トップオピニオンインタビュー患者の人権侵害する精神医療 違法拘束、わいせつ事件絶えず CCHR日本支部・米田倫康さんに聞く

患者の人権侵害する精神医療 違法拘束、わいせつ事件絶えず CCHR日本支部・米田倫康さんに聞く

 よねだ・のりやす 1978年、兵庫県生まれ。東京大学工学部卒。2000年から精神医学による人権侵害を調査・摘発し、メンタルヘルスの分野を改革する「市民の人権擁護の会」に参加。14年から日本支部代表世話役。

精神医療の現場で、患者への虐待やわいせつ犯罪が後を絶たない。精神医療による人権侵害の監視活動を行う「市民の人権擁護の会(CCHR)日本支部」代表世話役の米田倫康さんに、現在の精神医療の問題点などについて聞いた。(聞き手=森田清策)

――今年4月から、精神科病院での虐待が通報義務の対象となった。それまで義務化されていなかったことが不思議だが、背景には何があったのか。

障害者虐待防止法は議員によって発議され、2011年に成立した法律だが、議論を経る中で、最終的には病院と学校内での虐待が通報義務の対象から外れるという形になった。精神科病院の業界団体の圧力があったことを議員や役人から聞いている。

――今年2月、青森県八戸市の病院で院内の殺人事件を隠蔽(いんぺい)しようとしたとして元院長らが逮捕された。精神科病院の懲罰的拘束から逃れることが動機となった、と加害者が公判で語った。一方、被害者も違法拘束されていたため逃げることができなかったとされている。日本の精神科病院における違法拘束の実態は。

われわれは内部告発も受けるが、ひどいところは常態化している。ただし、それは行政による通常の実地指導では発覚しない。なぜならば外形上記録等が整っているのであればそれ以上追及できないから。通常の実地指導は事前通告の後に実施するためいくらでも隠蔽が可能。神出病院(2020年、神戸市)や滝山病院(2023年、八王子市)での虐待発覚を契機に、虐待の疑いがある場合は無通告の実地指導を積極的に実施するよう厚生労働省から自治体に通知が出ており、実際に東京都等は無通告の立ち入りもするようになったが、それでもまだまだ不十分。

――精神科病院からの退院理由で「死亡」が多い。

精神医療関係者は患者の高齢化が原因だと強調するが、必ずしも長期入院患者が自然死しているだけではない。統計を見る限り、入院開始から短期間で死亡している件数も多い。治療に使われる向精神薬の影響も考えられる。例えば若い入院患者でも窒息死している。薬の副作用で嚥下(えんげ)障害を起こしやすいからだ。

身体拘束によって血栓ができ、肺塞栓症等で死亡する例もある。ひどい褥瘡(じょくそう)を起こしている患者や、がんなど精神科以外の病気を併発している入院患者に対し、まともなケアをできずに死亡させているというケースもある。

――わいせつ犯罪で逮捕される精神科医が後を絶たない。人の心を癒やす使命がある精神科医によるわいせつ事件が発生するのは、医師個人の倫理観の欠如の問題だけなのか。制度的あるいは法的不備があるのではないか。

家族にも話せない内心や過去の体験を打ち明けるという精神科の特性上、患者が治療者に対して恋愛的な感情を抱きやすくなるのは知られている。また、治療者と患者の間には圧倒的な力関係の差がある。特に精神科医には患者の意に反した強制入院などを指示する権限すらある。

精神科・心理ケアに携わる治療者にとって、そのような状況に付け込む性的関係は性暴力・性的搾取に他ならない。最低限の職業倫理が自主的に徹底されるべきであるが、倫理違反は直ちに犯罪となるわけではない。2023年の刑法改正により、ようやく不同意わいせつや不同意性交等の罪に問えるようになったが、それでも事件は絶えない。

生物医学的治療に欠陥 WHO指摘も日本は無視

――さまざまな犯罪や人権侵害が起きるのは、人の心への向き合い方で、現在の精神医学が欠陥を抱えているからではないか。

その元凶とも言えるのが現代精神医学の中心である生物医学的モデル。精神病は脳の異常などの生物学的原因によって引き起こされるという前提があるが、それはまだ証明されていない仮説に過ぎない。しかし、それが患者の権利や責任、尊厳を奪っても良いという根拠とされ、強制治療が正当化されてきた。

この生物医学的モデルに基づいた精神科治療が効果をもたらさないどころか、むしろ有害であることが分かってきたため、WHO(世界保健機関)は完全に方向性を変えた。国連とWHOが2023年10月9日にメンタルヘルスに関する画期的なガイドラインを発表したが、そこでは生物医学的モデルに基づいた治療の根本的な欠陥が、これでもかと指摘されている。一方で日本の精神医学業界や政府はこのガイドラインの存在や意義を徹底的に無視している。

――CCHRは、精神科医による犯罪や人権侵害をなくすために、どんな提言を行っているか。

日本国憲法や、日本が批准している各条約に照らし合わせたら、日本の精神医療現場で行われている治療やケアは完全に反している。患者の人権を不当に制限している現行法自体が違憲で条約違反と言える。精神科医や精神科病院管理者に強大な権限を与えている精神保健福祉法は1950年に成立した古い法律(当時は精神衛生法)。これは、すでに違憲とされている旧優生保護法(1948年成立)やらい予防法(1953年成立)と同じ時代の同じ価値観によって作られた法律だ。

精神保健指定医という国家資格を持った精神科医が強制入院の判断をするため、間違った入院は起こらないという前提で法整備され、運用されてきた。このため、われわれは最初にその前提が誤りであることを証明する必要があった。

つい先日、何ら精神障害を有しない男性を精神科病院が強制入院させたのは違法であったと認める画期的な判決が確定した。これを基に法の不備や憲法や条約からの乖離(かいり)を指摘し、法改正を求めて行く。

 CCHR 市民の人権擁護の会。精神医療における人権侵害について調査・摘発し、メンタルヘルスの分野をクリーンにするため、1969年に精神科医のトーマス・サズ博士とサイエントロジー教会によって設立された。92年の日本支部設立以来、日本でも活動を続ける。

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