

――左傾化した米国の大学の現状をどう見る。
大学の使命は、米国の歴史と物語を真実に基づいて伝え、良き市民となるように教えることだ。これが本来あるべき姿であり、過去数百年間、その役割を果たしてきた。
だが、今の大学はネオマルクス主義者に占拠され、前向きな米国の物語を否定的な物語として教えている。米国は奴隷制で人々を抑圧してきた邪悪な国だと。彼らの目標は米国の価値観を蝕(むしば)むことにある。
トランプ大統領が大学に求めているのは、本来の使命を果たせ、ということだ。トランプ氏は大学への補助金を停止して、「多様性・公平性・包括性(DEI)」の廃止を求めている。これに同意する大学もあれば反対する大学もある。攻撃権は明らかにトランプ政権側にあり、大学側は守勢に回っている。
――トランプ政権はなぜDEIを問題視するのか。
DEIはネオマルクス主義の一形態だ。「周縁化された集団」のためのクオータ(割当)制度である。
例えば、黒人が米人口の1割を占めるとしたら、医師、弁護士、技術者、パイロットなど、どの職業でも1割は黒人でなければならない。そうでなければ、差別が存在するというのだ。ばかげた理論である。あらゆる民族集団がどの職業でも完全に均等な比率になる国など世界に存在しない。
これは平等とは真逆だ。職は競い合うものであり、民族集団ごとに分けるものではない。
――トランプ政権の圧力を学問の自由の侵害と批判する声が強い。
それは違う。学問の自由とは、真実を追求するために、あらゆる議論や意見を認めることを意味する。だが、大学はこれを封じてきた。保守派は教授に採用されず、キャンパスでの講演も妨害される。今の大学に学問の自由は存在しない。
大学がやっているのは、ネオマルクス主義のプロパガンダを永続させることだ。トランプ氏が圧力をかけるのは、学問の自由を取り戻すためであって、学問の自由を侵害しているという批判は完全な誤りだ。
――トランプ氏は特にハーバード大学への圧力を強めている。
トランプ氏はアイビーリーグ(東部の名門私立8大学)全体を標的にしているが、ハーバード大学は特に米国で最も有名かつ最初の大学だからだろう。
ハーバード大学はもともと、牧師養成という宗教的な目的で設立された。だが、今はその理念からは程遠い存在になってしまった。彼らはネオマルクス主義者を養成している。
ハーバード大学はトランプ政権に抵抗し、DEIプロパガンダを維持しようとしているが、今後どうなるか注目だ。
――トランプ氏の取り組みは成功するか。
DEIのようなプログラムは、アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)などの形で、少なくとも1960年代から存在していた。過去の共和党政権はこれを良くないと思っていたが、何もしなかった。
この問題に対応したのはトランプ氏が初めてだ。連邦資金を悪用し、大学だけでなく社会全体を蝕む有害な取り組みは許さないと宣言した初めての大統領なのだ。
結果が分かるのは数年後だが、見通しは希望的だ。少なくとも何かが始まった。文化マルクス主義に対抗し、打ち破る初めての試みが始まったのだ。
ネオマルクス主義文化革命に対し、国民の間でも「狂っている」と反発が強まっている。トランプ氏が当選したことがその象徴だ。振り子は逆方向に振れ始めている。トランプ氏は文化革命に対抗する「反文化革命」を起こしているのだ。
ユダヤ人を「抑圧者」と断罪
――大学で強まる反ユダヤ主義の背景として、文化マルクス主義の影響が指摘される。
ネオマルクス主義者の間で反ユダヤ主義が蔓延(まんえん)しているが、これは興味深い現象だ。初期のフランクフルト学派は、主にユダヤ系だったからだ。彼らはユダヤ教を拒絶し、マルクス主義を自らの宗教としたのだ。
今日のネオマルクス主義者たちは、イスラエルを中東に設置された西洋植民地主義の橋頭堡(きょうとうほ)と捉え、ユダヤ人を植民地主義集団と見なしている。これが反シオニズムとなり、反ユダヤ主義となった。ユダヤ人入植やイスラエル建国に反対するだけでなく、米国や世界中のユダヤ人への攻撃を拡大させている。
ユダヤ人に対する憎悪はネオマルクス主義者の活動の一部となり、コロンビア大学やハーバード大学などで起きた反ユダヤ主義活動につながった。ユダヤ人学生が差別や攻撃を受け、授業への出席が妨げられていたにもかかわらず、大学は何の対応もしなかった。
結局、大学は反ユダヤ主義を助長していたのだ。トランプ政権が大学に圧力をかける主な理由は、反ユダヤ主義を止め、学生を保護させることにある。
――マルクス主義の本質は人々を「抑圧者」と「被抑圧者」に分けることだ。イスラエルを抑圧者、パレスチナを被抑圧者と捉えているのか。
その通りだ。植民地主義者とは抑圧者を意味する。ネオマルクス主義の視点では、イスラエルは西側、白人、男性、異性愛者の抑圧者グループに属し、パレスチナ人は黒人、急進的フェミニスト、ジェンダー思想家などと同じ被抑圧者グループに属すると見なしている。
大学キャンパスの反ユダヤ主義は、移民取り締まり反対運動へと波及している。反ユダヤ主義であれ、国境開放であれ、ジェンダー思想であれ、すべては左派の文化革命という一つの巨大な力から生まれている。その根源にはネオマルクス主義があるのだ。
(聞き手・早川俊行)
=終わり=
【連載】トランプVS米名門大学―「文化マルクス主義」との戦い(1)大学の左翼支配、国の脅威 改革訴えたカーク氏凶弾に
【連載】トランプVS米名門大学―「文化マルクス主義」との戦い(2)脱北者も驚く反米左翼教育
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(3)文化革命、ソ連以上の脅威
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(4)大成功したグラムシの戦略
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(5)暴力を許容する「消去文化」
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(6)まるで極左活動家の養成所
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(7)「多様性」の下、左派思想浸透
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い (8)「反ユダヤ」背後に左派思想
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(9)東部3校がDEIなど廃止
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(10)権威失墜するハーバード大
【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(11) 大学が過激思想の「培養器」 米ハドソン研究所上級研究員 ジョン・フォンテ氏に聞く(上)





