トップオピニオンインタビュー「潜入 旧統一教会」著者 窪田順生氏インタビュー(4)信者は個性豊かだった

「潜入 旧統一教会」著者 窪田順生氏インタビュー(4)信者は個性豊かだった

――世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を“潜入取材”する前と後では、教団に対する見方に変化はあったか。

以前から国際勝共連合の人たちを見ていたので、信者から話を聞いて驚いたことは正直ないが、思っていた以上に、信者は個性豊かだった。信仰の向き合い方がそれぞれ違う。驚くほど信仰に篤い人がいる一方で、そうでない人もいる。信者によって信仰の度合いが違う。特に韓国にいる信者は、かなり個性が強めな人がいれば、自身の生き方を冷静に見ている人もいる。

<前回>「潜入 旧統一教会」著者 窪田順生氏インタビュー(3)巨大メディアの「正義」危ない

マインドコントロールについては取材する前から「インチキくさい」と思っていたが、信者一人ひとりに話を聞くと、「これがマインドコントロールか」と思うくらい、自由意思が感じられた。

家庭でもお父さん、お母さんそして息子さんの間で教団への距離感が全然違う。たとえば、献金は収入の10分の1を目指すことになっているが、それがクリアできない信者が大勢いる一方で、「10分の3、いや3分の1だ」と言って家族をあきれさせている信者もいる。教団に対して批判的な人もいれば、本部の在り方に持論を述べる人もいた。マスコミは、山上徹也被告や小川さゆりさん(仮名)の家庭について盛んに報道するが、それぞれの家庭で状況が違うし、各個人の問題だということが一つ。

もう一つは、私は企業の危機管理の仕事もやっているので分かるが、巨大組織ではどうしても不祥事が起きる。時にはパワハラで亡くなる方もいる。旧統一教会も含めて宗教団体も組織が大きくなればなるほど、不祥事は避けられない。

教団の田中富廣会長にインタビューした時、解散命令請求問題があったこともあり、自ら現場に足を運ぶことが多くなった、と語っていた。そうでないと現場のことが分からない。2世信者は自分たちでシンポジウムを企画するなど、自分の意見を発言するようになっているが、これからはさらに組織の風通しが良くなるといいな、と内部を取材して思った。

――信者はマインドコントロールされて自由意思を奪われているというのは作られたイメージ?

「普通」というと語弊があるかもしれないが、普通の人間がたくさんいるから、巨大企業と同じくいろんな問題も起きる。みんなマインドコントロールされ、指示を受けてやっているというのは、すごい歪(ゆが)んだ世界観だと思う。

――本の執筆に当たり、信者50人以上に話を聞いたそうだが、2世信者が主催したシンポジウムで、主催者が「教義に感動して信者になった人は何万人もいる」と発言したことに対して、質問に立った鈴木エイト氏は「少なくとも1世に関しては、僕はそういう人はみていない」と発言した。窪田さんがインタビューした信者はどうだったか。

鈴木エイト氏の発言には私も驚いた。私の取材では、感動して入信した信者しかいなかった(笑)。感動しないならやめているし、感動し続けているからこそ、信仰がエネルギーになっているのだと思う。そこのエネルギーに関しては、率直に「感服」と言うしかない。

――この認識の差はどこからくるのか。

鈴木エイト氏と私とでは、これまで歩んできた人生もキャリアも違う。考え方も違うのでそれぞれ偏る。信仰をやめた元信者は「騙された」と、みなさんが言うのではないか。そういう人々の取材を長く続けると、ああいう発言になるのではないか。

(聞き手・森田清策)

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