--文部科学省が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求したことについて、マスコミの各種世論調査では、国民の7~8割が「支持」している。
マスコミが旧統一教会に対する憎悪を煽(あお)った結果だろう。被害を受けたわけでも嫌な思いをした経験があるわけでもないのに、マスコミ報道を信じて教団は「恐ろしい」とイメージを膨らませている。すでに指摘したように、報道に携わるマスコミの人間はしっかりと教団や現役信者を取材していない。情報の送り手側に問題がある。
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それに加え、日本人は今、金の問題に非常にシビアになり、増税に強い反発が起きている。税金面で優遇されている宗教法人に「税を払わせろ」「特権的な立場をなくせ」と主張する人が多くなっている。
だが、解散命令は免除されていた税金を払うようになる、という甘いものではない。宗教法人にとっての「死刑宣告」だ。国民は信教の自由が侵害されるところまで考えが及ばず「支持」している。
--マスコミに加え、政治の責任も大きい。
一番、責任が重いのは岸田文雄首相だ。「自民党総裁」の立場とはいえ、総理大臣が 教団を「反社会的団体」(反社)と断定し、「関係を断つ」と宣言するというのは常軌を逸していた。それによって解散命令請求にゴーサインが出された。
本の出版企画を提案した時、多くの出版社の経営層クラスが懸念し断ってきた。なぜなら、国が「反社だとして解散命令請求したから」という。『潜入 旧統一教会』だって、広告が出ていない。この一連の流れの引き金を引いたのは、マスコミというよりは、マスコミからの批判を恐れ、浅はかにも〝絶縁宣言〟してしまった岸田首相だった。
安倍晋三氏が首相だった時、マスコミは「モリカケ(森友加計問題)追及だ」と言って、反権力の立場を取った。本当は、メディアは岸田首相に対しても反権力の立場を取って、関係断絶宣言も検証すべきだが、役人からの情報に依存しているので、政府が決めた方針に文句が言えない姿勢になる。
--岸田首相はその意味も分からず「絶縁宣言」しただけで、当初は解散命令請求までは考えていなかった?
深く考えなかったのだろう。付け焼き刃でやって生じた最たる災いが解散命令請求だと思う。周囲から言われてやったのかどうかは分からないが、解散に向け強い意思を持っていたとは、到底思えない。しかし、絶縁宣言と解散命令請求の二つが残したものはすごく大きい。信者は話を聞かなくていい存在におとしめられることになってしまったのだ。
自民党と国際勝共連合は50年以上、一緒に選挙で戦ってきた。(共産党議員から)国会で「スパイ防止法制定運動の裏には、文鮮明氏(旧統一教会の創始者)がいる」のだから、自民党は勝共連合と手を切れと追及された時(1987年)、中曽根康弘首相(当時)は「思想・信教の自由を最大限尊重する」と、防衛線をしっかり守った。
宗教団体の人間と付き合うことは悪いことではないのに、「絶縁する」とその一線を崩したら自民党自体がおかしくなってしまう。さまざまな宗教団体や組織から支援を受けている中で、特定の教団と法的な根拠もなく絶縁宣言したことで、岸田首相は〝パンドラの箱〟を開けてしまったのだ。しかも無自覚で。
(聞き手・森田清策)
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