おおむね歓迎の韓国 国交60年 新宣言の発表を
韓国の尹錫悦政権発足以降、比較的良好な状態が続く日韓関係。日本で新たに発足した石破茂新政権を韓国はどう受け止め、何を期待するのか。日韓関係に詳しい韓国国民大学の李元徳教授に聞いた。(聞き手=ソウル上田勇実)
――石破首相に対する韓国人の印象は。
おおむね歓迎ムードだ。まず歴史認識問題で柔軟な姿勢を持ち、韓国に理解もあると認識している。また韓国では、自民党総裁選の決選投票で争った高市早苗・経済安全保障担当相が強硬保守というイメージから「女性版アベ(安倍晋三元首相)」などと呼ばれ、警戒していた。高市氏ではないという意味で石破氏を歓迎する側面もある。
――今後の日韓関係をどう展望するか。
岸田文雄前政権の路線を踏襲するとみられるが、改善された両国関係をどう維持・発展させられるかが重要だ。
――石破首相に何を期待するか。
来年、両国は国交正常化60周年という大きな節目を迎える。韓国の多くの識者は1998年に金大中大統領と小渕恵三首相が合意した「新パートナーシップ宣言」をグレードアップさせた新宣言を発表すべきと考えている。当時と今では日韓が直面する現実が大きく変わったからだ。
まず中国が強大国となり、米中覇権争いの狭間に立たされるようになった。また北朝鮮の核・ミサイル脅威が極めて深刻になった。そして韓日は対等な関係になり、垂直的から水平的な関係に変わった。これらに見合う新宣言を出すべきだろう。
韓国政府は新しい韓日関係構築に向けタスクフォースを組織し、「韓日関係2・0」をつくる作業に入ったと聞いている。日本側に応じるよう求めたが、政権交代など韓国の国内事情に対する不安があり、あまり積極的になれないようだ。
石破首相には、来年を関係発展の契機にしようという韓国側の思いに対応してくれるのではないかと期待したい。
一方、石破政権に願う別の懸案もある。先日、39年ぶりに会合が開かれた韓日大陸棚協定を日本側が終了させないでほしいということだ。これまで韓日両国は協定に基づき、韓国側が石油などの資源が埋蔵されているとみる九州南西沖の海域を共同開発区域に設定してきたが、日本は協定が韓国に有利と考えているようだ。来年6月から終了を予告できるが、国交60周年に冷や水を浴びせかねない。
――韓国の一部では元徴用工など歴史認識問題で依然として日本側に不満を抱いている。
徴用工や慰安婦の問題は解決に向かっているが、不十分な部分もある。勝訴した原告の韓国人被害者や遺族に対する賠償金支払いで、第三者弁済を行う政府の支援財団の財源が不足していることや、賠償金支払いに日本企業が呼応しないことなどだ。
石破首相がこれに積極的に対応するには日本国内の雰囲気もあり、簡単ではなさそうだ。石破首相自身、歴史問題を巡り韓国にとって前向きな発言もしたが、徴用工訴訟の大法院判決(2018年)については、日韓請求権協定違反だという認識。追加で韓国側に補償措置を講じるとは思えない。