
――スパイ防止法のない日米同盟というのは本当の同盟になり得るのか。
前はなり得た。ということは、米国は日本を真の同盟とは思っていなかった。真の同盟とはどういうことかというと、「エシュロン」という米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドによる通信傍受ネットワークがある。例外的に日本と韓国では一部エリアを指定して傍受電波の解析を一緒にやっている。
だが、日本側が提出した情報のリワード(褒美)は、米国が日本に渡して都合のよい情報しか来ないと私は思っている。日本に不都合で米国にバッティングする内容は教えるはずがない。
日米はインテリジェンス(情報活動)において非対称だ。日本は目の無い鷹、耳の短いウサギ。米国から情報をもらって言うとおりにするしかない。それを同盟という対等関係にするためには、米国は最初抵抗するかもしれないが、日本としても米国が驚くほどの気概をもって、いい情報を集め、同盟の目的を果たすために情報レベルにおける共同成果を出すようにしないといけない。
日米同盟で重要なのは海上自衛隊だ。マハンの海洋戦略に基づき、米国が世界の覇権国家になるためには七つの海を支配しないといけない。そこへ中国の海軍が強くなってきたから、海上自衛隊の助けが必要になる。日米同盟の確かさを保障するのは海上自衛隊だ。トランプ大統領が高市首相と米海軍横須賀基地に行ったが、陸軍より海軍だ。米海軍と手を携えて中国海軍を封じ込めようとするのが海上自衛隊だ。
それと似たような機能をインテリジェンス面においてもやるべきだ。下作業として、既に防衛省の情報本部と通信所で7カ所の施設があり、日米は通信傍受という情報で共同作業をしている。実績のある部門に付け足しながら、やがてヒューミント(人的情報活動)、そういうものを積み上げていくべきだ。
――戦後、軍も対外情報機関もスパイ防止法も持たない国になり、作ろうとするとマスコミや野党が戦前に逆戻りと反対する。
原因は終戦当時のヤルタ・ポツダム体制だ。つまり米国とソ連が共通利益になることだ。米国にとってはソ連陣営に行かれても困る。ソ連にとっては米国に行かれても困る。そこで妥協できる点は、少なくとも日本が二度と米国やソ連(ロシア)の対抗勢力にならないこと。そういう面で、米国のCIA(中央情報局)も誰も日本がインテリジェンス面で強くなることを望んでいなかった。
しかし今日、このままでは日本は戦わずに中国に負けかねない、切実な世の中になってきたわけだ。日本はそれを米国に説明し、戦略的に活路を見つけ出さなければならない。米国は日本に防衛費をGDP(国内総生産)比2%にしろと言うのと同じように、米国と均一なレベルのインテリジェンスの枠組みに入れと言うべきだ。そのためにはスパイの能力とカウンターインテリジェンス能力、工作能力を持ち、米国と連携できるような体制を作らないといけない。
日本弁護士連合会(日弁連)や左翼野党、マスコミなどが反対するが、今は国自体が生きていけるかどうかの大事な時だ。
――スパイ防止法は制定されると思うか。
複雑な要因がある。高市首相がどれだけのリーダーシップで今のモメンタムを持ち続けることができるか、旧来の日弁連や左翼団体の反対運動とメディアがどう出るか。
希望としてはスパイ防止法を実現してほしい。インテリジェンスで世界の最低水準に位置するとしても、対称性のある国家として必要最小限の機能を手にすることができる。そのためには是非それを実現してもらいたい。
(スパイ防止法取材班)
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