トップオピニオンインタビュー「民法」で解散請求を危惧 家庭連合の前例 他宗に影響も 金剛寺住職 水田真道氏 【インタビューfocus】

「民法」で解散請求を危惧 家庭連合の前例 他宗に影響も 金剛寺住職 水田真道氏 【インタビューfocus】

みずた・しんどう 1980年、静岡県沼津市西間門の臨済宗妙心寺派金剛寺の長男として生まれる。東北大学工学部卒、同大学院修了。瑞巌寺専門道場(宮城県松島町)で2年修行ののち金剛寺副住職、2014年から同寺住職
安倍晋三元首相銃撃事件(2022年7月8日)を契機にマスコミが集中的に世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)批判および政治の「接点」批判を繰り返し、岸田文雄政権下で文部科学省は刑事罰のない家庭連合に対し「民事の不法行為」を理由に解散命令請求を東京地方裁判所に行った。他宗教への影響を懸念する静岡県沼津市の金剛寺住職・水田真道氏に聞いた。(聞き手・窪田伸雄)

――安倍氏銃撃事件後のマスコミ報道や家庭連合についてどう見ていたか。

正直、テレビや新聞に書いてあるままに、一部ではカルトみたいに言われていたり、壺(つぼ)や本を高額で売ると言われているのを自然に受け取っていた。だったら解散請求されても仕方ない、と思っていた。統一教会の信者の子供が、それらが原因で安倍氏を撃ったという報道に、去年の夏頃まではさしたる疑問も抱かず、安倍さんは残念なことだったぐらいにしか思っていなかった。

――去年の夏頃、と言うと。

家庭連合の方が、「マスコミにいろいろ言われているが、皆さんあまり知らないので理解していただきたい」と言って訪ねて来た。私も最初は身構えた。だが、取りあえず話はどんな相手でも聞きたいという立場だったので、話は聞いた。それから私なりにネットなどを調べたりした。

過去の30年前、40年前、強引な勧誘などをしていたのかもしれないが、家庭連合がコンプライアンス宣言(2009年)をしてから、事件や強引な勧誘はなくなっているとのことだった。よく考えると山上徹也被告が行ったことはおかしい。家庭連合の会長が撃たれたのなら百歩譲ってまだ分かる。だが、安倍氏が撃たれて家庭連合をものすごく叩(たた)く。マスコミの報じ方はかなり違和感を感じざるを得ないというのが今の感想だ。

――家庭連合への文科省による質問権行使、解散命令請求、東京地裁での審理は非公開だが、そのやり方は強引で、証拠の陳述書に虚偽、捏造(ねつぞう)の疑いが持たれていると国会でも問題にされた。

端的に言うとむちゃくちゃだ。キリスト教も家庭連合も仏教もそれぞれ宗教の教義は違う。それを問題にするつもりはない。言いたいのは法律論だ。この解散命令請求を是としてしまうと、いずれ他の宗教宗派である私たちも、無理筋な論理で解散命令請求が自分たちに向いたときに抗弁できなくなってしまうと思う。

戦後、宗教法人に解散命令が出されたのは刑法に触れるオウム真理教と明覚寺だけだ。それを「民法上の不法行為」に拡大解釈してしまった。文化庁から出ている家庭連合への解散命令請求内容のPDF文書を読むと、「高額な献金」とか金額の数字が躍っている。だが、その高額な献金・寄付の境目というのは誰が判断するのか。

例えば1000万円は私にとっては高額だが、大富豪にとっては小さな額だ。1人暮らしで年金暮らしの高齢者には5万円だって高額になる。例えば、お寺の建て替えで10万円の寄付を仰ぐとしても、10万円でいいのかという方もいる一方、10万円は厳しいという人もいる。

家庭連合の件でもし前例ができたら、1000万円寄付してくれた人の孫が20年後に「祖父の寄付は住職に洗脳されたのだから返せ」と民事訴訟を起こされ、それを理由に寺を解散しろと言われたらぐうの音も出なくなってしまう。

――解散請求要件に「民法」を含めたことで、宗教に対する行政権が増大したことにならないか。

国はカードを握ったことになる。程よいところで宗教法人への課税を始めるのではないかと思う。例えば一部課税として塔婆やお守りなどに課税するとか。そのため解散命令請求、質問権行使を取引材料に使ってこないか、非常に危惧している。

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