トップオピニオンインタビュー増えるムスリム 北海道イスラミックソサエティ会長 アラム・モハマド・トゥフィック氏に聞く【持論時論】

増えるムスリム 北海道イスラミックソサエティ会長 アラム・モハマド・トゥフィック氏に聞く【持論時論】

アラム・モハマド・トゥフィック 1980年生まれ、バングラデシュ出身。2006年に来日し、北海道大学大学院歯学研究科卒業。現在は北大で歯学に関する調査研究を行っている。
アラム・モハマド・トゥフィック 1980年生まれ、バングラデシュ出身。2006年に来日し、北海道大学大学院歯学研究科卒業。現在は北大で歯学に関する調査研究を行っている。
近年、日本国内でイスラム教を信仰する人々、いわゆるムスリムと呼ばれる人々が増えている。その一方で日本人のイスラム文化への理解度はそれほど高くないのも事実。そこでイスラムの人々と日本人が互いに理解を深め、地域での共存を図るにはどのような努力と歩み寄りが必要なのか、北海道イスラミックソサエティ会長のアラム・モハマド・トゥフィック氏に聞いた。(聞き手=湯朝肇・札幌支局長)

――近年、イスラム教を信仰する方々が日本国内において増えているといわれますが、その背景には何があると思われますか。

現在、世界中には約20億人を超えるイスラム教徒がいるといわれています。アジアを見てもイスラム教徒の多い国はインドネシアやマレーシア、バングラデシュなどです。また、サウジアラビアやエジプトなどの中東、さらにアフリカの国々にも広がっています。そうした国々から日本で仕事に就きたい人、あるいは日本の大学で学びたい留学生が増えていることが背景にあると思います。一方、日本は現在、あらゆる産業において人手不足が指摘され、海外からの働き手を受け入れていますが、そうしたことも大きな要因となっていると思います。私自身、北海道に10年以上住んでいますが、当時に比べると、ムスリムの数は2倍あるいはそれ以上に増えています。

もう一つ、ムスリムの立場から言えば、日本の人々はイスラム教に対してそれほど偏見がないと感じています。海外では、ムスリムの女性が頭髪を覆うヒジャブを見ただけで排斥してくるところがありますが、日本ではそのようなことがあったという話は聞いたことがありません。また、入国管理局も非常に紳士的です。日本の人は親切で礼儀正しく、街もきれいで治安もよく、そうした良い印象が海外のムスリムに伝わっているので、日本に行きたいと考えるムスリムが増えていると思います。

――現在、日本あるいは北海道にはどのくらいのムスリムの方々がいらっしゃるのでしょうか。

日本全体では約35万人。北海道では5000人くらいでしょうか。私たちの祈りを捧(ささ)げるモスクと呼ばれる礼拝所は現在、北海道では札幌、小樽、江別の3カ所あります。今年中には帯広でも完成します。来年には旭川に開設する予定です。

――海外から来て日本で生活することで、日本の文化と出身国の文化との違いで違和感を持ったり、理解できないと悩むことも多いのではないでしょうか。

日本にやって来るムスリムの人たちの出身国と日本の文化は異なりますから、最初は戸惑うこともあると思います。気候が違うし、言葉も違う。社会の仕組みや習慣も違うわけですから当然といえば当然です。しかし、先ほどもお話ししたように、日本はイスラムの人々に対して非常にフレンドリーなので、私たちは生活する中で日本の風習や習慣を理解することができます。

また、日本の方々から助けられることもしばしばあります。例えば、イスラム教では豚肉の入った料理は戒律上食べることはできません。豚の油を用いた調味料を使って作った料理も食することはできません。そのように豚肉など禁じられているもの以外で作った料理をハラール料理といいますが、私も日本に来た最初の頃はとても神経を使いました。ところが、スーパーで困っていると、見も知らない日本人が食品を一生懸命見てくれて、説明してくれました。最近は「豚肉や豚の油は入っていない」とあえて表示するハラール食品がスーパーでも売られるようになってきました。どこでも売っているわけではありませんが、少しずつ増えてきました。ムスリムにとっては非常に嬉(うれ)しく思っています。

――日本人にとってイスラム教に対しては、テロというイメージを抱く人が多いと思います。実際にテレビなどでは、イスラム教に関するテロ事件がしばしば報道されますが。

本来、イスラムの意味は「神様への帰依・服従」を意味します。帰依することで心や暮らしの「平安(サラーム)」を得ることを意味します。ですから、あいさつをするときは「アッサラーム アライクム(あなたの上に平安がありますように)」と声を掛けます。イスラム教では「ムスリムは暴力を振るってはならない」と教えています。従ってテロを起こすことなどはムスリムにとってはあり得ないことなのです。ムスリムは断固テロには反対しています。

――北海道において昨年、札幌市内に北海道インターナショナルスクールを開設したと聞きます。その目的はどういったものなのでしょうか。

その目的は幾つかあります。学校の子供たちが母国の言葉や文化をしっかりと身に付けること。同時に日本の言葉や文化を理解して互いに交流し合う場を持つのが最大の目的です。学校での授業を充実させるため米国の標準カリキュラムの認証を受けて昨年9月に開校しました。現在、30人近い生徒が勉強しています。

――地域との文化交流・共存は重要ですね。

私たちが地域の方々と一緒に暮らしていくためには、地域の文化や風習を理解していくことが重要だと考えています。その一方で私たちの文化や習慣もまた理解してもらう必要があるとも考えています。そのために私たちはでき得る限り、文化交流できる場を持ちたいと思っています。今年3月15日に開いたラマダンパーティーもその一つで、そこには札幌市民を含めて400人近い人が集まりました。また、大学や高校、中学校などでの異文化交流の時間を持ちました。お寺を訪問し、地域の人との交流を進めています。

もちろん、ムスリムの子供たちが通う日本の学校に対して私たちの願いがないわけではありませんが、それを押し通すことは共存につながるとは考えていません。日本は私たちの第2の故郷と思い、日本の文化の良いところを学びながら、地道に文化交流を進め、互いに平和に暮らせるような地域づくりに貢献していきたいと考えています。

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