
石破茂首相(自民党総裁)が退陣表明し、10月4日の総裁選に向けて動きだしている。政治評論家の髙橋利行氏に石破氏の評価、選挙敗北の責任論、総裁選や政界再編の見通しについて聞いた。(聞き手・豊田 剛、亀井玲那)
――石破茂首相の評価は。
メニューは見せられたが、料理が出ないうちに倒産、閉店された気分だ。
自民党の喫緊の課題は、世襲問題、選挙制度改革、政治とカネの問題だ。「党内野党」の石破氏なら党を改革する覚悟で臨んでくれると期待されていた。
特に日米関税交渉について石破氏は「国難」と表現し、米国に「なめられてたまるか」と発言した。同盟国に対する発言としてはいかがなものか。
――自民党がここまで凋落(ちょうらく)した根本的な原因はどこにあるか。
自民党は1955年、日本民主党と自由党が合同して成立した。当時、共産主義による赤化に対抗するために2党が大同団結した。だから、結党当初から右から左まで幅広い連立政権といえる。
3年前に自民党右派を代表する安倍晋三元首相が亡くなり、自民は片肺飛行になった。石破氏は、「目の上のたんこぶ」がいなくなってむしろ安倍派は御しやすくなったと思ったのではないか。石破氏は、自民を左に寄せようとしてバランスを崩してしまった。
安倍晋三亡き安倍派はもはや「安倍派」ではない。だから右の部分は自身で埋め合わせる、あるいは、自分が信用する人を起用すれば、国民の自民党に対する信頼は続いたのではないか。
民主主義陣営かどうかを問わず、世界はどの国も右に旋回している。石破氏は、安倍氏の代わりを務めるべきだった。
宏池会に代表され保守本流を名乗る「旧主流派」と岸信介元首相の流れを汲む「新主流派」が団結し、融通無碍(むげ)の政党に戻らなければならない。
――衆参両院で与党過半数割れを起こした責任論をどう考えるか。
冷戦構造のような明確な対立軸・選択肢がない中で、どの政党も大差なく同質化している。だからこそ、過半数を獲得するのは難しくなってきているが、誰が首相になろうと、どの政党が政権を取ろうと、さほど変わりはなくなっている。
フランスは今年に入って首相が4人代わった。政治が成熟してくればそうなる。民主主義において新しい方法は今のところはまだ見つかっていないが、選挙に負けたら連立を組み替えるか首相を代えるかのどちらかだ。
責任を取る判断基準は選挙に負けるということ。それにもかかわらず、辞任をだらだら引き延ばした結果、傷が深くなった。
石破氏はスタートから間違えた。総裁選ではすぐに解散しないと言ったが、予算委員会を開かずに解散させた。以来、石破氏は国民から信用されなくなった。国民の信用なくして前に進まない。
1975年から76年にかけて「三木降ろし」が起こった。首相の三木武夫は閣内から反対に遭い、解散を実現できず、任期満了した。総選挙で自民は結党以来、初めて過半数割れを喫し、その責任を取って三木首相は潔く退陣した。
他方、石破氏は衆院選と参院選で大負けしたのに首相の座に居座った。どの組織でもトップリーダーがきちんと責任を取るべきだ。石破氏が降りない、あるいは、降ろさない大義名分などなかった。総裁選で4回負けた石破氏が首相になれたのは「棚ぼた」なのだから「総理になったら、これはやる」という1点に絞ればよかった。それができなかったのが、そもそも間違いだ。
――総裁選が10月4日に行われる。自民の今後をどう見るか。
自民に右の「棟梁(とうりょう)」がいなくなった。次の総裁が右の部分をどう埋めるかが問われる。小泉氏であれば、右の部分を自ら担えばいい。高市氏の場合は逆に、中道左派勢力を担わないといけない。それができなければ、片肺飛行のままで、大所帯のデパートをまとめられない。
――今後の政局をどう占うか。
政党が均質化してしまった現在、どの政党がどうくっついても不思議ではない。小さな政策の違いで政党がばらばらなのはもったいない。これでは中国、ロシア、北朝鮮につけ込まれる隙を与えてしまう。小異を捨てて大同に就く、第2の保守合同・政界再編の時に来ている。






