岸田政権の下で憲法改正論議が停滞している。第2次世界大戦の結果、占領軍がもたらした“平和”憲法の前提が、衰退する米国、「力による現状変更」に向かうロシア、中国の動きなどにより崩れつつある中、日本の憲法はいかにあるべきか論客に聞いた。
――戦後、これまで憲法が一度も改正できなかった理由は。
敵(連合国軍最高司令官総司令部=GHQ)はあっぱれで、改正不能の改正規定を置いたからだ。憲法改正には両議院の総議員の3分の2の発議と国民投票による過半数の賛成を必要とする。改正しようと思えば思うほど、敵が仕掛けたアリ地獄に落ちていく。だから、知恵を絞って改正するのではなく、無効を宣言した方がいい。その方が国民も納得できる。
憲法を守れという人々には89条はどうなっているのか尋ねたらいい。「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と書かれている。しかし実際は、創価学会、天理教、朝鮮総連などが保有している教育機関に公金が支出されているのは違憲状態だ。これについて誰も何も言わない。
戦争放棄を規定する9条を守れているのか。2項には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない」と書かれている。4月20日夜、伊豆諸島沖に海上自衛隊のヘリ2機が墜落する事故があったが、これらのヘリは交戦権行使の訓練をしていたのではないか。すでに、国は憲法を守って運営されていないのが実情だ。
――日本国憲法が評価できない理由は。
反日的部分だ。政教分離を規定(20条)しているため、政治家が神社仏閣に玉串料を支払うことが違憲扱いになる。また、個人の尊厳(13条)が書かれている。歴史、文化、習慣に拘束されない砂粒のような個人が最も尊重されなければならない。生理的な男性が女と言えば女性として扱われなければならなくなってしまった。
自衛隊については憲法上は違憲となり、しかも交戦規定がない(9条2項)欠陥がある。見苦しいものは無視して無効だと宣言してしまえばいい。
――国会議員時代、憲法改正についてどのような発言をしたか。
参院予算委員会で憲法について質問する機会があった。「国の自衛権を憲法が保障しています」と防衛相担当が回答した。これに対し、「自衛権は憲法が存在しているからあるのではなく、日本が国家である以上はあるものだ。その憲法がひょっとしたら無効かもしれない」と問題提起した。これまで誰も提起したことがない発言だった。
――他の国会議員からの反応は。
議論を挑んでくる議員はいなかった。憲法無効論は私の政治信念の核心だ。無効論に積極的に賛同し、共感してくれる議員は表向きは皆無だった。ただ、これでいいと思っている。憲法について突っ込んで考えたことのない国会議員しかいないから当然だ。普段から思い浮かべることができるような条文ではないからだ。
戦後50年決議(村山談話)が発表されるに当たり、小沢一郎衆院議員に感想を聞くと「普通の国にする」と言っていた。これに対し、「普通の国が戦争に負けたらどんな決議をすべきか。戦争に負けて憲法まで作り変えられてしまったのではないか」と主張した。