トップオピニオンインタビュー【連載】中国の影響力、全面排除を  「もしトラ」どうなる米外交 米国第一政策研究所上級研究員 スティーブ・イェーツ氏に聞く(中)

【連載】中国の影響力、全面排除を  「もしトラ」どうなる米外交 米国第一政策研究所上級研究員 スティーブ・イェーツ氏に聞く(中)

米中首脳会談=2023年11月15日、米カリフォルニア州ウッドサイド(UPI)

――中国の脅威にどう対抗すべきか。

中国が台湾への圧力を高め続け、重大な威圧的行動を取ることは、極めて現実的なリスクだ。これは何よりもまず、政治戦とプロパガンダの分野から始まる。彼らはメディアやエンターテインメント、教育、企業などさまざまな形で社会に影響を与え、われわれの考え方を操作しようとしている。

<前回>「脱中国」で同盟国と連携 紛争阻止へ抑止力復活目指す どうなる米外交 米国第一政策研究所上級研究員 スティーブ・イェーツ氏に聞く(上)

これに対抗することにもっと真剣にならなければならない。中国共産党の悪質な影響力を封じ込めるために、われわれの生活に不可欠なすべてのものから中国を切り離す「戦略的デカップリング」という包括的なアプローチを取るべきだ。われわれがアプローチを変えない限り、威圧が攻撃につながるリスクは極めて現実的であり、今後数年以内に起きるだろう。

台湾への攻撃で地球上の誰よりも影響を受けるのは、台湾人以外では日本人だ。日本の国家アイデンティティーから領土保全、経済的サプライチェーン、エネルギーに至るまで、甚大な影響を受ける。日本ではこれについて以前よりも議論・理解されるようになったが、十分ではない。

――「戦略的デカップリング」とは。

最初に考えるべきは、「敵に資金を提供しない」ことだ。貿易によって富を移転しているのであれば、それは中国軍の近代化に使われ、われわれに対する兵器の配備につながる。高度な兵器システムを開発する企業との取引であれ、新型コロナウイルスの発生につながった中国研究機関への資金提供であれ、はっきり止めなければならない。つまり、害をもたらすことはやらない、ということだ。

中国の習近平国家主席(写真右)とバイデン米大統領(写真左)=2023年11月15日、米カリフォルニア州ウッドサイド(UPI)

第2次トランプ政権はまず、最大の脅威である中国に富と技術を移転する結果をもたらしているサプライチェーンや関与の在り方について全面的な見直しに取り組むだろう。

特に、防衛サプライチェーンの中国依存をどう減らすかだ。重要な部品に中国製が含まれている。戦略的デカップリングによって、米国と同盟国をベースとした防衛品のサプライチェーンを大幅に拡大しなければならない。これは日米だけでなく、他の同盟国にとっても力強い成長につながる分野だ。

――第2次トランプ政権は日米同盟をどのように位置付けるだろうか。

中国共産党は日本や米国を憎み、われわれの生活を毀損(きそん)しようとしている。そのような存在への依存度をどう引き下げていくか。これが根本的な問題だ。

中国共産党が下す決定によってわれわれの安全や健康、繁栄が損なわれないように、同盟間の協力を高めることで彼らの悪質な影響力を制限することを決意しなければならない。これが焦点となるべき中核的領域であり、同盟にとって健全な基盤になると思う。

気候変動が地球にとって最優先の安全保障リスクと言われている。環境を軽視すべきだと言うつもりはないが、気候変動は数世紀にわたってわずかな影響しか及ぼさない。気候変動が影響を与える段階に達する前に、多くの害をもたらそうとする修正主義勢力が存在する。

何世紀にもわたる目標に対し言葉だけの協力を求めることは、今、来年、10年後に迫る脅威から人類を守ることからわれわれを遠ざけることになる。台湾海峡危機の可能性や人工知能(AI)の管理基準の確立、宇宙の利用方法、豊富で手頃なエネルギー開発など取り組むべき課題がある。中国共産党や国際機関にはできない。われわれが有志連合で行わなければならない。その中核的な取り組みに関して、日米同盟が欧州、中東、西半球をも方向付ける基盤となり得る。

(聞き手=本紙主幹・早川俊行)

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