共産党の委員長が志位和夫衆院議員(69)から田村智子参院議員(58)に交代してから1カ月が過ぎた。田村氏は1月18日の党大会での地方議員に対する自らの発言が党内外で「パワーハラスメント」と指摘されるなど、逆風の中での船出となった。政治思想・運動に詳しい評論家の篠原章氏に共産党が抱える課題について聞いた。(聞き手・豊田 剛)

――長期独裁と批判された日本共産党で委員長が23年ぶりに交代した。
共産党は、偽善的、独裁的、教条主義(ドグマティズム)の枠からはみ出すことのなかった志位和夫氏の時代に議席を減らすなど党勢は後退し、党員の高齢化にも歯止めをかけられなかった。新しい委員長の田村智子参院議員に代わればいくらかマシな体質に転換するだろうと期待はあったが、全く期待できない。
――期待できない理由は何か。
田村氏はソフトな語り口ではあるが、1月18日の党大会での発言は「パワハラ」そのものだった。著書で党首公選制導入を訴えるなど党批判をしたとして除名されたジャーナリストの松竹伸幸氏を擁護する論を主張した神奈川県議の大山奈々子氏に対して、執拗(しつよう)とも受け取れる反論を加え、党の除名処分を正当化した。党大会の直前には、党幹部の山下芳生参院議員などから5時間にわたり、発言を抑えるよう「説得」を受けたという。これも受け取りようにとってはパワハラである。これに対して大山氏に対する党内の同情論はほとんど聞こえてこない。
反共」のレッテルを貼られた仲間を見た途端、党指導部に批判的な党員は「沈黙は金」とばかり押し黙ってしまう。これでは、「党に忠誠を誓う」党員しか残らず、党勢が大きく削がれてしまう。
――女性初の委員長が誕生しても、各種世論調査で共産党の支持は伸びていない。
時代の流れに乗る形で女性の委員長を立てたまではいいが、強権体質が変わらないことを見透かされた。枠からはみ出さないように規制をかけて、はみ出たものは切り捨てていくのはこれまでと変わらない。
党名を変えようとしたり、マルクス・レーニン主義から脱却しようとする若い人の声が聞き入れられない。歴代委員長の不破氏や志位氏が生きている限りは変わらないだろう。
――委員長を退いた志位氏は議長に就任し、小池晃書記局長(63)は留任した。
野坂参三、宮本顕治、不破哲三(94)と続いた議長職は2006年以来、空席になっていて、18年ぶりに志位和夫氏が就任した。「志位氏が院政を敷く」印象は拭えない。田村氏は強圧的にならないよう見せ掛け、民主的な手続きを経ていると主張するが、実態は違う。党大会での振る舞いでミスを犯した。
団塊の世代がいまだに党の中心にいる。小池書記局長は、党中央の懇親会で宴会芸を披露して、志位氏など上司のご機嫌を取りながら成り上がってきた、と言われている。
田村氏と小池氏の組み合わせでは危機を乗り越えられない。自分たちの失敗の責任を「反共攻撃」になすり付けるやり口に大きな変化はないだろう。
――活動に衰退傾向が見られるという指摘もある。
沖縄県名護市辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前での抗議活動の沖縄の参加者の多くは共産党系だった。3年前のコロナ禍をきっかけに参加者がほとんどいなくなった。
党員の高齢化とともに党員数が減り、主な収入源である「しんぶん赤旗」の売り上げが減っている。共産党は、苦境に陥ると逆に強気に出る傾向にある。