
トルコの少数民族クルド人の不法滞在が常態化している。主に埼玉県でクルド人が引き起こす地域住民とのトラブルや迷惑行為を2年前から追及しているジャーナリストの石井孝明氏に現状と課題、政府の対策をどう評価するか聞いた。(聞き手・豊田剛)
▼必要な国民的議論
――埼玉クルド人問題を取り上げてから2年が経(た)つ。
一部の在日クルド人は批判を気にしていら立ち、粗暴になっている。日本人がスマホを持っていると盗撮しただろうと詰め寄る例が多発している。6月2日には、川口市を視察した同市議と埼玉県議は、盗撮しただろうとクルド人に追い回され、警察署に逃げ込んだが、その署の駐車場で彼らと日本人妻が騒いだ。この件で県議らは25日、埼玉県警に監禁や威力業務妨害罪で刑事告訴した。
彼らは日本の司法秩序を全く尊重していない。私も1月に同じような威嚇するトラブルに直面したし、一般住民もそのような目に遭っている。クルド人は、2024年末時点で合法滞在者も含め推定4000人いたが、不法滞在者に対する送還通知が出て、その数は少し減っているらしい。ただし、住民トラブルは多発している。
もともと川口市と蕨市にクルド人が多いが、さいたま市や越谷市、愛知県などに移住するクルド人が増えているようだ。数は減っても、トラブルが起きている地域は増えている。
――2年の間で何がどう変わったのか。変わっていないこと、むしろ悪化した問題はあるか。
2年でようやく全国、そして埼玉県内で問題が知られ、状況が少し動いた。しかし政治家が対策を口で言っても現場で具体化されていない。変わっていないことは、私が機会あるごとに訴えているように移民政策を巡る国民的議論がないということだ。政府与党がそれを積極的に取り上げずにいた結果、なし崩し的に外国人労働者が増えている。人手不足と多文化共生ばかり主張している。
外国人労働者が増えることによるプラスの面はあるが、マイナス面の議論をせず、それを踏まえた上での総合判断を誰もしていない。この問題で、国民の不信は高まる一方だ。
クルド人問題で感じたのは、日本は政府も社会も、外国人を大量に国内に居住させる仕組みや制度がなく、さらに、国民の心理面での準備ができていないことだ。この2年で少し、不法行為をする一部外国人に警戒が出たという面で変化はある。欧米では深刻な問題になっているのに、議論をしない国、政治家、メディア、学会はおかしい。
――不法移民、偽装難民の入国を防ぐための最善の手段は何か。
難民申請をすると、その期間は強制送還ができない。難民の保護を定めた条約脱退などを考えるべきだが、政治的に難しいだろう。そうであれば、入国を規制する、難民申請を迅速にする―という二つを進めなければならない。
前者については、なぜかトルコからのビザなし渡航を放置している。万博が開催されているとはいえおかしい。難民申請迅速化は法務省が政策として掲げている。早く具体化してほしい。
強く感じるのは、日本政府が本来注力すべき治安維持・法執行といった国家の責務には必要なリソースを投入せず、一方で「共生」や「多文化理解」といった抽象的な理念政策ばかりを膨らませているという現実だ。これはおかしい。人的資源や税収が限られている中で、不要な事業に時間と予算を浪費する結果、現場支援や入管行政、取締体制は慢性的な人手不足に陥っている。
議員視察もパフォーマンスで終わらせるな
――移民問題を解決するための政府や自民党の動きをどう評価するか。
石破茂首相(自民党総裁)は移民をどうするかという発想に欠けていると思うが、ようやく自民党が動いた。7月の参議院選挙の公約で、外国人管理政策の強化が盛り込まれる見通しだ。有力議員の河野太郎元デジタル相がそれに言及。小野寺政調会長と地元選出の新藤義孝元総務相が地元住民とのトラブルが深刻化している川口市の現場を視察した。また法務省は5月、不法滞在者ゼロプランを発表した。私が23年5月に埼玉クルド人問題の報道をして以来、ようやくという感慨が強い。これは、住民の声が政治を動かした結果だ。自民党の選挙パフォーマンスにならないことを望む。
――今後、どんな議論を期待するか。
埼玉クルド人問題は、国のあり方を何も考えていない根深い問題の現れだ。日本をどういう国にし、外国人の力をどのように借りるか。深い議論と思索がないことが、この問題に現れていると思う。
日本は少子高齢化が進み、外国人労働者がある程度増えることは避けられない。だからこそ急いで外国人政策の枠組みをつくらなければならない。ただし、日本国民が利益を得ること、安全・安心に暮らすことが本質であって、それを外して外国人を擁護する必要は全くない。外国人問題は表面化していないだけで、全国でトラブルが起きている気配がある。外国人が大量流入することで、国のまとまりや文化が変容し、私たちの知る日本が日本でなくなってしまうことを懸念している。