――政治資金問題で不記載議員は非公認や比例重複しないなどの処分を受け、安倍派が弱体化した。
自民党の政治家にとって公認を受けるかどうかは生きるか死ぬかの問題だ。大所帯の安倍派を簡単に断罪してしまえば政権がぶっ壊れてしまう。まとめて処分してしまえば自民党の政治力が極めて脆弱(ぜいじゃく)になってしまう。対応としてはギリギリのところにあったのではないか。
――昨年の衆院選で自公が過半数割れした。少数与党の「宙づり国会」の現状をどう見るか。
衆院選で議席を最も増やしたのは立憲民主党だが、一番喜んでいるのは明らかに国民民主党だ。28議席で議席としてはまるで小さいが、「一本の藁(わら)がラクダの背を折る」ということわざがある。限界にきているとこにちょっと乗っかることによってラクダの背を折ってしまうこともある。これは政治の力学だ。逆に言えば、これを失ったら国民民主はただの少数政党でしかない。だから絶対にこの地位は手放さないし、けんか別れもしない。
くっつき過ぎて飲み込まれてもいけないし、自分たちを過大評価するのも危険だ。「年収103万円の壁」については、国民民主が求める178万円の満額回答に足りないとはいえ、十分に風穴を開けることはできたことに違いはない。
日本人は巧みに政治家を操りながら、国際情勢にも対応できる。民意を丁寧に見ればいい。自民党による一党支配が続くことは良いと思っていないから衆院選できついお灸(きゅう)を据えた。しかし、野党にも任せられないので増やさない。小さな政党を使って発言権を与えるという実験をやっている。国民は賢い選択をしていると思う。
もしアジアでもっと恐ろしい事態になった時には、それはまた違う勢力図になるのではないか。日本は国際情勢とは無縁では生きていけない。世界と同じように日本は必ず右傾化する。
――2025年の政局をどう予想するか。
夏の参院選で自公勢力が過半数を割ることはないと思っている。3年前の参院選で自公はかなりの貯金ができた。昨年の衆院選で自民は相当反省している。有権者がそれ以上に厳しい判断を下すことはないのではないか。
野党側も統一候補を立てられるかどうか疑問だ。むしろ野党自体が分断の危機にある。立憲民主の大きな支持母体・連合は、総評と同盟がかなり無理してくっついてできた。労組の現実的な流れにあっていつまで一緒にやっていけるのか。党内にも保守勢力ができていて、一本で続けられるのか。一方、国民民主が躍進すれば、労組の動きを分断することになり、立憲民主そのものの分断につながる可能性がある。
ひょっとすると、石破政権は望外の価値を生み出す可能性もある。衆院選で負けていながらも「勝った」状況をつくり出せるかもしれない。連合を分断させ、大きな自民党の核に寄せ、綺麗な政治をすれば、石破氏は大化けする可能性がある。
構造改革を進められる可能性があるし、憲法改正もできるかもしれない。安倍氏であれば「戦争の準備ではないか」という批判があったが、石破氏であれば戦争をする度胸などないだろうし、国民はそれほど心配はしないのではないか。自然と転がり込んでくるかもしれない。
それだけに石破氏は安全保障面で真価が問われる。国際情勢の中で敏感なアンテナを張り巡らして、国際政治に耐え得るかどうか。中国に近いのが弱点と言われているが、それを梃子(てこ)にして中国が動いてくるとも思えない。それほど日米同盟は強固だ。首相には安全保障について見識を発揮してもらいたい。
――小選挙区制度の見直しの声が出始めているが。
衆院選では小選挙区制のせいで人材が育っていないという批判もあった。小選挙区では、自民の公認が取れれば、本番の選挙をやらなくてもほとんど勝ったようなものだった。小選挙区と比例代表の公認権を握っている執行部が強くなるという批判はある。執行部にゴマをすっておけばいけるんだということで、どんどん人間が小さくなるという批判もある。
しかし、10月の衆院選では多くの世襲議員が落選した。これはまさに小選挙区制が利いてきたことの証左だ。小選挙区制を導入した時の議論を見ていて分かるように、大きな風が吹いてきた時には、それに逆らえば落選する、だから政権交代ができるという話だった。今回は「裏金」という大きな逆風が吹き、強いとみられていた世襲議員が落選した。小選挙区制があるから人が育たないという議論は成り立たない。
日本の政治を卑下する必要はない。民意が熟していくと、時代にそぐわないものがだんだん消えていくだろう。共産党の力も落ちてきた。社民党は事実上もうなくなった。塊は純化されて少しずつ右に寄っていく。だから、大慌てで舵(かじ)を切ることはない。日本人を信じた方がいい。






