自民は結党精神に立ち返れ 政治評論家 田村重信氏に聞く(上) 【連載】日本の憲法改正―論客に問う(7)

自民党本部
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――岸田文雄首相は今国会中の憲法改正に意欲を示しているが、そもそも自民党の立党精神の一つに憲法改正がある。

自由民主党は1955年、立党した際の綱領に「平和と自由を希求する人類普遍の正義に立脚して、国際関係を是正し、調整し、自主独立の完成を期する」と掲げた。党の政綱には、「独立体制の整備」という項目で、「現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、集団安全保障体制の下、国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える」と明記している。

要するに、今こそ占領政策からの脱却を図り、真の独立国家となる必要があるということだ。これに基づいて考えれば、今こそ一刻も早く憲法改正し自衛隊を軍隊にして、日本の防衛力強化を図ることが重要だ。結党の意味を再確認し、自主独立とは何なのか考えるべきだ。

たむら・しげのぶ 昭和28年、新潟県生まれ。拓殖大学政経学部卒。自民党本部に勤務。政調会長室長、総裁担当などを歴任。退職後、政治評論家。主な著書に「ここが変だよ日本国憲法!」(内外出版)。

――自民は、改憲4項目を掲げているが、その一つとして自衛隊を明記することで違憲状態を解消するとしている。この評価は。

自衛隊の憲法明記と言って動いているが、実はここに問題がある。小泉政権時の2005年の11月22日、新憲法草案で、自衛隊を「自衛軍」にすると明記した。自民党が下野した12年に発表した憲法改正草案では、9条2項を削除して「国防軍」にするとした。

ところが、安倍晋三首相(総裁)は18年、9条1、2項を変えず、必要な自衛隊の措置を「自衛隊」として明記すると、後退させてしまった。自衛隊のままだと諸外国の軍隊と同じような活動・行動ができず、今の自衛隊のままの活動しかできない。必要最小限度の自衛隊でしかない。これは結党の理念から反するのではないか。

今の日本の現状を見ると、日本全国、特に沖縄を中心に米軍の駐留が多過ぎる。計画では縮小に向かうのだから、それに対応できるように日本の軍隊を強化することが大事になる。

――改憲派として知られていた安倍氏が自衛隊の位置付けで後退してしまった理由は。

安倍政権の時に平和安全法制を整備した。そこで、集団的自衛権の一部を可能にし、自衛隊が米軍に協力できるようになった。これを憲法解釈変更で済ませたことで、「それで良し」としたかもしれない。ただ、米軍がどれだけ日本の防衛のために動いてくれるのか分からない。自分の国は自分で守るようにしないといけない。

――安倍政権下では改憲勢力が衆参両院総議員の3分の2を超えていたが憲法改正の発議に至らなかった。

森友・加計学園の問題などで野党から激しい追及を受け、その対応に追われた。さらに国内経済が悪かったため、「アベノミクス」政策を打ち出して経済再生を最優先課題として取り組んだ。その結果、憲法改正が後回しにされた部分もあるだろう。

 (聞き手・豊田 剛、写真・亀井玲那)

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