首相は抑止戦略を語れ 政治資金 堂々と証言を 西村真悟元衆院議員に聞く

にしむら・しんご 1948年、大阪府堺市生まれ。京都大学法学部卒業。父は民社党第2代委員長の西村栄一氏。1993年に衆院初当選、当選6回。国会で初めて北朝鮮による拉致被害を追及。主な著書に「日本民族の叙事詩―祖国を形づくるもの」(展転社)。

自民党のパーティー券収入不記載を巡る問題などで、岸田内閣と自民党の支持率が低迷している。北朝鮮拉致被害者救出に尽力し、保守の立場から政府を厳しく追及してきた西村真悟元衆院議員に安倍晋三元首相が亡き後、低迷する国政、国が目指すべき方向性について聞いた。(聞き手・豊田 剛)

――政治資金パーティー収入の不記載問題で自民党が混乱している。

パーティー券収入が不記載の国会議員は政治倫理審査会(政倫審)に出席するかどうかの前に、政治にどのぐらいお金がかかりどのぐらい使っているのかも、堂々と証言したらいい。多額のお金の動きを一番知っているはずなのは、安倍氏と菅義偉前首相の下で幹事長を務めた二階俊博衆院議員で、彼に証言させるべきだ。

自民党もその利権体質を批判している日本維新の会も、政治にどれだけお金がかかるか分かっている。金権政治そのものが悪ではない。より多くの資金を集めた陣営が強いことは、米国大統領選のやり方でもはっきりしている。

――今の日本の政治の現状をどう見る。

岸田首相は、凡庸な故に首相になれた人物で、運がいい。

そのカウンターパートであるバイデン大統領は就任したその日に、LGBT差別禁止の大統領令に署名するぐらい前のめりだが、日本のLGBT理解増進法はその米国の言いなりでできたもので、日本にそぐわない。そうした人々は日本ではずっと前から市民権を得ている。米国の自由や平等の価値観は、奴隷労働があったことの反省からきている。日本は有史以来、奴隷制度がなかった。LGBTQ、そして昨今はやっている多様性社会・多文化共生社会への礼賛は、伝統的道徳律、宗教、家族の否定を目的とする危険なものだ。

――日本を取り巻く安全保障環境は厳しい。核兵器の脅威に晒(さら)されている。

ユーラシア大陸の極東に位置する日本は、現在、北から南、また西から東にと迫る、ロシア、北朝鮮、中国の核兵器に包囲されている。「戦略なき平和論」は、空虚であり、こうした国を相手に危険だ。

昨年5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)では核廃絶のメッセージを世界に発信し、広島市の広報係長がG7首脳らに原爆資料館を案内した。岸田氏は「広報係長」としての仕事はしたのかもしれないが、議長国として「核攻撃を抑止するための戦略」を明確に語ることはできなかった。

――岸田氏は、任期中に憲法改正に着手すると言っている。

到底できるとは思えない。ところで野党は護憲を主張するが、憲法は守られてきたのか。自衛隊は事実上の軍隊だ。89条は、公の財産は公の支配に属しない教育に支出してはならないとあるが、朝鮮総連の学校も公的補助金を受けており、それを放置しているではないか。

――拉致問題も一向に解決しない。

岸田首相が北朝鮮訪問を検討しているという話があるが、恐らくいいように利用されるだけだ。北朝鮮は「拉致問題は解決済み」としているが、これに対して岸田氏が金正恩総書記に強く言えるだけの器がないことは、これまでの言動を見てもはっきりしている。

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