徳島市議の美馬秀夫氏は、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の信者であることを公言し、議員活動を続けてきた。2022年8月、岸田文雄首相が自民党総裁として家庭連合との関係を絶つと宣言したのを受け、メディアは地方議員と教団の関係を追及するが、美馬氏にも地元の徳島新聞などからアンケートが送られてきた。
「アンケート自体、宗教差別につながる魔女狩り的なもの」と思った美馬氏だが、既に信者であることを公表していたこともあり、ありのままに家庭連合の会員であると答えた。
直近2回の選挙は自民党公認で立候補した美馬氏だが、翌23年4月の市議会議員選挙では、自民の公認を求めず無所属で立候補。それでも信者を公言する現職の選挙とあって、マスコミも注目。NHKも東京からディレクターを派遣し、密着取材した。
そんな中、美馬氏は1978票を獲得し、7選を果たした。票数は前回より200票ほど減らしたものの、当選順位は21位から20位(定数30)に進んだ。
美馬氏が獲得した票のうち、家庭連合関係の票は500票ほどとみられ、4分の3約1500票は、それ以外の広い有権者の票である。美馬家は徳島を代表する名家の一つで、地元の信望が厚く、美馬氏の培ってきた人脈があった。
「確かに逆風はあったものの、私の政治的な主張は、保守的な有権者に届き受け入れられているとの感触を持った」と振り返る。
選挙後も美馬氏は自民党徳島市議団に所属し副会長として議員活動を行っている。23年10月、政府の家庭連合に対する解散命令請求が行われ、家庭連合を巡る情勢は厳しさを増したが、美馬氏の議員活動に特に大きな変化はないという。
「いろいろあっても、やはり民主的な選挙で市民の方々の支持を得たことが大きいと思う。これまで以上に、票の重みと責任を感じている」と美馬氏。
徳島新聞によると、自民党県連の中西祐介会長は、解散命令請求が出た教団との関わりについて「(教団との関係を持たないとする)党のガバナンスコードに基づいて行動するのみなので、今回の決定が左右するものではない」と述べている。
地方によっては、岸田首相の関係断絶宣言との間にはかなりの隔たりがあるようだ。もともと自由と民主主義を基本にさまざまな宗教や思想信条の人々を抱え込んできた自民であることを考えると、当然といえる。岸田首相の全体主義的な断絶宣言にはそもそも無理があり、地方の現実から乖離(かいり)したものであったことを示している。
美馬氏は解散命令請求について「世論に迎合した結論ありきの判断。特に解散要件に民事も入れるとした朝令暮改には納得できない」と批判する一方、「裁判所の適切な判断を願っている」と語る。
今後の議員活動については、これまで通り、自身の信仰や信条に基づいて意見を述べていきたいという。特に少子化問題は力を入れていきたいテーマの一つ。
「政府の少子化対策はお金を出しさえすればいいというような発想だが、結婚し家庭を持ち、子供をつくりたいという若い人が増えないと本当の解決にはならない。若い人が結婚し、子供をつくろうというムードが社会に広がるようにしたい」と抱負を述べた。
(信教の自由取材班)