
日本を貶(おとし)める歴史書『ジャパンズ・ホロコースト』(ブライアン・マーク・リッグ著/未邦訳)が米国で出版されたことに対し、客観的史実をもって反論する『反日レイシズムの狂気』(ハート出版)が今年4月、出版された。戦後80年の節目に合わせ、著者の茂木弘道氏に同書出版の経緯や正しい史実を発信する取り組みについて聞いた。(聞き手・竹澤安李紗)
――『ジャパンズ・ホロコースト』の主旨は。
2024年3月に出版されたこの本の副題は、「第二次世界大戦中の大日本帝国による大量殺戮とレイプの歴史」だ。歴史学者のリッグは、「日本は1927年から45年まで、18年間にわたって『劣等民族』を絶滅させようと、少なくとも3千万人の恐ろしい大量虐殺をした」として、ナチスドイツの1170万人を上回るホロコースト(大量虐殺)を日本は行ったと、とんでもない内容を主張する。
3千万人の内訳は中国で2千万人、インドネシアで400万人、ベトナムで200万人、ベンガル(インド東部)飢饉(ききん)で150万人、フィリピンで100万人などと書かれている。しかし、これらの数字は全てフェイクであり、私の著書で一つ一つに対して反論の証拠を示した。
リッグは日本軍が3千万人を虐殺した動機として「(日本人は)自分たちが神々の直系の子孫であり、神々の一人に支配されているという独我論」を持っていたと記しているが、その根拠となる資料を明示していない。
反対に、日本が当時、人種差別撤廃に尽力していたという証拠がある。1919年のパリ講和会議で、世界で初めて「人種差別撤廃提案」をした。43年の大東亜会議で採択された共同宣言の第5項にも「人種差別を撤廃」と明記されている。史実から、リッグの持つ日本人像は虚説だと分かる。
リッグは広島と長崎の原爆投下も正当化する。「原爆(投下)がなければ、45年11月の日本侵攻はおそらく成功し、何百万人もの犠牲者を出していただろう」として、約21万人の原爆犠牲者を「3千万人に比べたら大したことない」と持論を展開する。
――日本人にとって信じ難いことばかり書かれている。
単にうそを言う学者だと片付けられない理由がある。著者のリッグは一流の英ケンブリッジ大学で博士号を取得し、米国の軍事大学や陸軍士官学校で歴史を教えた経験がある。
その上、400㌻を超えるリッグの本には1564個もの注釈があり、文献事実に基づいているかのような印象を与える。
引用元の一次資料から間違っているのがほとんどだが、リッグの主張を真実だと捉える人も出るだろう。この本に対して日本政府は「個別の案件は差し控えたい」と答弁したが、反論しなければ真実になってしまう。国益を守るためにも水際で反論することが必要だ。
――リッグの主張の背景にあるものは。
リッグのように「日本が侵略国家だった」といういわゆる東京裁判史観を持つ有識者は国内外に多数存在するが、加えてリッグは日本を極悪非道な国として見下すレイシズム(人種差別)に囚(とら)われている。
――戦後80年を迎えるが、日本の課題は。
日本政府や学会は国内外の歴史認識の問題に適切に対応できていない。大東亜戦争は米国が仕掛けたものであって、日本が「戦争を起こした」という虚構から脱却すべきだ。
日本の歴史を正しく検証するためには、両方の説を読み、自分の頭で多面的に考えることが重要だ。
――石破茂首相が戦後80年談話を出すかどうかが議論されている。
石破氏が首相の地位に就いたことは、場違いで、日本にとって大変危険だと思っている。選挙で負けた党首の責任を急先鋒(せんぽう)で追及していたにもかかわらず、3連敗してもまだその責任を取ろうとしていないのを見ると、人間失格だ。
戦後80年というのに、まだ勝者(米国)の一方的な裁定を受け入れることが、あたかも良心的なことであるかのように思っている人間が、石破氏に象徴される「朝日(新聞)的なナラティブ」の人々だ。自分の頭で歴史を勉強してほしい。






