓国政治では右翼と左翼の対立が繰り返されてきたが、深い背景を見るべきだ。韓国のすぐ北側には同民族の北朝鮮があり、文化的根っこが似ている中国とも近い。一方、日本とは不幸な過去の歴史の記憶があり、米国は心理的に近いが、東洋人とは見た目が違う。
韓国の未来はどこに向かうべきか。それは日本同様、米国と協力しなければならない。だが、そう考えない人たちは北朝鮮や中国に目を向ける。日本人は中国を共産主義国として危惧するが、韓国人はそこまで中国に敵対心を抱いてこなかった。北朝鮮や中国に親近感を抱き、主体思想や毛沢東主義を信奉する人が与党「共に民主党」の中にも多く、影響力が大きい。
――1980年代の左翼学生運動の理念をいまだに持っている人たちがいる。
ソ連崩壊後、別の世界が出現すると思ったら、中国共産党が浮上し、米国と覇権争いをするまでに至った。左翼は共産党の成果と考える。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が韓国と北朝鮮は「敵対国」で互いは「二つの国」なので南北統一を口にしなくなったのを、韓国の鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相が受け入れた。これは自由民主主義的基本秩序に立脚した平和的統一政策の推進を明記した韓国憲法に違反する。未来に対する一種の内乱なのに、大きく問題視されていない。
――左翼の専横を克服するには何が必要か。
この状況下、韓国保守派で経済的に余裕があり、国の将来を憂う人たちの中には「いつ韓国を去らなければならないか」と悩む人も少なくない。
韓国保守の核心は企業、軍隊、政党だ。私は雇用労働相時代に多くの財界人に会ったが、思想的に保守の価値には関心が薄く、金儲(もう)けで頭がいっぱいだった。そして時の大統領と対立すれば叩(たた)かれる。実際にサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長やSKの崔泰源(チェ・テウォン)会長、ロッテの辛東彬(シン・ドンビン)会長などが刑務所に入った。李大統領の前では深々と頭を下げざるを得ない。
軍隊も月給取りのようになってしまい、戦争遂行能力があるのかさえ疑わしい。国を守るというのは自分の命を捧(ささ)げる覚悟で守るということだが、そういう覚悟も訓練も経験もない。
「国民の力」は草の根活動が弱く、庶民に対する理解が薄い。庶民の立場を理解する活動、政策、理念が弱いのが課題だ。
国が滅びようが滅びまいが李大統領を60%の世論が支持する現状を克服するには、企業・軍隊・政党が本来の姿を取り戻すことが重要だ。
――教育にも問題があるという指摘が多い。
大きな問題だ。公務員も韓国がどういう国なのか正しく学ぶ場がない。学ぶことと言えば日本が悪かったということ。民族主義を植え付けられる。韓国保守の核心的人物は李承晩(イ・スンマン)、朴正熙(パク・チョンヒ)両元大統領なのに、2人とも独裁者だと言って評価しない。
――韓国保守が再起する上で、日本に期待することはあるか。
日本の安定が韓国保守にとって重要だ。日本が北朝鮮による拉致被害を糾弾し続けることも、北朝鮮の人権侵害を見て見ぬふりをする韓国左翼の過ちを浮き彫りにさせるという意味で大事だ。李大統領は尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領や「国民の力」の悪口は言うのに、金正恩氏や朝鮮労働党の悪口は言わない。不思議なことだ。
今後、韓国は変わっていかなければならないが、その速度と方向は中国共産党がどうなるかが決定的影響を及ぼすと思う。







