トップオピニオンインタビュー【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(11) 大学が過激思想の「培養器」 米ハドソン研究所上級研究員 ジョン・フォンテ氏に聞く(上)

【連載】トランプVS米名門大学「文化マルクス主義」との戦い(11) 大学が過激思想の「培養器」 米ハドソン研究所上級研究員 ジョン・フォンテ氏に聞く(上)

 John Fonte 米シカゴ大で博士号を取得。教育省やアメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)などを経て、現在、ハドソン研究所上級研究員・米共通文化センター長。著書にグローバリズムから国家主権を守る重要性を説いた『主権か服従か』がある。

米国の大学に「文化マルクス主義」が浸透した経緯や問題点、そしてその排除を目指すトランプ政権の取り組みについて、政治思想に詳しい米大手シンクタンク、ハドソン研究所のジョン・フォンテ上級研究員に聞いた。(聞き手・早川俊行)

 ――「文化マルクス主義」の潮流を生みだしたイタリアのアントニオ・グラムシとドイツの「フランクフルト学派」の思想が米国の大学に浸透した経緯は。

 グラムシは、西側先進諸国ではたとえマルクス主義者が政権の掌握に成功したとしても、それだけでは不十分だと主張した。思想の支配、つまり「文化ヘゲモニー」が必要だと。イタリアではカトリック教会からこれを奪わなければ、真の支配は実現しない、と考えた。

 グラムシは1930年代に死去するが、その思想は70年代に米国の大学で大きな影響力を持つようになった。彼の『獄中ノート』が英語に翻訳され、左翼教授陣に受け入れられていった。

 20年代にドイツのフランクフルトで誕生した「フランクフルト学派」も、基本的に同じことを主張していた。彼らはマルクス主義と当時人気があったフロイトの精神分析学を融合し、理論を構築した。これはグラムシの思想には見られない特徴だ。

 30年代にナチスが政権を掌握すると、彼らはドイツを離れることを余儀なくされた。その多くがニューヨークに渡り、米国に彼らの思想を根付かせた。

 ――グラムシとフランクフルト学派の思想は別々に入ってきたということか。

 重なる部分もあるが、別々だ。ただ、正確にいつ、どこに入ってきたかを特定するのは難しい。フランクフルト学派の思想家たちは30~40年代に米国に渡ってきた。グラムシの思想が翻訳され、ブームが起きたのは70年代だ。

 フランクフルト学派の方が先に入って来て、そこにグラムシの思想が加わったといえるだろう。いずれの思想も大学から始まったことは確かだ。

 ――これらの思想はどのような形で米国社会に影響を及ぼすようになったのか。

 「ネオマルクス主義文化革命」とでも呼ぶべきものが始まったのが60年代だ。黒人の公民権運動やベトナム戦争などの影響で、伝統的、標準的なものに対する文化的反乱が起こった。

 70~80年代は静かで、80年にレーガン大統領が当選し、保守の時代が続いた。だが、60年代に大学院生だった者たちが教授になり、大学キャンパスでは80年代後半から90年代初めに、ネオマルクス主義運動が再び台頭した。

 60年代後半から70年代に大学で非常に人気があったのがヘルベルト・マルクーゼだ。彼が提唱した最も有名な概念の一つが「抑圧的寛容」で、支配階級に言論の自由を許してはならない、許されるのは「周縁化された人々」だけだ、という考え方だ。周縁化された人々とは、黒人ら人種的少数派や刑務所の犯罪者、急進的フェミニストらを指し、現代ではトランスジェンダーも含まれる。

 それから50年が経過した今、マルクーゼの思想を直接実践する学生が保守派の講演を妨害するなどしている。特に2020年のジョージ・フロイド事件以降、ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切/BLM)など不寛容な運動が爆発的に広がった。ミートゥー運動やキャンセル・カルチャーもそうだ。その根源にはマルクーゼの思想がある。

 大学がこれらの思想の「培養器」となり、そこから政党、特に民主党、メディア、企業へと広がったのだ。

「移民」が国民変容の手段に

 ――従来のマルクス主義と文化マルクス主義の共通点は。

 マルクス主義は経済思想だと理解されており、それは正しい。それでも経済マルクス主義と文化マルクス主義には、共通の概念的枠組みがある。それは世界のすべてを「抑圧者」と「被抑圧者」の闘争で捉えることだ。

 経済マルクス主義では支配階級が労働者階級を抑圧していると捉え、文化マルクス主義では支配階級の白人、男性、異性愛者らが、非白人、非男性、非異性愛者らを抑圧していると捉える。ジェンダー思想やフェミニズム思想などがそうだ。

 つまり抑圧者と被抑圧者の闘争というマルクス主義の概念的枠組みを文化に応用したのが文化マルクス主義である。これは新たなマルクス主義であり、「ネオマルクス主義」と呼ぶのはそのためだ。

 ――ジェンダー思想や移民の流入など、現代社会に混乱をもたらしている問題の多くは、文化マルクス主義に由来するといっていいか。

 全くその通りだ。グラムシは『獄中ノート』で「周縁化された集団には、経済的に抑圧された人々だけでなく、女性、人種的少数派、そして多くの犯罪者も含まれる」と述べており、性的少数者も多数派に抑圧される「被抑圧者」と位置付けられる。つまり異性愛者でない者はすべて、何らかのジェンダー・マイノリティーと見なされる。ここからジェンダー思想が生まれたのだ。

 移民を大量に受け入れる「国境開放」は、国民を入れ換えるための手段だ。何百万人もの移民を受け入れれば、既存の国民を投票で圧倒できる。つまり「新たな国民」を創りだそうとしているのだ。

 米国が2千万~3千万人の移民を受け入れ、市民権を与えたら、人口構成が変わる。日本も1千万人の移民を受け入れたら、日本国民は新たな国民へと変容する。これこそがネオマルクス主義者たちが目指していることだ。

 ジェンダー思想や国境開放など、すべてがネオマルクス主義の枠組みの一部なのだ。

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