Homeオピニオンインタビュー【連載】国連機関に国家主権譲らず「もしトラ」どうなる米外交 元米大統領副補佐官 フレッド・フライツ氏に聞く(下)

【連載】国連機関に国家主権譲らず「もしトラ」どうなる米外交 元米大統領副補佐官 フレッド・フライツ氏に聞く(下)

トランプ前米大統領=2024年5月29日(UPI)

――国連などの国際機関はリベラルなエリートたちに占められている。自国の利益を守るには国家主権の概念が重要になるのでは。

国家主権はトランプ前大統領が掲げる「米国第一」の重要な概念だ。最終的に米国が従うのは、合衆国憲法であって国連憲章ではない。国連や国際刑事裁判所(ICC)、世界保健機関(WHO)に主権を譲ることはない。

トランプ氏は米国から国家主権を奪い、中国に乗っ取られている腐敗した組織から手を引くだろう。その最たる例がWHOだ。

――グローバリズムは国境を開放し、移民を大量に受け入れることが望ましいと捉える傾向がある。

その通りだ。これは米国と近代社会を作り変えようとする過激なグローバリストたちの考え方を表している。彼らは近代社会を敵視しているのだ。

米国民は国境を開放することを良いことだと思っていない。何百万人もの不法移民が国境を越えてくることを憂慮している。犯罪者や麻薬の売人のほか、テロリストや中国の諜報(ちょうほう)員も入ってきている。バイデン大統領が南部国境を守ろうとしないからだ。

――日本の政治指導者の多くはグローバリズムを正しいと捉えており、トランプ政権と価値観を共有できない可能性がある。

ほとんどの西側諸国、特に欧州は世界政府やグローバリストのアプローチを強く支持している。彼らは米国による一方的な行動を望まず、国連や欧州の決定によって米国を制約したいと考えている。トランプ氏はそれを拒否しており、緊張が生じるだろう。

――バイデン政権のエマニュエル駐日大使は、日本にLGBT法の制定で圧力をかけた。トランプ政権であれば、リベラルな社会政策を他国に押し付けるような行動を取るだろうか。

日本の国内問題に干渉したエマニュエル氏には極めて失望している。大使がそんなことをしてはならない。国によっては、そのような大使は現地政府に追放させられる。バイデン政権は世界各地の大使館で自分たちの社会的アジェンダを推進するため、現地政府が不快に思う文化的価値観を促進する旗を掲げ、内政に干渉している。

もしトランプ氏が大使を指名するなら、ホスト国の主権を尊重し、内政に干渉しない大使になると確信している。

――トランプ政権が復活した場合、1期目のように民主党寄りの官僚機構、いわゆる「ディープステート」による妨害が予想される。

私はディープステートで25年間働き、生き延びてきた。トランプ氏のアジェンダを支持し、優れた管理能力を持つ強力な高官を指名することが重要だ。また、政策の実行を助ける下級・中級の管理職を指名し、政府職員は職務から政治を排除して誠実かつ倫理的に職務に当たらなければならないことを明確にするのだ。

ほとんどの政府職員は政治的ではなく、国家に貢献したいと思っている。しかし、十分な監督や管理がなければ、脱線する可能性がある。共和党政権であれ、民主党政権であれ、政府が政治化するのは見たくはない。第2次トランプ政権には、政府を非政治化し、官僚に納税者が求める仕事をさせる強力なマネジメントを期待する。

――トランプ前政権は、国際的な信教の自由擁護を外交政策の優先課題の一つとして取り組んだ。2期目も重要視するか。

そう思う。2期目でも優先課題の一つになるだろう。

バイデン氏再選なら台湾有事も

――トランプ氏は中国にどう対応するか。

台湾問題については、トランプ氏は「戦略的曖昧さ」を断固として維持し、どのような対応を取るか、中国を悩ませようとするだろう。中国には特に貿易面で非常に厳しい政策を取るほか、新型コロナウイルスを機会あるごとに「チャイナ・ウイルス」と呼んで中国の指導者たちを怒らせるだろう。

しかし同時に、トランプ氏は対話による緊張緩和、いわゆる「取引外交」を進めるだろう。これは冷戦のどん底の時代でさえ、大統領はソ連や中国の首脳と対話したという理論に基づく。彼らに譲歩するのではなく、制御不能な緊張を生まずに共存する道を模索するだろう。

――台湾有事の可能性をどう見る。

中国が今年、台湾を侵略する準備ができているとは思わない。バイデン氏が再選された場合、中国は弱い米大統領のうちに侵攻したいと思うだろう。

逆にトランプ氏が大統領になれば、中国が侵攻を望むとは思えない。私はトランプ氏の緊張緩和の取り組みが成功し、中国が台湾に軍事作戦を行う可能性は低下すると見ている。

――バイデン政権下でロシアのウクライナ侵攻やハマスのイスラエル攻撃が起きた。米国の抑止力が低下している。

米国の抑止力が低下したのは、バイデン氏による優柔不断で効果のない外交政策のためだ。バイデン氏によると、米国の国家安全保障上の最大の脅威は中国ではなく気候変動だという。全く的外れだ。

気候変動が中国共産党より深刻な脅威ということはない。バイデン政権が中国と気候変動について議論するたびに、中国は大喜びしている。台湾や南シナ海、香港、ミサイル・核開発、軍事問題について話す必要がなくなるからだ。

私は、有能な国家安全保障チームと優れた政策を持った決断力のある新たな大統領によって、米国の抑止力を取り戻せると思う。敵は強さを尊重する。トランプ氏は強い大統領になるだろう。

(聞き手=本紙主幹・早川俊行)

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