――憲法のうち「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3原則を変えることはタブーなのか。前文は時代の変化に合わせて変える必要はあるのではないか。
当面は3原則は変えなくていい。ただ、前文には問題がある。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」とあるが、それで日本は守れるのか。言い換えると、「日本だけが悪い国で、周辺諸国は全て良い国です。日本が再び戦争を起こさなければ世界は平和です」ということだが、本当にそうなのか。
日本国憲法最大の欠陥は、平和時を想定して書かれており、有事や非常事態の規定がないことだ。いざ戦争になったり、有事になったりした時にどうするかということが何も書かれていない。戦争をどう抑止するか、そのための軍隊の規定もない。また、総理大臣の不在時に誰が代わりをするかという規定や非常事態になった時にどうするかという規定が欠けていることは大問題だ。
――憲法改正は解散総選挙の争点になり得るか。また、改憲の公約が国民の支持につながるか。
次回の解散総選挙では、自民など改憲派政党は憲法改正を問えばいい。経済の問題と同じぐらいの比重で憲法改正をスローガンに掲げて戦う。それで勝てば、改正に向けて大きく進むのではないか。
岸田政権は支持率が低く求心力がない状態にある。これではいくら憲法改正しようとしても野党の抵抗を受けて先に進めない。それを打開するためにも解散総選挙をして仕切り直しをしたらいい。
――選挙で憲法改正を主張することが国民の支持につながると思う。
この問いについては、台湾有事のリスクやロシアによるウクライナ侵攻の問題を考えればいい。米国はウクライナのために兵士を送らなかった。日本は核兵器保有国のロシア、中国、北朝鮮と接するが、隣国の脅威にどう立ち向かうのか、いざとなったら同盟国の米国は本当に動いてくれるのかという疑問がある。
中国との関係では、米国は中国に対して厳しい姿勢を見せる一方で、ブリンケン国務長官は北京で習近平国家主席と会談している。日本の場合も、中国相手に仕事をしている人は多いのであり、非難するだけではなく上手に立ち回らないといけない。日本はいいポジションにいるのだから、それを生かすためにも、憲法改正して自衛隊を軍隊にしてその機能を強化すべきだ。
――改憲機運をどう高めていくか。
多くの国民が憲法をもっと学ぶようになれば問題点が分かり、憲法を変えなければ大変なことになると気が付くだろう。冷戦でソ連に勝利した米国が日本の経済を弱くした結果、失われた30年を経験した。米国に強く出られないのは、日本の安全保障を米国に依存しているからにほかならない。だから、憲法を改正して自ら国を守れるようになって、米国依存から脱却する。決して米国と対立するのではなく、日本が自国の安全保障をしっかり担った上で、お互い協力することが大切だ。
――田村氏は憲法改正について多くの著書があり、各地で講演による啓蒙(けいもう)活動もしている。
自分自身、自民党の政務調査会の調査役・審議役として外交・国防・憲法・インテリジェンスなどを担当した。こうした経験もあって、憲法改正をテーマに6冊の本を著した。それでも不十分だと思い、「憲法よりも大事なもの」という曲を自費で制作した。
(聞き手・豊田 剛)
(終わり)