日本での世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関する報道を受けて、海外から、教団信者について「人権侵害」の観点からも情報を公開して国際社会に問うべきだとの声が上がり始めている。ブラジル報道界の重鎮であり、また弁護士として、自由と人権の問題に長く関わってきたサンパウロ州報道協会(API)会長のセルジオ・ヘドー氏に、教団信者に棄教を迫る拉致監禁問題への対応と、信教の自由を巡る日本社会への提言などを聞いた。(聞き手=サンパウロ・綾村 悟、写真も)
――家庭連合の信者4300人が、脱会屋やキリスト教の牧師の指南によって拉致監禁・強制改宗の被害に遭った。だが、この問題は、日本の大手マスコミでほとんど報道されていない。
1960年代に始まり、現在に至るまで続いている最悪・最大の人権侵害だと思う。私が思うに、20世紀最大の人権侵害の一つと言っても過言ではない。第2次世界大戦を含む多くの戦争や紛争を含めても、これほどの人権侵害をあまり見たことがないからだ。
自由民主主義国家を標榜(ひょうぼう)する日本において、少なくとも4300人もの家庭連合メンバーが文字通り拉致監禁の被害に遭った。特定の場所に監禁され、自由と信仰を奪われた。精神病院に強制的に送り込まれた信者もいれば、12年以上監禁された後藤徹氏のような人もいる。後藤氏が拉致監禁から解放された直後の写真を見たが、栄養失調で骨が浮き出るほど衰弱し切った姿に思わず言葉を失った。報道関係者と弁護士は、この人権侵害を問題視して社会に告発するべきだ。
私は40年間、ブラジルで報道の世界に関わってきたが、日本で犯されてきた、実におぞましい人権侵害をまったく知らなかった。本当に酷(ひど)いことだ。世界の主要メディアは、日本の家庭連合信者に対して行われてきた拉致監禁・強制改宗問題に関心を持って告発すべきだ。
私にできることとして、ブラジル報道協会(ABI)から国連人権委員会に対して、日本の家庭連合信者に対する拉致監禁問題への何らかの対応を要請したいと考えている。
また、社会正義を求めるすべての弁護士にこの人権問題に関心を持つように提案したい。家庭連合の信者は、拉致監禁以外にも「2級市民的な扱い」を受けるなど数々の人権侵害に直面していると聞く。私から、ブラジルの弁護士協会に家庭連合信者が直面している人権侵害や拉致監禁問題、信教の自由への侵害に対して、何かできることはないか働き掛けようと思っている。
――山上徹也被告は、安倍晋三元首相が家庭連合と非常に近い関係にあると考え、家庭連合に対する憎しみを動機に安倍氏を暗殺したとされる。山上被告が安倍元首相を暗殺した動機についてどう考えるか。
弁護士としての経験から、世界中で起こっているすべての犯罪の動機は、そのほとんどが「権力」「愛」「金」の三つに集約されると考えている。
私は、山上被告の動機が「憎しみ」と「金」に基づいたものではないかと憂慮している。考えてみてほしい。人生のどのような行為であれ、憎しみに基づいたものは必ず自分と周囲に悲惨な結果をもたらすものだ。
安倍氏の暗殺は、山上被告の憎しみに端を発したものだ。母親が家庭連合に対して行った多額の献金は、彼が本来「使えるはずだった金銭」を失わせ、彼に憎しみの芽を植え付けた。しかし、それは何十年も前のことだ。
しかも、彼は、その恨みを直接家庭連合に向けるのではなく、安倍氏に向けた。そのようにすれば、より多くの世の中の関心が自分に向くことを知っていて安倍氏を狙ったのだ。