【令和6年の日本を語る】政府は積極財政に舵切れ 国民から豊かさと幸せ奪うな 元航空幕僚長 田母神俊雄氏

批判に弱い岸田首相

 たもがみ・としお 昭和23年福島県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。第38代航空総隊司令官、第29代航空幕僚長。退官後は東京都知事選に立候補。危機管理、政治、国際情勢分析の専門家として、講演、著作活動を行う。
令和5年は自民党のパーティー券裏金問題などの影響で岸田内閣の支持率は急落した。自民党総裁選挙が予定される新しい年に日本はどうなるのか、あるいは、どうすべきなのか。政治評論家の田村重信氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏に語ってもらった。(聞き手・豊田 剛)

首相はどんなに批判されても国家・国民のために頑張るのがリーダーとしての役割なのだが、岸田文雄首相は実に批判に弱い。国をどうしたいのかのビジョンが明確ではなく、国民だけでなく米国からもあれこれ言われて右往左往している。結局、総理になりたかっただけの人に見えてしまう。三つでも五つでもいいから総理の任期中にやりたいことを列挙すべきだ。

自民党政治は米国に忖度(そんたく)した対米従属で、このままでは国家を弱体化させてしまうだけだ。ただ、野党があまりにもだらしないため、消去法で自民党しかないと考える国民が多い。今の自民党政治は政権を維持させることで精いっぱいで、そのために公明党と連携するしかない。ただ、これは国民のためではなく、保身の政治だ。昨年結党された日本保守党は期待が持てる。自民党がこれに取って代わられるかもしれないと恐れを抱く状態にならないと、自民党は変わらないだろう。

今の税制もおかしい。財務省は、防衛費増など歳出を拡大するためには国民の応分の負担、すなわち増税が必要という立場にある。財務省主導の緊縮財政は間違っている。景気を回復させるには減税が基本だ。ところが、必要な国債発行は行われず、税は少しずつ上がり、30年間も不景気から抜け出ることができずにいる。国防強化とその財源確保を同時に実現できるのが積極財政だ。

出生率上昇には給与アップ

景気が過熱してきたら税を徴収すれば良い。過去30年、世界平均でGDPは2倍以上増えているが、日本はわずか0・98%と低迷した。日本は転落の30年間を経験している。これは米国の言うことをことごとく受け入れてきた結果だ。1985年のプラザ合意は、日本弱体化の政策だったと言える。

日本は長期の低迷期に入った結果、少子化が急速に進んだ。少子化の最大の原因は、給料が上がらないことにある。東京23区内だけを見ても生涯未婚率で大きな差があるが、これは収入の差に起因することが分かっている。

日本の出生に占める婚外子(非嫡出子)の割合は2・4%(2020年)。これに対し、欧米主要国の比率は高く、フランス61・0%、スウェーデン54・5%、アメリカ40・0%(いずれも2019年)。日本では、結婚しなければ子供が生まれない。結婚させるためには給料を上げないといけない。ところが、生活できるだけの給料を稼げないため、未婚率はどんどん上がっている。

今、政府が進めている子育て支援だけでは少子化は止まらない。給料が上がらない施策を改めなければいけない。少子化担当相が16年で歴代で26人務めたが、何の結果も出していないではないか。

「女性が輝く社会」という聞こえの良いスローガンがあるが、まやかしにすぎない。女性は男性よりも安い賃金で雇うことができるから経営者にとって都合がいい。外国人労働者にも同じことが言える。一方で、働いている政治家や経営者の妻はほとんどいない。夫の稼ぎが良ければ、妻は働かずに済むのだ。

言論の自由保障せよ

今、日本では、最も言論の自由を保障すべき立場にある政治家が言論を束縛している現状がある。ヘイトスピーチ禁止や差別禁止など、制約が増える一方だ。国民が幸せになるには、政治的にできるだけ自由でないといけない。意見を戦わせてこそ民主主義なのだから。

政治家は、自由のために戦わないといけないのだが、自ら自由を放棄している。杉田水脈衆院議員が以前、「LGBTは生産性がない」と月刊誌で発言し、当時の安倍晋三首相と菅義偉官房長官が謝罪した。これは国民に言論弾圧することと同じだ。結果として、国民の言論と行動の自由が奪われ、独裁国家に近づくことになる。

日本を貶(おとし)める言論の自由は無限にある一方で、日本を擁護する言論の自由は極めて制約が多く、擁護すると袋叩(だた)きに遭うことが多い。マスコミが左の方ばかり見ているからだ。それに対する勢力への言論弾圧が常時行われている。30年前の日本国民の方が諸制約もなく豊かで幸せだった。

旧統一教会の解散命令請求でもそうだ。合法団体にもかかわらず、自民党はなぜ守ろうとしなかったのか。それどころか、周りが騒いだ結果、違法団体であるかのように扱い、解散させよとなった。その時の一方的な都合で対応をしてしまったが、本来は信者の自由を守る必要がある。

結論を言えば、今の自民党は、国民から経済(豊かさ)と幸せの両方を奪ってしまった。

日本の安全保障を考えるときに、真っ先に着手すべきは、憲法改正だ。まず9条を改正し自衛隊を正規軍と位置付けることが必要だ。それができないと、自分の国を自分で守れない状態が続く。

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