Homeオピニオンインタビュー実際は明確な対露強硬派【連載】「もしトラ」どうなる米外交 前米大統領次席補佐官 アレクサンダー・グレイ氏に聞く(下)

実際は明確な対露強硬派【連載】「もしトラ」どうなる米外交 前米大統領次席補佐官 アレクサンダー・グレイ氏に聞く(下)

トランプ米大統領(当時)とロシアのプーチン大統領=2018年7月16日、フィンランド・ヘルシンキ(UPI)

――トランプ前米大統領と共和党は、南部国境から大量に流入する不法移民を防ぐことが先決だとして、バイデン政権が求めるウクライナへの追加支援に否定的だ。

自国の国境を守らず、何万人もの不法移民が押し寄せているのを目の当たりにしながら、なぜウクライナに数十億㌦も支出しなければならないのか、多くの米国民は理解できない。不法移民の中にはテロ活動の歴史がある国々の出身者もいる。また多くの中国人が入って来ているが、その中には中国政府とつながりがある者もいる。このような状況は、ウクライナが戦略的に重要であると主張することを非常に難しくしている。

バイデン政権は国境を守り、国民の安全を守るという政府の基本的な義務を怠っている。トランプ氏が実行したように、有能な合法的移民を米国に呼び込む政策を推し進めながら、南部国境に壁を建設し、不法移民、特にテロ活動の歴史がある国々から来た者を排除することはできるはずだ。

これと同時に、ロシアによるウクライナ侵攻に無対応であってはならない。ロシアが行ったような領土侵略を放置すれば、世界に極めて深刻な影響を及ぼす。従って、トランプ氏が再選された場合、南部国境を迅速に強化する一方で、ロシアの行為が放置されないよう建設的な役割を果たすと予想する。

――トランプ氏はロシア寄りと見られることが多い。

繰り返しになるが、トランプ氏が実際にどのような行動を取ったかを見る必要がある。トランプ氏はおそらく、レーガン元大統領以来、ロシアに最も厳しい対応を取った大統領だ。

ウクライナに対戦車ミサイル「ジャベリン」を供与したのはトランプ氏だ。それによってウクライナは首都キーウがロシアに占領されるのを防ぐことができた。ロシアによる初期侵攻を防ぐのに寄与した装備や訓練は、ほとんどがトランプ政権から提供されたものだ。これらはオバマ元大統領が拒否していたものだ。

トランプ氏はまた、ロシア産天然ガスを欧州に運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」を中止させるためにあらゆる措置を講じた。このパイプラインは欧州のエネルギーのロシア依存を高めるものだった。

だが、バイデン氏は就任直後にこれを覆してしまった。これがロシアに対する抑止力を崩し、ウクライナ侵攻につながったと私は考える。トランプ氏の下ではこのようなことは起こらなかったのは明らかだ。プーチン露大統領はトランプ氏が実際に取った政策に基づき、同氏がウクライナ侵攻を許容しないことを理解していた。

また、極めて重要なのは、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)を強化したことだ。カーター元大統領以来、歴代米大統領はNATO加盟国が防衛費を増やすことを望んだが、トランプ氏の在任中に全加盟国が実際に防衛費を増やした。

――トランプ氏はウクライナ戦争を終わらせるためにどのような行動を取るだろうか。

トランプ氏は常に、交渉は強い立場から行うべきであることを理解している。紛争はいずれ交渉のテーブルで終わらせるべきだと誰もが理解しているが、問題はどのような条件が戦争終結につながるかだ。交渉を成功させるには、ウクライナが戦場で優位に立つ必要がある。

トランプ氏はレーガン氏の「力による平和」を強く信じている。トランプ氏は公言しているように、交渉で紛争を終わらせることが目標であり、そのために米国、NATO、ウクライナが強い立場を確保できるようにするのではないか。

(聞き手=本紙主幹・早川俊行)

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