トップオピニオンインタビュー米の「ゴールデンドーム」構想 日本も共同開発に参加を 日本安全保障フォーラム会長 矢野義昭氏に聞く

米の「ゴールデンドーム」構想 日本も共同開発に参加を 日本安全保障フォーラム会長 矢野義昭氏に聞く

核の脅威に原潜保有すべし

 やの・よしあき 1950年、大阪生まれ。京都大学卒。74年、陸上自衛隊入隊。兵庫地方連絡部長、第1師団副師団長兼練馬駐屯地司令などを歴任。2006年、小平学校副校長をもって退官(陸将補)。現在、日本安全保障フォーラム会長、岐阜女子大学特別客員教授、元拓殖大学客員教授。著書に『核抑止の理論と歴史』など。

トランプ米大統領が打ち出した大規模ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」が日米同盟の戦略に大きな変化を与えようとしている。宇宙空間に迎撃システムを展開するという壮大なミサイル防衛戦略に日本はどのように向き合っていくのか、元陸将補で日本安全保障フォーラム会長の矢野義昭氏に聞いた。(聞き手=沖縄支局・川瀬裕也)

――「ゴールデンドーム構想」をどのように評価するか。

中国やロシア、北朝鮮などは近年、極超音速ミサイルなどの新型兵器を相次いで開発・配備しており、これらの脅威は現行のミサイル防衛システムでは迎撃や阻止が難しい。また、サイバー・電磁波・宇宙領域を含む新たな戦域での攻撃能力も進化している。

「ゴールデンドーム構想」は、これらの新たな脅威から米本土を防衛するため、レーガン政権時代のSDI(戦略防衛構想)を参考にトランプ政権が打ち出したものだ。同構想が実現すれば中露朝に対する一定の抑止力は向上する。

――日本にとってのメリットは。

同構想は、核ミサイルの脅威に対して核で反撃する「懲罰的抑止」ではなく、核使用を無効化する「拒否的抑止」だ。これは日本にとって、現行ミサイル防衛システムの延長線上にあり、日本が関与する上で国民世論の理解を得られやすく政治的にもハードルは低いだろう。

また同構想には、1750億㌦の予算と最新の技術力の結集が必要と見られている。新たな技術・装備の共同研究開発に日本が参加すれば、日本独自の新たなミサイル防衛システム構築に向けた知見の蓄積にもつながる。

一方で、同構想への協力を口実に、同盟国などの最新の技術と資金力を集め、米国の将来的な先端技術覇権を維持強化するとの思惑もあると思われる。核心となる技術や科学技術者の保護など、日本側としても技術や頭脳の流出を招かないよう対応策を取る必要がある。

――課題となる部分は。

同構想はあくまで米本土の防衛を主眼としている点だ。群島国家である日本の場合は、局地的な小規模分散型のミサイル防衛システムを多数展開配置する必要があり、イージス艦やドローンの活用など、独自システムの開発が必要となる。特に高出力レーザーなどの新システムでは大規模な電源が必須であり、船舶用を含めた、移動型小型原発の開発を進めねばならない。

――トランプ政権は「3年以内の実用化」を目指している。現実的か。

段階的にISR(情報収集・警戒監視・偵察)システムや宇宙配備型の攻撃システムを展開する構想であり、実現不可能とは言えない。ただし、AI(人工知能)による指揮統制や情報通信システムが誤作動せず、各種妨害や攻撃に耐えて機能を発揮できるかには疑問が付きまとう。これらはSDIでも懸念された課題であり、今回の構想では一層の水準が求められる。

――今後日本が進めるべきミサイル防衛戦略は。

最終的には費用対効果の問題に行き着く。特に核抑止力の信頼性という点では、日本独自の核兵器搭載極超音速兵器の保有が最善であることは今後も変わらないだろう。現行のミサイル防衛体制では飽和攻撃を完全に防ぐことは不可能であり、防御のみでは撃ち漏らしが必ず発生する。一発でも核弾頭が抜ければ、壊滅的な被害をもたらす。

四面が深い海に囲まれ、良港も多数ある日本の地政学的特性を活かし、核搭載原子力潜水艦を保有すべきである。そのような原潜を常時1~2隻哨戒態勢に置く原潜艦隊を創設することは、日本の技術・財政力上まだ可能である。

しかし、少子化が進行すれば国力も技術力も低下し、将来的に原潜保有は不可能になるかもしれない。国民の理解と政治の決断があれば、今すぐにでも原潜の建造に着手できるはずだ。これこそが、核の脅威が現実のものとなる今、日本が選ぶべき最も確かな抑止の道である。

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